『朝鮮日報』日本語版の葬墓文化関連記事

日ごろから見ている『朝鮮日報』の日本語版サイトなのですが、当然のことながら韓国語版の全記事を翻訳しているわけではありません。ですが、どうも最近、いわゆる「葬墓文化」関連の記事を、かなり力を入れて翻訳にかけているような印象があります。

私としては有り難いことです。

ただ、翻訳の際には、できるだけ原文の漢字語を生かす形で翻訳してもらえませんか…?見出しにある「葬儀文化」、これはおそらく日本語的表現に置き換えたもので、もとは「葬墓文化」のはずです*1

日本のことなら日本語らしい用語への置き換えもいいでしょうけど、この場合、韓国の話ですし、漢字の字面で意味はわかるわけですから、正確を期すならむしろ置き換えないでおくべきだと思います*2

記事入力 : 2010/01/25 11:32:25
韓国の葬儀文化の新地平を開いた企業家の遺言(上)

500億ウォンを投じた「銀河水公園」、SKグループが世宗市に寄付
「厳粛ながら快適」と好評

 「わたしが死んだら土葬せず、火葬しなさい。立派な火葬施設を作って社会に寄贈し、葬儀・墓文化の改善を率先してほしい」

 1998年8月、SKグループの故・崔鍾賢(チェ・ジョンヒョン)会長は、肺がんによる闘病の末に亡くなり、家族にこうした遺言を残した。火葬を忌避する当時の風潮の中、指導層の人物が自ら進んで手本を示し、社会に新鮮な衝撃を与えた遺志が12年後、ようやく世宗市で実を結んだ。

 崔前会長の遺志に従い、造成された最先端の総合葬礼施設「銀河水公園」が今月12日、忠清南道燕岐郡南面高亭里にオープンした。SKグループ(崔泰源〈チェ・テウォン〉会長)が500億ウォン(約38億9000万円)を投じて建設し、無償で寄付した葬礼文化センターには、葬儀場、火葬場、奉安堂(納骨堂)などが設置されている。SKグループの寄付施設を中心として、韓国土地住宅公社が総面積36万平方メートルの敷地に、芝生葬・樹木葬・草花葬などの自然葬用地(6万8000平方メートル)を設けた。世宗市が正式に発足すれば、銀河水公園全体は世宗市に寄贈される予定だ。

 22日午前、銀河水公園の駐車場にはバス10台余りが並び、厳かな雰囲気に包まれていた。施設の中は多くの人で騒がしいかと思いきや、意外に静かだった。火葬場に入ってみると、その理由がすぐに分かった。きれいに整備された遺族待機室10室では遺族らがそれぞれ待機しており、ほかの火葬施設とは違い、混雑する光景や、立ち尽くして待つ姿は見られなかった。

 一方では、バスから降ろされたひつぎを案内員が運搬用の車両に載せて告別式の会場に移動していた。会場では、遺族らが厳粛な雰囲気の中で悲しみつつ、故人との最後の別れの儀式を執り行っていた。

 遺族のチョン・テグァンさん(54)=ソウル市陽川区=は、「最新の施設と、遺族に配慮した空間の配置が気に入った」と話した。火葬場の案内を担当するアン・ヌリさん(23)は、「遺族の方々の動線が重ならないようにし、静粛に葬儀を行えるようにしたのが特徴だ」と説明した。

燕岐=禹正植(ウ・ジョンシク)記者

http://www.chosunonline.com/news/20100125000033

記事の途中ですが…。

上の地図にある「幽宅の丘」も、翻訳に苦心してますねえ。原語は「유택동산」で、確かに訳せばそうなるんですけど*3、実際にはこんな感じのところです。


散骨の代わりに、この蓋を開けて、遺骨(遺灰)を入れるわけです。

もう一つ下の記事に出てくる高陽市のソウル市立火葬場にも、同じ「유택동산」がこんな感じであります。


では、続きをどうぞ。

記事入力 : 2010/01/25 11:32:44
韓国の葬儀文化の新地平を開いた企業家の遺言(下)

 奉安施設ではソウル施設公団追慕公園建立団の職員10人余りが、施設を見学しながら写真を撮るなど、ベンチマーキング(優良な実例に倣って目標設定すること)に余念がなかった。

