何を〈抜き〉にして現代史を語るか。

ふむ、なるほど。

全経連の言い分にも、その立場からの一理はあると思います。ただ、その尻馬に乗った形の「朝鮮日報」の社説については、どうですかねえ。

そして全泰壱に会う

1994.1.18から15年

「歴史の中の全泰壱」に言及しようとすれば、その個人史に言及する以外にないと思うのですが、財閥の創業者であるイビョンチョルや鄭周永については、その個人史が歴史語りにおいて不可欠かと言えば、必ずしもそうでもないような気がします。

他方でもちろん、彼らが創業した三星や現代を顧みない韓国現代史はありえないと思いますが、その点についてはそれこそ「右寄りか左寄りかという問題以前に」皆が同意することではないでしょうか。

要するに、全泰壱や朴鍾哲と、イビョンチョルや鄭周永とを形式的に平等に扱うことが「公正」な扱いであるかどうか、私としてはいささか疑問を持ちます。

記事入力 : 2011/07/28 10:27:53
「財閥創業者の功績、韓国史教科書で紹介すべき」

全経連が提言

【辛殷珍(シン・ウンジン)記者】 韓国の高等学校で使用されている現行の韓国史教科書は全て、抗議の焼身自殺で知られ、韓国の労働運動史を変えたといわれる労働運動家の故・全泰壹(チョン・テイル)氏については詳しく説明しているが、サムスングループを創業した故・イ・ビョンチョル会長や、現代グループの故・鄭周永(チョン・ジュヨン)名誉会長について紹介しているのは、わずか1冊しかない。それも、写真による簡単な説明にとどまっている。

 全国経済人連合会(全経連)は27日、教育科学技術部(省に相当)と国史編さん委員会に「教科書には企業や企業経営者についても公平に記載してほしい」という内容の建議文を送付した。

 全経連は現在の教科書について「韓国経済についての記述を見ると、経済発展の過程で表面化した対外依存度の高まり、農村の疲弊、産業のアンバランスといったマイナス面ばかりを強調する傾向がある」と指摘した。

 全経連はさらに「(韓国は)韓国戦争(朝鮮戦争)直後の最貧国から、わずか60年で世界15位圏の経済規模を持つようになったが、これは世界に例のない成功だった。この点についても教科書に記載すべきで、大韓民国の経済発展は偉大な業績であることを、生徒たちに理解させなければならない」と主張した。

 全経連は建議文で「現行の教科書は“大企業は政府の特別な恩恵を受け、政経癒着によって成長した”などマイナス面ばかりを過度に強調している」とした上で「大企業の功績についても公平に記載すべき」と求めている。大企業に問題が全くなかったわけではないが、海外市場を開拓し、雇用と所得を創出して経済発展と国家の威信を高めることに貢献した点についても、教科書に記載すべきというわけだ。

 全経連は、企業だけでなく企業経営者が韓国の経済発展に貢献した点についても、教科書に記載するよう求めた。全経連は「全泰壹氏の焼身自殺が、経済発展の過程で生徒たちの学ぶべき重要な事件であるならば、韓国の企業経営者らが半導体や造船、自動車など新たな産業を起こしたことも、見過ごしてはならない重要な事件だ」「生徒たちが労働者の困難な立場について理解することも大切だが、チャレンジ精神で時代を先取りした起業家精神について学ぶことも、非常に重要だ」「生徒たちが企業を立ち上げる夢を持つことができるよう、経済発展に企業経営者が貢献したという記述も増やさねばならない」とも主張した。

 全経連はさらに、ある教科書について「輸出や自由貿易グローバル化は韓国にとって恩恵よりもマイナス面が多かったかのように記載し、生徒たちにおかしな認識を持たせようとしている」と指摘した。さらに「 “世界貿易機関WTO)が農民を殺す”などと記載し、WTO閣僚会議開催国に出向いて抗議の自殺をした農民運動家について紹介している教科書もある」とした上で「このようなことを教え込んでどういう教育効果を望んでいるのか、あるいはどのような世界観や知識を生徒たちに伝えようとしているのか、心配だ」と指摘した。

 全経連はこれらの内容を盛り込んだ「高等学校韓国史教科書参考資料」を発刊し、来月1日から韓国史担当教諭などに配布する予定だ。

http://www.chosunonline.com/news/20110728000036

記事入力 : 2011/07/29 09:27:25
【社説】イ・ビョンチョル、鄭周永抜きで現代史を語れるのか

 「現在使われている高校用韓国史教科書全て(6種類)が、清渓川沿いの被服工場従業員全泰壹(チョン・テイル)の焼身自殺に多くのページを割いている一方、サムスン・グループの創業者イ・ビョンチョルについて紹介した教科書は1種類しかなく、それも簡単な写真説明にとどまっている」と、全国経済人連合会(全経連)が指摘した。全経連はまた「各教科書が『韓国は経済発展の結果、外国に対する依存度が高まり、農村は疲弊し、産業の不均衡が深刻化した』といった否定的な面を強調しているとも指摘している。韓国の経済発展は、困難に直面する中で成し遂げられたという点を生徒たちが認識できるよう修正してほしい」と、教育科学技術部(省に相当)や国史編さん委員会に提案した。

 現在使われている高校用教科書は2008年、金星出版社などの近・現代史教科書の記述が「反韓国、親北朝鮮的」だという批判を受けた後に制作されたものだが、政治理念に関する内容だけでなく、経済・社会分野での歪曲(わいきょく)が依然として深刻な状況にある。

 1948年の韓国政府樹立当時、韓国の1人当たりの国民所得は75ドル(現在のレートで約5800円、以下同じ)だった。60年代初めまでは、アフリカのガーナと同じ80ドル(約6200円)程度にとどまっていた。だが現在、国民所得は250倍以上も増え、2万ドル(約155万円)に達し、世界10位台の経済大国に仲間入りした。一方、ガーナは依然として、1人当たり国民所得が1000ドル(約7万8000円)に満たない開発途上国だ。

 第2次大戦後に独立した国の中で、韓国ほど顕著な経済発展を成し遂げた国は少ない。中国も70年代、「韓国に見習え」という最高指導者トウ小平の指示に従い、韓国の経済発展をモデルにした結果、世界第2の経済大国への飛躍を果たすことになった。世界的な経済学者サミュエル・ハンチントンは80年代、米国ハーバード大で低開発国の経済成長・発展に関するシンポジウムを開いたきっかけについて「韓国と同じ時期に独立した多くの国がなぜ、韓国のような経済発展を実現できないのかという疑問を解き明かすためだった」と説明した。

 韓国の経済発展を実現させた決定的な原動力の一つは、「無」の中から「有」を作り出した企業経営者たちのチャレンジ精神だった。イ・ビョンチョルや、現代財閥創業者の鄭周永(チョン・ジュヨン)の「創造的な破壊」という精神がなければ、韓国の半導体産業や造船業の発展について語ることはできない。

 こうした厳然たる事実から目を背けるということは、政治的理念が右寄りか左寄りかという問題以前に、歴史学の基本がなっていないということを意味する。企業経営者たちの夢やチャレンジ精神が、自己の犠牲をいとわない労働者たちと出会うことで発展が成し遂げられたという歴史を正しく評価してこそ、次の世代も国の進むべき道を切り開く勇気や知恵を得ることができるだろう。

http://www.chosunonline.com/news/20110729000015