コピペと大学と先達への敬意

こういうシステムを導入するということは、そういう問題がすでにあるということを意味します。

記事入力 : 2010/11/08 12:04:10
ソウル大、レポートのコピペ判別システム導入へ

 ソウル大は7日、学生が提出したレポートの剽窃(ひょうせつ)を判別するシステムを導入し、来年1学期から運用すると発表した。

 ソウル大教授学習開発センターはこのために、現在構築されている学習管理システム「e―TL(e―Teaching & Learning)」に学生がレポートを提出すると、センターが保有するデータベース内のレポートと類似部分を比較するプログラムが制作している。

 同プログラムを活用する教授や講師がe―TLサイトで「剽窃度検査」を行うと、他の資料との一致度が表示され、一致する語句と文章が赤色で表示される仕組みだ。

 教授学習開発センターは「語順の変更や文章の要約などさまざまな剽窃が判別でき、同じ講義を受ける学生らが提出したレポート同士も比較することが可能」と説明した。

 同センターのイ・ヘジョン教授は「OA入試で学習計画書と自己紹介書の剽窃を確認する場合も使用することが可能。延世大や高麗大など他の大学とデータベースを共有することも検討している」と話した。

李碩浩(イ・ソクホ)記者

http://www.chosunonline.com/news/20101108000049

もちろん、日本だって負けてはいません。

新教育の森:学生の「コピペ」、大学も対策に本腰 パソコンでの検出、処分明確化など

 大学で、学生の「コピペ」が猛威を振るっている。パソコン機能を悪用し、盗作も同然のリポートや論文を仕立て上げる学生が続出しているためだ。業を煮やした大学は、パソコンでコピペを検出するなどの対策に乗り出した。【遠藤拓】

 「コピペ」は、コピー・アンド・ペースト(複写と張り付け)の略だ。インターネット上に掲載されている文章や資料を、無断で複写して自らの論文やリポートに張り付け、他人の文章をさも自分が書いたように装い提出する。膨大なリポートから「コピペ」を見つけるには、それ相応のシステムが必要だ。

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 ずらりと並んだパソコンの画面上で、目まぐるしく文字列が移り変わる。阪南大学大阪府松原市)のPC実習室。花川典子教授(ソフトウエア工学)が、学生とともに開発した「コピペ検索システム」を見せてくれた。

 リポートや論文など学生の文章が、数あるインターネットサイトの表記と似ていないか自動的に調べるシステムだ。学内520台のパソコンが手分けをする形で、各リポートからキーワードを五つ抽出する。それが含まれるホームページを最も多い場合で310サイト開いてリポートと照合。コピペの疑いが強い部分を赤く表示する。

 花川教授はこの夏、7月に電子データとして提出された58科目5249点の期末リポートで実験を重ねたところ、12時間半ですべてを終えた。4割がコピペをした疑いがあることが判明した。

 「提出締め切り日の夜に、空いている学内のパソコンでリポートを処理すれば、翌日には各教員に結果を伝えられる。教員側の手間が大いに省けます」と花川教授は胸を張る。

 花川教授がシステム開発に乗り出したのは5年前。学生のリポートや論文に、どこかで見かけた文章が目に付くようになったからだ。中には、研究室の先輩にあたる学生の論文をコピペしたケースもあったという。

 「口調や語尾を言い換えても、単語や内容が一定程度以上重複すれば『疑いあり』と判定する一方、引用を明記した正しい手続きを経たものも引っかかるので、最後は教員が、許容限度を超えていないかどうかを判断することになります」と花川教授。システムは年明けから実際に使う予定だ。

 コピペの有無を自動的に調べるソフトもある。ソフトウエア開発会社「アンク」の商品「コピペルナー」だ。09年12月に発売し、10月までに170の大学・短大が購入。小・中・高校も購入した学校があるという。

 同社に開発を提案した金沢工業大の杉光一成教授は「コピペしたのに自分で書いたと装うのは、カンニングと同様に悪質。若い世代ほどコピペに抵抗感がなく、こうした検出ソフトは必要です」と意義を話す。

 ◇「不正」の意識弱く、常習する傾向も

 学生はコピペをどう考えているのか。

 金沢工業大の杉光教授は6月、上智・慶応・法政の3大学の学生を対象にアンケート(82人が回答)を実施した。それによると、コピペを使ってリポート、作文、論文を提出したことがある学生は全体の約4割。このうち4回以上行ったと答えた学生は半数を超えた。「良くないことだと思う」のは、経験者のうち半数強。「見つからなければ良い」が約3割、「良くないことと思わない」が1割強だった。

