公立小中学校の「非正規」教員

職業に関する「非正規」という表現は、韓国語でもこれと同じような意味内容でしばしば耳にします。ここでは、採用試験に合格して採用される「正規」の教員以外の、常勤・非常勤の教員を指して用いられています。

大学の専業非常勤講師や任期付教員の苦境について何度か言及したことがありますが、小中学校でも同じようなことが起こっているというわけです。

実際問題としてこれ、政策的には「予想外の結果」というわけではなく、まさに「当然の帰結」と言うべきでしょう。が、問題は、「これもまあ仕方ないよね」と言うかどうか、だと思います。はい。

公立小中教員:「非正規」最多の15%に 人件費抑制で

 公立小中学校の教員のうち、常勤や非常勤講師の「非正規教員」が今年度10万9000人となり、教員全体の15.6%と過去最高になったことが文部科学省の調査で分かった。人件費抑制や少人数指導のため、各自治体が給与水準の低い非常勤講師らを年々増やした結果で、学校現場の6〜7人に1人となる計算だ。非正規教員は、期限付きで雇用が不安定な上、研修不足や長期的な視点での指導がしにくいなど、教育の質の低下につながる恐れも指摘されている。

 文科省によると、昨年5月1日現在の公立小中学校の教員数は69万9567人。内訳は正規教員58万8794人▽常勤講師5万9150人▽非常勤講師4万9835人▽その他1788人で、常勤と非常勤を合わせた非正規教員は10万8985人。05年度からの6年間で正規教員は約8000人減ったが、逆に非正規教員は05年度の8万4305人から、06年度9万1582人▽07年度9万5662人▽08年度9万9666人▽09年度10万5132人−−と年々増加している。

 各自治体が非正規教員を増やすのは、財政難による人件費圧縮だけではない。団塊世代教員の大量退職でできた穴をすべて正規で埋めずに、一定数を非正規に切り替えることで、中高年に偏ってきた教員の構成のバランスを取る狙いがある。

 さらに、01年度から正規教員1人分の給与で複数の非常勤講師を雇うことができるようになるなど、制度的な変更も後押しした。01年度からは都道府県独自に、06年度からは市町村独自に国の基準(1学級40人)を下回る少人数学級の編成が可能になったことで、自治体が自前で教員数を増やしたことも拍車をかけた。

 非正規教員の増加は、習熟度別授業や複数の教員で授業を見るチームティーチングなどの手厚い指導を可能にした半面、教育の質低下を生む不安もはらんでいる。非正規教員も教員免許は持っているが、正規教員のような研修制度はほとんどない。次年度も同じ学校にとどまる保証はなく、学校によっては担任が毎年交代することにもなる。

 一方で、正規教員の採用が減った結果、学校現場には塾講師などのアルバイトを掛け持ちしなければ生活できないような貧困層の教員も出てきた。「長期的な視点で指導ができない」「職員会議に参加できず子供たちのことがよく分からない」などの声も上がっている。

 文科省は「各自治体の財政状況や、いびつな年齢構成をフラットにすることなどの狙いを考えれば非正規がすべて悪いわけではないが、正規教員の方が望ましい。文科省としては教員の基礎定数を増やして、都道府県が正規の教員を雇用しやすい環境にしていきたいと考えている」と話している。【井上俊樹】

 【ことば】非正規教員

 学校では、各都道府県教育委員会の採用試験に合格した正規教員のほかに(1)1年や2年程度の期限付きで、給与水準は若干低いものの正規教員と同様にフルタイムで働き、学級担任などもできる常勤講師(2)限られた授業だけ担当し、給与は時給計算で支払われる非常勤講師−−の2種類の非正規教員が教壇に立っている。

毎日新聞 2011年3月8日 11時26分(最終更新 3月8日 12時56分)

http://mainichi.jp/life/edu/news/20110308k0000e040044000c.html

非正規教員:「生活できない」 授業の合間にアルバイト

 学校現場で「非正規教員」が増え続けている。文部科学省の調査で、今年度は公立小中学校の教員の6〜7人に1人に上ることが分かった。安定した職場と見られがちな学校だが、実際には「ワーキングプア」状態の先生も珍しくない。「このままでは生活ができない」。学校から先生たちの悲鳴が聞こえてくる。

 山口県内の県立高校で非常勤講師を務める30代の女性は、昨春から2校掛け持ちで週3日、計8時間教壇に立つ。年収は百数十万円。教員の給与だけでは生活できないため、授業の合間を縫って週4日は塾講師と家庭教師のアルバイトをしている。「アルバイトが授業の支障にならないようにしているつもりですが、準備に十分な時間をかけられないこともある」と言う。

 青森県内の公立小学校に勤務する30代の男性は過去6年間、常勤講師と非常勤講師の不安定な立場を繰り返してきた。非常勤の年は時給2790円で、1カ月もたたずに別の学校に移ることもあった。夏休みや冬休み中は基本的に収入が途絶える。両親と同居だから何とか教師を続けていられるのが実態だ。

 今年度は正規教員に近い収入が得られる常勤講師に採用されたが、今後も採用され続ける保証はない。「正規教員になれないと結婚もできない」と嘆く。同県の小学校の採用試験は全国最難関の狭き門。10年度は579人が受験して23人しか採用されなかった。

 北海学園大の川村雅則准教授(労働経済学)は09年、連合北海道と共同で道内の非正規教員を対象にアンケート調査を行った。608人の回答者のうち、「ワーキングプア」の基準とされる年収200万円未満の教員が14%に上り、300万円未満に広げると43%に膨らんだ。

 川村准教授は「常勤講師の場合は部活動など正規教員と同じ仕事をして、しかも非正規という弱い立場のため労働時間が長くなる。採用試験の勉強もできず落ち続け、何年も非正規のままという悪循環に陥るケースが多い」と指摘している。【井上俊樹、諌山耕】

毎日新聞 2011年3月8日 12時45分(最終更新 3月8日 13時01分)

http://mainichi.jp/life/edu/news/20110308k0000e040066000c.html?inb=yt

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