 この施設を建設するに当たってSKグループが込めた真心は格別だ。崔泰源会長が自ら工事現場を訪れて細かく見て回り、工事を担当したSK建設の役員らも随時現場を訪れた。SK建設の関係者は「崔前会長の遺志に従い、設計から施工、資材に至るまで多くの愛情を注いだ」と話した。

 企業家の寄付で誕生した先進葬礼施設は類例がない。迷惑施設として敬遠されることが多い火葬施設を、民・官・地域社会が協力して作ったということで、さらに意味深い。故・崔会長の遺志が12年もの歳月を経て実を結んだ理由は、SKグループが2001年当初、ソウルに火葬場建設を推進したが、住民の反対で白紙化されたことで、世宗市に移ってきたという事情がある。

 地上3階建ての葬儀場(1370平方メートル)は接客室・殯(ひん)所(出棺まで棺を安置する場所)、安置室などを備えている。火葬場(3035平方メートル)には火葬炉10基と告別式会場、遺族待機室を設けた。火葬炉は自動化された無公害最先端システムで、粉じん・ばい煙を完全に処理し、無臭無煙で稼働する。

 納骨施設の「奉安堂」は遺骨2万柱を収容できる規模で、祭礼室と野外納骨施設が設けられた。銀河水公園の特徴は火葬された遺骨を人工施設ではなく、自然の中に葬る「自然葬」を導入した点だ。芝生葬用地の場合、碑石や土盛りの墓はなく、1基当たりの面積はわずか0.36平方メートル(0.11坪)にすぎない。樹木葬用地(1万2327平方メートル)には追悼木1本を家族用として使用する家族木と、数人が共同で使用する共同木がある。バラの木を活用した草花葬用地も整備されている。さらに公園には樹木葬など、先進葬儀文化を紹介する広報館もある。夫人と共に、広報館の片隅に書かれた「この世での旅を終える前に、あなたはどんな言葉を残しますか」という文章を吟味していたイ・ギョンレさん(65)=大田市儒城区=は、「火葬に対する間違った認識が変わるようにと、うまく作ったようだ」と話した。

 銀河水公園管理事務所のチョン・スンギョ所長は、「半径2キロ以内に最先端の火葬施設と葬儀場、納骨施設、自然葬用地まで整備した場所は、韓国ではここだけだ」と誇らしげに語った。

 管理事務所のイ・サンチャン行政チーム長は「釜山や蔚山など、全国の地方自治体が見学に訪れている。模範的な葬儀・墓文化を率先する中心地になるよう努力したい」と話した。

燕岐=禹正植(ウ・ジョンシク)記者

http://www.chosunonline.com/news/20100125000034

そういえば、上の記事にある「広報館」は、私が行ったときには閉まっていました。見たかったんですけど。

ちなみに、下記の記事にある「벽제(碧蹄)」というのは、こないだ行ったここの所在地の地名です。

記事入力 : 2010/01/25 11:23:40
韓国で火葬場不足が深刻化(上)

昨年の火葬率65%に急増
施設は12年間で6カ所増加、待ちくたびれて他の地域に行くことも
住民らが「迷惑施設」を敬遠、新・増築難しく

 「最後の旅に出る母をもっと楽に送ってあげたかったが、四日葬をすることになり、苦労させたのではないかと胸が痛くなります」

 22日午前10時ごろ、京畿道高陽市徳陽区大慈洞にあるソウル市立碧蹄火葬場。黒いネクタイを締め、やつれた顔のパク・ギルファンさん(62)の表情は暗かった。基礎生活保障(生活保護)受給者のパクさんの母親は今月19日午後2時ごろ、持病のためソウル市冠岳区内の病院で亡くなった。95歳だった。政府から支給された葬儀費用50万ウォン(約3万9100円)で何とか葬式を執り行ったが、火葬場を探すのが容易ではなかった。

 「碧蹄では、基礎生活保障受給者は無料で火葬ができます。しかし、城南・水原で火葬するには、基礎受給者といっても50万ウォンかかります。余裕のない暮らしの中、三日葬をするために遠くまで行き、追加の費用を負担することもできず、すでに予約がいっぱいだった碧蹄でもう1日待ち、結局四日葬をすることになりました」

