K-Popとサムスン・LG

まあ確かに、そのへんは気になるところではありますね。

とりあえず、携帯・スマートフォンに関して言えば、サムスンは数年前から日本市場に参入して、モデルが代わるごとに細かいニーズにも対応しながら、着実にその地歩を固めてきましたから、今回ポッと出てきたLGとは条件がやや異なります。

ただ実際、「GOLDSTAR」ブランドの製品がディスカウント店などで売られていた昔とは明らかに異なる時代に突入している、とは言えるでしょう。LGがどこまで踏ん張って定着に至るか、あるいは失敗するか。

個人的に少し注目しながら眺めています。

K−POPがサムスン、LG後押し−韓国製への見方に変化の兆し(1)

 7月26日(ブルームバーグ):七夕の日、石井裕子さん(53)と久子さん(24)親子は、恵比寿にあるK−POP(韓国ポップス)専用公演劇場『K THEATER TOKYO』に茨城県常陸大宮市から2時間半かけて駆けつけた。そこで開かれる韓国男性21人組グループ、Apeaceのライブが目的だ。

 裕子さんは4年前からK−POPの男性グループ、東方神起のファンだ。「かっこ良すぎ。歌もダンスも日本のアイドルとは格が違う」という。その影響で久子さんもK−POPに夢中。裕子さんは韓国製品に親近感を抱くようになり、LG電子製の洗濯機も購入した。好きな韓国アイドルがCMに登場するテレビや携帯があれば「絶対に買っちゃう」と断言する。

 上武大学ビジネス情報学部の教授で「最後の『冬ソナ』論」の著者でもある田中秀臣氏は、韓国ドラマ『冬のソナタ』に始まった韓流ブームが今、K−POPの流行で「普及レベルが一段上がった」と分析。若年層にも広がっているK−POPブームが日本市場で「間接的、長期的に韓国製品の追い風になる」とみている。

 家電量販店の実売データを集計した調査会社BCNの6月の国内スマートフォン(多機能携帯)ランキングでは、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」、シャープの「AQUOS PHONE」を抑え、韓国サムスン電子の「GALAXY(ギャラクシー)SⅡ」が1位を獲得した。

 サムスン広報担当のジェームス・チャン氏は「日本でのサムスンのお客様のほとんどが20−30代の若い人々。彼らのK−POPスターへの興味が我々の商品の購買にも影響しているように見える」と語る。

苦い経験

 世界では躍進するサムスンやLGも日本の家電市場では2007年、08年と相次いで撤退するという苦い経験を持つ。高品質な日本製に比べ、安くても品質が劣るというイメージが障害となっていた。だが、その流れに変化の兆しがみられる。K−POPが日本市場という厚い壁を打ち破ろうとする韓国メーカーの後押しになるかもしれない。

 田中教授は「これまでは中高年の多くが高品質なイメージがある日本製しか購入の対象に見ていなかった」と指摘。だが、「最近は韓国文化に触れる機会が増え、韓国製への抵抗感が昔より薄れている」という。実際、韓国文化は身近になった。「anan」などの雑誌はこぞってK−POPアイドルを特集。コンビニ最大手のセブン−イレブンも東方神起、女性グループの少女時代やKARAなどのアイドルとタイアップして販促キャンペーンを展開するほどだ。

 ドコモを通じて6月に発売したLG製スマートフォン「Optimusbright (オプティマス・ブライト)」のCMキャラクターにはKARAを起用。LG日本法人広報担当の金東建氏は「今回はオプティマス・ブライトのターゲットが若い女性だったため、日本でも若い女性に人気があるKARAを広告キャラクターに起用した」と話している。

女房も「ギャラクシー」

 博報堂の村上晶子上席研究員は、今の若者は先入観なく評価するため、「『日本製だから買う』ということがなくなってきている」と話す。同社の調査では、韓国製品のイメージについて05年から11年にかけて『明確な個性や特徴がある』という指標が伸びており、この指標が伸びると実際その後、市場で売れる傾向があるという。

 日本市場の扉をこじ開けているのがサムスンスマートフォン「ギャラクシーSⅡ」。NTTドコモが6月23日に発売し、出足は好調。ドコモの山田隆持社長は「韓国製品で良いものが増え、日本の消費者に評価されている。女房も『ギャラクシーS』を使っている」と8日のインタビューで語った。

 山田社長によると、今月5日までの販売台数は20万台。調査会社IDCジャパンの木村融人シニアマーケットアナリストによると、「売れ筋で通常は3−4カ月で50−60万台。発売2週間としてはペースが速い」という。木村氏は感応度の速さなど機能が素直に評価されたとみる。サムスンは今後、日本市場の製品サイクルに合わせて投入すれば「長期的にシェアを伸ばせる可能性がある」と語る。

 米市場調査会社ストラテジー・アナリティクスによると、11年1−3月期の国内携帯電話市場で、サムスンのシェアは11%で3位のパナソニックと並んだ。サムスンは世界で2位だが、保守的とされる日本で韓国企業が5位以内に入ったのは異例という。

品質に厳しい目も

 LGは日本のテレビ市場に昨年11月再参入。LGジャパンのリ・ギュホン社長は6月の会見で「製品価値を認めてくれるお客様が確かにいる。そして増えている。その面では着実に達成しており、かなり計画通りにいっている」とし、「数字よりも日本の顧客に認めてもらうこと、日本で愛されるブランドとして定着することが目標」と述べた。

 ただ、日本人は品質への目が厳しい。恵比寿でライブに来ていた大学生の吉井晶子さん(19)は韓国の文化や食べ物も好き。昨夏は韓国へ語学留学もした。それでも、スマートフォンは「LG製は壊れやすいって聞くから『iPhone』最新モデルが出たら買おうと思う」と話す。

 調査会社マイボイスコムが昨年11月に実施したアンケートでは、韓国製品に対するイメージは「価格が安い」が52%と首位。2位は「活気・勢いがある」と26%だったが、3位に「信頼できない」25%、4位には「品質が悪い」24%と続く。

政策の「勝利」

 製品への否定的なイメージから脱することが、企業にとって至上命題だ。韓国政府は90年代後半から海外での韓国ドラマの低価格販売を推進する政策をとり、多くのアジア諸国で韓流ブームが起きた。みずほ総合研究所アジア調査部の苅込俊二主任研究員は「『安かろう、悪かろう』と低評価だった韓国製のイメージ払しょくに、政府による韓国文化普及策が有効に機能した」と話す。

 実際、ドラマで使われた韓国製品は若い世代を中心にイメージアップにつながり、韓国政府の戦略が企業の市場開拓に大きな力となった。苅込氏は、まだ品質などに懐疑的な消費者のいる日本でも、K−POPなどを機に「そのうち韓国メーカーが日本で国内メーカーと互角に戦う日が来るかもしれない」と予測する。

更新日時: 2011/07/26 12:34 JST

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920010&sid=a4U6ojAD._YM