 杉光教授は「一度コピペに頼ると、常習性が生じる可能性があるようだ。『良くないこと』『見つからなければ良い』という学生は、確信犯的にコピペをしている」と受け止める。

 実際に、リポートや論文をコピペで片付けたことがある学生は……。

 関西の大学の女子学生(3年)は屈託のない笑顔で打ち明ける。「コピペは私だけじゃなく、みんなやっていますよ。悪いことかもしれないけど、どう書こうか思いつかなければ仕方ない」

 東京都内の私立大の女子学生(2年)も悪びれない。「ばれたらやばいけど、たくさん学生がいるからきっと大丈夫」。まじめにやらなくてもいいの、と尋ねると「やれば自分のためになると言われても、ぴんときませんね」。

 別の男子大学院生は「自分の専攻では絶対にやらない」と断った上で「誰が書いても変わらないような話や自分の専門外のことは、コピペで済ませたことが何度もありますよ」。

 コピペは他人の著作権を侵害するおそれがあり、コピペをしない学生から見て公正さを欠く行為だ。だが「常習者」からはそんな意識は感じられない。

 ◇自分の頭で考える教育足りなかった

 東京大の佐藤健二教授(社会学)は「技術の発展や最近の若者の振る舞いがけしからん、と騒いでも始まらない」と前置きし、指摘する。

 「論文を書く行為は『他人の文章の切り張り』とよく言われます。切り張りは所定の手続きを踏めば引用の積み重ねですし、いいものを作ろうと思えば、編集力が必要になります。一方、他人の文章の丸写しは、写経のように自分の手を動かせば修練になるし、文章を味わうことにもなります。近年のコピペがこれらの行為と比べて明らかに問題なのは、他人の文章を勝手に自分の文章としたことに、あまりに無自覚だからです」

 日本大の小笠原喜康教授(教育学)は、問題はむしろ学生を取り巻く教育環境にあるという。「論文は先行研究の引用が不可欠で、それらをどう乗り越えて自説を唱えるかが問われる。そんな常識を大学は学生に教えてこなかった。そもそも学生たちは、大学に来るまでにも、自分の頭で考えるような教育は受けていなかった。突然しっかりやれと言われたって、学生も困りますよ」

 「論文執筆は一生に一度のことかもしれない。出来栄えはともかく、あなたの考えを知りたいのだ」。小笠原教授は、こう言って学生の尻をたたくことにしている。

 ◇違反者は停学や退学 ルール明記、心得指導する大学も

 大学側は、リポートや論文でコピペが発覚した場合、停学や退学など厳しい対応を取っている。

 一橋大は今年度初めて、授業履修のルールブックに、コピペは不正な行為であることを明記した。コピペルナーも購入し、教員が希望すれば使える。これまで個々の教員任せだったが、全学的に対応する方針に転じた。来年度にも、大学として処分対象にするという。

 早稲田大は06年1月、学生を停学3カ月の処分にするとともに、その学期に履修していたすべての科目の登録を無効にするとの原則を打ち出した。最終的な処分は各学部や大学院が決めるという。

 慶応大は08年度から「自分の意見とそれ以外の部分を明確に分ける」「インターネットからの引用はURLとその取得日を載せる」など、リポートや論文を書く際のルールを履修案内に明示。違反すれば停学、退学の処分もあり得る。

 東京大も、コピペは不正行為や学問的倫理に反する行為にあたるとして、退学や停学の処分対象にしている。コピペを未然に防ぐため、06年度からは必修科目で、論文やリポートを作成するための心得を指導しているという。

毎日新聞 2010年10月30日 東京朝刊

http://mainichi.jp/life/edu/news/20101030ddm013100190000c.html

コピペの何が不正なのかをエラそうに説教するつもりはありませんが、個人的には、「コピペしてきた元の文章の書き手」に対する敬意の決定的な欠落を、そこに感じています。

その人の学者としての器量がどの程度のものかは、「最初の挨拶」を聴いただけでわかる。
自分がどういう知的伝統の「コンテクスト」の中に位置づけられているのか。
それを適切に言うことのできるクールで中立的な知性。
そのコンテクストの中に置かれてあることを「幸運」として受け止めていること。
先行世代への感謝の気持ちと、後続世代への配慮があること。
それが整っている研究者なら、どんな主題についてもクオリティの高い仕事をしてくれるに違いない。
知と愛。
学者に求められているのはそれだけである。

http://blog.tatsuru.com/archives/001836.php

これは、学者だけではなく、大学院生にも、大学生にも、基本的には求められていることでしょう。また、学問の世界から離れて社会人になっても、人間が社会的存在として生きている限りは、求められてしかるべきことではないかと思っています。