『AERA English』とKARA

ええ、KARAが表紙だったので、ふだん手に取るはずもないこの雑誌を手に取りました。

AERA English (アエラ・イングリッシュ) 2010年 12月号 [雑誌]

AERA English (アエラ・イングリッシュ) 2010年 12月号 [雑誌]

KARAが表紙だったのは、「韓国人の英語力」を特集するに当たってイメージ的にタイムリーでピッタリだったということでしょう。ニコルがアメリカ生まれで英語が堪能なことは、知っている人は知っていることですし*1

韓国でもそのイメージは同じで、ニコルは英語教材のイメージキャラクターにもなっています。



追記:この広告のニコルの動画があったので貼っておきます。

で、記事の内容はといえば、韓国の大学や大学生を多少なりとも知っている人なら、まあそんなに意外性のある内容でもなかったような気がします。

ただ、「民族史観高等学校」を正面から取り上げていたのは、ちょっと興味を惹きました。「読売新聞」が昔、「エリート養成」という文脈でこんな風に取り上げていましたけど、アエラでは多少取り上げる文脈が違っていますね。それがテーマや媒体による違いなのか、時代的変化によるものなのかは、よくわかりません。

教育ルネサンス エリート養成(1) 「リーダー」国挙げ育成


漢字とハングルで「本校出身ノーベル賞受賞者の銅像」と刻まれた台座(民族史観高校で)

 国内では批判もある「エリート教育」は、本当にタブーなのか。

 底冷えのする韓国ソウルから車で2時間半。江原道にある私立高校「民族史観高校」は東京ドーム27個分のキャンパスを持ち、校舎まで続く道の傍らには15基の台座が並ぶ。卒業生からノーベル賞受賞者が出た場合に銅像を建てるためだ。

 韓国を代表するエリート養成校として知られ、ホテルのような12階建ての寮のほか、国際人として困らないためにゴルフ練習場もある。授業は国語と歴史以外、すべて英語だ。

 「各界のリーダーとして世界を舞台に勝負してほしいから」と、李敦煕校長(68)。1996年の開校以来、内外の一流大学に人材を送り出し、卒業生は官僚や研究者などとして活躍中だ。

 韓国政府は2000年、エリート教育に国を挙げて取り組む「英才教育振興法」を制定。03年には同法に基づき、民族史観高校をモデルにした国立高校「韓国科学英才学校」を釜山(プサン)に開校した。生徒は大学教授の指導も受け、物理や数学など専門分野の研究を進める。毎年1本の論文提出が義務付けられるが、成績優秀者は提携する国内の大学に無条件で進学できる。

 だが、なぜエリート養成なのか。政府機関・科学技術部科学技術人育成課の金在植課長(52)は「資源が少ないわが国では、英才1人が約3000億円の価値がある。そのためには、人を育てる政策が必要だった」と、説明する。

 韓国だけではない。韓国教育開発院英才教育センターの徐恵愛所長(46)が注目するのは、ブッシュ米大統領による今年1月の一般教書演説だ。中国やインドの台頭に、理数系教師の7万人採用など、科学教育のすそ野の強化策を打ち出した。その中国は1995年、「科教興国」のスローガンを掲げ、先進国に国費留学生を大量に送り込み、長期的視野で育成に取り組む。小学校からエリート教育を行う「重点学校」もある。

 シンガポールは小学校段階の2回のテストで、その後の進学先が決まってしまう。批判はあるが、「徹底したエリート教育が人口約400万の小国が繁栄できた理由」と、白百合女子大の田嶋ティナ宏子助教授(44)は説明する。

 翻って日本では、第2次世界大戦後、エリート教育はながらくタブー視されてきたが、ここにきて変化の兆しも見えてきた。

 慶応大は予備校と協力して、少数精鋭の現役高校生を対象とした先端科学の連続講座を開く。国際会議で発表する力をつけるため、科学英語も学ぶ予定だ。今月8日には、トヨタ自動車などが運営する海陽中等教育学校が、愛知県蒲郡市に開校する。モデルは有能な人材を輩出する英国・イートン校で、知識詰め込み型の受験エリートを超えたリーダー育成を目指す。

 官僚の不祥事や政策立案能力の低下が言われる中、東京大は時代が求める官僚を養成する大学院を設置した。早稲田大は、リーダー養成のため、ジャーナリストの田原総一朗氏を塾頭にした「大隈塾」をスタートさせた。改革派の知事などが進めるのは、高校生を対象とした「日本の次世代リーダー養成塾」だ。