 最近、韓国の伝統的慣習である三日葬の代わりに四日葬が増えているのは、火葬率が急増したにもかかわらず、火葬場があまりにも不足しているためだ。碧蹄火葬場を運営するソウル施設公団は、「昨年、ここで葬儀を行った家族のうち、四日葬の割合が15.5%となり、2008年(9.6%)に比べ5.9%増加した。大半は故人が午後や夜遅くに亡くなり、すぐに予約しようとしても、火葬場の予約が取れない遺族が、仕方なく三日葬を繰り越すケースだ」と説明した。


22日午前、京畿道高陽市徳陽区にあるソウル市立碧蹄火葬場の火葬炉前。遺族が並んで立ち、火葬が終わるのを待っている。/写真=オ・ジンギュ・インターン記者(国民大言論情報学部4年)

金成謨(キム・ソンモ)記者
水原=金真明(キム・ジンミョン)記者

http://www.chosunonline.com/news/20100125000030

記事入力 : 2010/01/25 11:23:58
韓国で火葬場不足が深刻化(下)

 1990年代初めに10%台にとどまっていた韓国の火葬率は、05年(52.6%)に初めて土葬率を上回って以降、毎年3%ずつ増加し、昨年は65%まで上昇した。しかし、全国にある火葬場の数は98年(火葬率27%)の44カ所から2010年には50カ所と、12年間でわずか6カ所しか増えていない。

 特に、人口が集中するソウル(08年の火葬率72.2%)や京畿道(69.2%)をはじめとする首都圏は、火葬場不足に頭を悩ませている。韓国最大規模の碧蹄火葬場の場合、年中無休で19基の火葬炉をフル稼働させ、1日平均87件の火葬を行うなど、「過剰運営」となっているが、増え続ける需要に対応するには力不足だ。

 そのため、「遠征火葬」も増加している。昨年12月、父親を亡くしたソウル市在住のチャンさん(45)は、忠清北道清州市にある火葬場まで行かなければならなかった。チャンさんは「父が亡くなってすぐに碧蹄火葬場を予約しようとしたが、すでに予約がいっぱいで取れなかった。碧蹄火葬場では9万ウォン(約7000円)の費用で済むが、清州まで行ったため、火葬費用と葬儀バスの代金だけで87万ウォン(約6万7600円)かかり、“肉体的疲労”だけでなく“気苦労”も多かった」と話した。葬儀会社である現代総合相助のパク・ヨンソク首席チーム長は、「1カ月にソウルだけで310件ほど火葬による葬儀を行うが、このうち10%に当たる30件ほどは、春川や原州などほかの地域で火葬している」と話した。

 全州市立火葬場「昇華院」の関係者は、「1日に火葬する遺体の3分の1程度が、首都圏などほかの地域からだ」と話した。仁川市富平区富平洞の市立火葬場も、昨年火葬した遺体のうち40.6%はソウルなどほかの地域からだった。こうした状況のため、管内の市民ではない場合、火葬費用として100万ウォン(約7万7800円)かかる京畿道水原市の「蓮華院」や、城南市の永生管理事業所は、常に火葬の需要が高い。

 ソウル地域の火葬率は2015年に88.4%、2020年には91.7%に達するものと見込まれている。これにより、ソウル市など各地方自治体は追加の火葬施設の確保に努めているが、「迷惑施設」という認識が根強く、住民らの反対が激しいため、新築や増築は難航している。ソウル市が推進している瑞草区院趾洞の「ソウル追慕公園(火葬場)」の場合、2001年に敷地選定を終えたが、住民らの反対で工事に取り掛かれず、昨年12月にようやく着工した。

金成謨(キム・ソンモ)記者
水原=金真明(キム・ジンミョン)記者

http://www.chosunonline.com/news/20100125000031

*1:「葬儀・墓文化」というのも本文中にあります。これもこなれてない表現ですねえ。

*2:最近の『朝鮮日報』でもう一つ気づいたのが、「国家功労者」という翻訳。これ、「国家有功者」ですねたぶん。意味はわかりますし、原語も想像はつくんですが、いちいち置き換えて読まないといけないのがめんどくさいです。

*3:この場合の「동산」は、「丘」とか「築山」といった意味です。「動産」でも「銅山」でもありません。