日本の納骨堂ビジネス

納骨堂という存在については何度か取り上げたことがありますが、これは日本の納骨堂に関する最近の事情を垣間見せるなかなかいい記事です。

何がいいって、収益性という「お金の話」で終始一貫していることです。さすがは『週刊ダイヤモンド』、こういう風に徹底してもらえると、「そういう観点からは何が欠落するか」が非常に見やすくなります。

「土地取得→納骨堂建設→販売」という事業モデルの分析から抜け落ちているのは、当たり前の話ですけど「その後」の話ですね。

新宿駅徒歩3分の好立地に「納骨堂」登場
マンションよりも儲かる仰天の収益モデル

 現在、納骨堂の建設に向けて、既存の建物の取り壊しが行われている 新宿駅京王線ルミネ口から徒歩3分という至近距離に、墓数7000基という大型納骨堂の建設が進んでいることが分かった。これまでも23区内に納骨堂が建設されることはあったが、これほどの好立地に登場するのは珍しい。背景には、うまく完売できればマンションやオフィスビルよりも高収益な事業になるという事情が透けて見える。

 納骨堂とは、お墓の一種。従来、お墓は野外にあるものだったが、都心の寺院墓地や霊園は「高嶺の花」と言われるほど高額であり、中には数千万円するお墓もある。そこで近年、人気が高まっているのが納骨堂だ。屋内に建てる小さいお墓で、郊外の霊園のお墓を購入するよりは、通いやすく、また数十万円からと安価なのが受けている。

 納骨堂には主に2つのタイプがあり、コインロッカーのような小箱にお墓が固定化されているタイプと、自動搬送倉庫のように、呼び出すと自分のお墓が目の前に移動してくるタイプがある。

 今回の計画を進めているのは、岐阜県に本院を持つ光明寺。納骨堂の場所は細い路地に面しているが、ホテルサンルートプラザ新宿に隣接しており、駅からのアクセスは良好だ。約1000平方メートルの土地を取得ずみで、「礼拝の用に供する建物の敷地」として登記も完了しており、7月には東京都渋谷区に設置を届け出ている。

 すでに近隣への説明会を数回行っており、周辺住民には一部反対の声も上がっているというが、順調にいけば2014年に完成予定だ。光明時は納骨堂について、反対運動があるためか、「現段階では何も決まっていない」と明快な回答を避けている。

 光明寺は「やり手のお寺」(寺院業界関係者)として知られている。登記簿情報によると、すでに埼玉県滑川町京都府宇治市、千葉県千葉市の3カ所で霊園を開いており、2009年には東京都荒川区に納骨堂を開いている。これだけ手広く霊園または納骨堂を展開しているお寺は数少ない。葬儀や法事のときに、様々な宗派の僧侶を派遣するという、「僧侶の派遣事業」ともいえる事業まで展開しており、「事業の才覚がある」(同)と評判だ。

1基100万円なら完売で70億円

 関係者によると、この土地は専門学校がリストラする中で売り出したものだという。隣に大型ホテルがあるため採光にはやや問題がある。とはいえ、ワンルームマンションやデータセンターなどに活用する提案があり、最終的には最高額を提示した光明寺が落札した。金額は10億円弱と見られる。

 納骨堂が競り勝ったのは、それだけ収益性が高いからだ。自動搬送倉庫タイプの納骨堂の場合、一棟の建物に多数のお墓を詰め込めるので、売り切ることができれば、他の不動産よりも収益性が高い。業界の関係者に収益を試算してもらったところ、1基を100万円で販売した場合、7000基なので売り上げは70億円となる。土地代、建築費の合計額は通常なら30億〜40億円程度なので、完売すれば数十億円という莫大な利益が転がり込むことになる。

 これだけ利益が出るならば、納骨堂が今後次々と建設されそうだが、そう単純でもない。今年4月に墓地、埋葬等に関する法律が改正され、地域によっては設置が困難になったのである。許認可権限が都道府県から市区町村に委譲され、各市町村がそれぞれ条例を制定しているのだが、設置条件を厳格化する自治体が多かった。

 例えば渋谷区の場合、主体となる宗教法人は区内において3年以上の活動が求められており、納骨堂設置のために移転したり分院を出したりした宗教法人等は、すぐには設置が許可されない。駐車場の付置義務を具体的な数値で設けている自治体もある。

 光明寺は昨年のうちに新宿の土地を取得しており、改正法は適用されないという「滑り込みセーフ」の案件だった。

 とはいえ今後お墓を持たない団塊世代が高齢化するにつれて、都心における納骨堂のニーズは確実に高まっていくのは間違いない。日本経済が低迷する中で不動産の活用ニーズが高まらなければ、さらに好立地の納骨堂が出てくる日も近そうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)

http://diamond.jp/articles/-/23845

しかしまあ、個人的な印象を述べさせてもらえれば、これって納骨堂として、つまりはお墓として、「好立地」って言えるんでしょうかね…?

安らぎとは程遠い周囲の環境もさることながら、10年単位で「その後」のことを考えたら、おちおち安らいでいられないような気がするのは、私だけでしょうか。