 その根底には次のような問題意識がある。「極端な平等主義教育の中で、日本には国際的に活躍できるリーダーが育っていない」(塾長代理の榊原英資・早稲田大教授)。日本もようやく重い腰を上げつつある。(白石洋一

(2006年4月1日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20060401us41.htm

教育ルネサンス エリート養成(3) 全寮制 精神修養にも力


韓国伝統の青い瓦屋根の校舎で学ぶ民族史観高校の生徒たち

 韓国の全寮制エリート養成校をのぞいた。

 大韓の英才たちよ 一つになって進もう 我々は祖国愛を一時も忘れない

 新入生が校歌の練習をしていた。「呼吸が大事だぞ。背筋をきちんと伸ばして」。男性教諭が韓国の打楽器「チャング」をたたきながら声を張り上げた。

 私立民族史観高校では全員が伝統楽器を学び、テコンドーや韓国流剣道も習得する。3年間で80時間のボランティア活動も必修だ。

 「リーダーや研究者である前に、人間として精神力や心を磨くことが重要。エリートは伝統や文化を重んじることも大切だ」と語る李敦煕校長(68)は、自主性を育てる取り組みにも力を入れる。遅刻や外出違反をした生徒は、生徒自身による「法廷」で裁かれる。罰則は書写。昨年から、テスト試験監督は置かないことにした。

 入試の出願は、英語の能力試験TOEFLの得点や中学での上位5%以内の成績が条件。図書館には海外の書籍約6300冊を持ち、米国の大学教授の講義を収めたDVDも用意する。

 国が全面支援する国立韓国科学英才学校には、蔵書が1万冊を超える科学専門図書館プラネタリウム設備がある。校内に個々人の学習机があり、原則、午前8時〜午後9時30分は帰寮できない。一方で、息抜きのため、ビリヤード場やカラオケルームも備える。

 やはりテコンドーを通して礼儀や忠誠心を学ぶ。ボランティア活動は3年間で120時間だ。教諭の7割が博士課程修了者。ロシアで英才教育に携わった物理学者も教師に招いている。

 入試には4泊5日のキャンプがある。生活態度も観察されながらリポートを書く。今年の入試倍率は17・35倍に達した。初めての卒業生を送り出した鄭天守校長(60)は「ノーベル賞がとれる人間が出てほしい」と期待する。

 両校の生徒には、国家や社会に役立つ人間でありたいという気持ちが強い。

 「韓国は日本との間で外交問題を抱え、朝鮮半島の統一問題も未解決。そういう問題に携わりたい」と外交官志望の崔恩永さん(17)(民族史観高校3年)。中学2年から韓国科学英才学校に飛び入学したばかりの宋瑞祐君(15)から「国立学校だから国家に役立つ人間になるのは当然。論文ねつ造問題で、失墜した世界的な科学の地位を挽回(ばんかい)したい」といった発言が出る。

 韓国の英才教育振興法第1条には「才能が優れた人物を早期に発掘し、生まれ持つ潜在力を啓発できるよう、能力と素質に合う教育を実施し、個人の自己実現と国や社会の発展に寄与することを目的とする」とある。その狙いは生徒に染みついている。(白石洋一、写真も)

 韓国の全寮制エリート校 民族史観高校は1996年開校で1学年約150人。年約150万円の授業料は韓国の高校で最高額。乳製品メーカーが英イートン校をモデルに設立、世界に出ても韓国民としての誇りを持ち続けてほしいと命名した。2003年開校の韓国科学英才学校は1学年約140人。授業料は年約15万円だが、全生徒が奨学金を受け、寮費も国負担で、実質的には無料。両校とも男女共学。

 韓国科学英才学校3年、ある生徒の1日

 6:30  起床   
 7:30  登校、朝食
 (朝食後) 予習復習 
 9:00  授業   
 13:00 昼食   
 14:00 授業   
 18:00 夕食   
 19:00 読書   
 21:30 夜食   
 22:00 宿題   
 23:30 帰寮   
 24:00 英語本読書
 25:00 論文作成 
 26:30 就寝   

 民族史観高校の1日(学校案内から)

 6:00  起床  
 6:30  心身鍛練
 7:00  朝食  
 8:00  登校  
 8:30  授業  
 12:20 昼食  
 13:40 授業  
 15:40 個別学習
 17:30 夕食  
 19:00 自習  
 21:00 夜食  
 22:00 自習  
 23:50 就寝  

(2006年4月5日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20060405us41.htm

*1:反面、スンヨンは英語があまり得意ではないそうなので、アメリカ留学経験をそう強調しては可哀相な気も…。