平均賃金の地域格差

記事自身も分析していますが、首都・ソウルはともかくとして、麗水・巨済・蔚山とくれば、その平均賃金の所以は誰にでもわかることです。

昨年末、巨済の玉浦や長承浦を歩いた時に思いましたけど、造船などといった重工業の「企業城下町」の典型がそこにはあります。関連会社も含むのでしょうが、重工業の大企業の従業員の数の多さや地域の労働人口中の割合の高さは、それ以外に大して産業のないところであればあるほど、突出するに決まっています*1。であるならば、その企業の賃金水準がかなりの程度、直接的に地域の平均賃金へと反映されてくるわけです。

記事入力 : 2011/08/25 11:26:25
石油化学の街・麗水、平均賃金が首位(上)

 韓国で最も月額平均賃金(賞与・手当を含む)が最も高い都市はどこか。それは大企業の本社が集中するソウルでも、自動車・造船の街である蔚山でも、はたまた大宇・サムスンの造船所がある巨済でもない。答えは麗水だ。2009年現在で麗水の1人当たり月額平均賃金は281万ウォン(約20万円)だった。一方、最下位は全羅北道南原の155万ウォン(約11万円)だった。

 産業研究院は24日、全国の広域市、市を通勤エリアを考慮して50の都市圏に分け、分析した「賃金地図」を発表した。例えば、ソウル圏にはソウル市、ソウルへの通勤者が人口の15%以上の城南、九里など周辺18市を含めた。通勤による移動が少ない浦項浦項市だけを単独で都市圏とした。平均賃金は韓国雇用情報院の「産業・職業別雇用構造」のサンプル調査で月給が64万‐1280万ウォン(約4万5000‐90万9000円)の範囲に属する8万371人を対象として算出した。

■麗水は約20万円

 2008年に月給が最も高かった都市は慶尚南道巨済の300万ウォン(約21万3000円)だった。しかし、08年の世界的な金融危機で造船業が打撃を受け、09年には257万ウォン(約18万3000円)に低下し、1位の座を麗水に譲った。麗水に次いで月給が高かったのは、蔚山の253万ウォン(約18万円)、ソウル(約17万8000円)だった。

 地域別の賃金順位は、対象地域にしっかりした産業基盤があるかどうかが決定的要因となる。特に自動車(蔚山)、造船(巨済)、石油化学(麗水)、機械(昌原)など重化学業種を基盤とする地域の賃金が高かった。一方、IT、電子などのハイテク業種に特化した地域は、重化学業種が密集する地域に比べ相対的に賃金が低かった。

 これは、ハイテク業種が地域経済の総生産を向上させる上では寄与するものの、実質的に地域住民の所得増加には結び付いていないことを示す。産業研究院のキム・ドンス研究委員は「造船、自動車など主力基幹産業は従業員数が多いが、ITのようなハイテク業種は相対的に従業員数が少ない。ハイニックス半導体の工場がある京畿道利川はIT産業が基盤だが、賃金はそれほど高くない」と指摘した。

http://www.chosunonline.com/news/20110825000048

記事入力 : 2011/08/25 11:26:36
石油化学の街・麗水、平均賃金が首位(下)

■広がる地域間格差

 地域間で賃金格差が生じるのは、地域間の移動が自由だからだ。賃金が高い地域には、生産性が高い人材が集中することになる。韓国開発研究院(KDI)の兪京濬(ユ・ギョンジュン)財政・社会政策研究部長は「住宅価格、生活費など地域ごとに異なる物価水準が賃金格差に反映される」と述べた。首都圏では住宅賃貸時の保証金が平均で1億8000万ウォン(約1280万円)で、広域市を除く非首都圏の平均8798万ウォン(約620万円)の2倍を超える。

 問題は地域間の賃金格差が年々拡大していることだ。同じ地域でも高所得層と低所得層の賃金格差が広がっていることが分かった。

 2001年の京畿道利川の月額平均賃金は189万ウォン(約13万4000円)で、50地域で最も高かった。同じ年の慶尚北道永川の同賃金は116万ウォン(約8万2000円)で最も低かった。当時、両地区の賃金格差は73万ウォン(約5万2000円)だった。8年後の09年に賃金が最も高かった麗水(281万ウォン)と最も低かった南原(155万ウォン)の格差は126万ウォン(約8万9000円)と2倍近くに広がった。

 同じ地域の高所得層と低所得層の賃金格差も拡大した。09年時点でソウル圏の所得上位10%に属する高所得者の賃金は、所得下位10%に属する低所得者の賃金の4.58倍で、01年時点の3.75倍と比べ格差が広がった。

全洙竜(チョン・スヨン)記者

http://www.chosunonline.com/news/20110825000049

元の記事はこちらですけど、翻訳がどうこうというよりも、この図表は翻訳しきれなかったんですね…というのが感想です。

석유화학의 도시 여수, 월급 281만원(1인당 월평균 임금)으로 최고


ところで、こうした賃金の地方分布の実情と、ソウルに集中する「有名大学」の学生との就職希望動向とは必ずしも(ぜんぜん)一致していません。

ソウル一極集中と地方大と経済界

また、蔚山には現代グループが出資する蔚山大学校がありますが、麗水にある全南大学校麗水キャンパス(旧麗水大学校)や近隣の順天大学校は、こうした条件を(特に学生募集の面で)どこまで生かせているんでしょうか*2

もちろん、「麗水でせっせと稼いだ金で、息子や娘をソウルの大学にやる」という図式は容易に想像できるんですけど、POSTECH(浦項工科大学校)が浦項で立派に成立しているように、何らかの形で俊英が割拠するような梁山泊が、麗水あたりでも作れないものですかねえ。

ソウル一極集中と大学生

*1:「田舎っぷり」だけを比べれば、ここで1位2位を占める麗水・巨済と、その間に挟まれた南海との間に、大した違いがあるようには思えません。

*2:巨済には4年制大学自体がありませんが、周辺には釜山や晋州といった大学の集まる都市があります。