バイクメーカーの近未来

続けざまに見た記事をまとめてクリップ。韓国の街歩きをしていると、大林(Daelim)のバイクはおなじみのものですけど、世界的に見て内需型が主流とは決して言えないバイク業界での韓国メーカーの生き残りは今後、ますます難しくなっていくでしょうねえ。


記事入力 : 2013/07/07 09:50
「温室育ち」大林自、ホンダの安売り攻勢に打つ手なし

 「このままでは倒産が目に見えています」

 国内トップのバイクメーカー、大林自動車の柳基俊(ユ・ギジュン)社長が記者との電話インタビューで語った一言だ。大林自は30年以上にもわたって内需市場でトップの座を明け渡したことのないバイク市場の最大手だ。昨年も内需市場シェアで51%をマークした。

 だとすれば、柳社長の言葉はオーバーなのか。いや、そうではない。

 問題は、市場規模が年々縮小していることから、市場シェアは依然として高いものの、販売台数が年々低下しているという点にある。大林自は1997年、年間30万台にまで上った韓国国内市場で実に20万台を販売した。しかし、昨年は8万7000台にまで低下した市場で4万4000台を販売するにとどまった。シェア1位は維持しているものの、販売規模は4分の1以下にまで減ってしまったのだ。さらに輸入バイクが急成長を遂げていることもあり、大林自の市場シェアは3年間で65%から51%に低下した。

 柳社長は、韓国GMの研究開発部門で勤務した経験の持ち主で、昨年12月に大林自の競争力回復のためにスカウトされた。「これまで製品もなかったし、競争力もなかった。これまで出遅れてしまった部分を建て直し、市場を回復していく」と意気込みを語る。

 5月には、ホンダが大林自の最後のとりでだった配達用バイク市場にまで進出、大林自は苦しい立場に立たされている。国内配達用バイク市場は昨年2万4000台に達し、大林自の全販売台数の半数を占めている。そして、ホンダがまさに同市場で真っ向対決を挑んできたのだ。

 昨年、韓国国内のバイク(スクーター含む)市場に占める輸入ブランドの割合は32%にまで上った。2009年にはわずか13%にすぎなかったが、3年で急成長を遂げたのだ。さらに安くてさらに品質のいい海外製が押し寄せてきたことで、輸入ブランドのシェアが40−50%を超えるのも、もはや時間の問題といった見方が強くなっている。

敗因1:内需に甘んじて世界市場を逃す

 韓国には大林自とS&Tモータース(旧・孝誠機械工業)という2大バイクメーカーがあるが、どちらもグローバル化に失敗している。これは自動車業界とは対照的だ。

 韓国の自動車メーカートップを走る現代・起亜自は昨年714万台を生産し、このうち85%を海外で販売した。世界市場シェアは9%に上る。一方、韓国トップのバイクメーカーである大林自は昨年5万2000台を生産し、ようやく8000台を海外で販売した。世界市場でのシェアは0.1%にすぎない。海外では、S&Tも1万台の販売にとどまっている。

 しかし、全世界のバイクメーカーのうちトップを行くホンダは昨年1550万台を販売し、ヤマハやスズキもそれぞれ609万台、231万台を販売した。もし、大林自やS&Tが世界市場を攻略し、現代・起亜自のように9%のシェアを占めていたら、販売台数は450万台に上ったはずだ。

 大林自とS&Tは、なぜ二輪車業界の現代自になれなかったのか。二輪車協同組合のパク・ナムテ元理事長は「内需に甘んじたところ、結局は内需市場まで敵に奪われるような格好になってしまった」と話す。好調だった1980年代に世界市場に進出するチャンスが何度かあったが、研究開発や海外進出に消極的だったため、チャンスを逸してしまったのだ。パク元理事長は「リーダーシップの不在、戦略不在、古い独寡占構造、政府の無関心などが複合的に作用した」と、当時世界進出の波に乗り切れなかった原因について分析する。

 業界関係者たちは、過去の内需市場は一言で言って「温室」と何ら変わらなかったという。輸入規制によりライバルとなり得る海外メーカーがいなかったため、製品は生産すればするだけ売れたのだ。

 その結果、大林自は、技術提携先のホンダとの関係が終わった1990年代末まで、独自技術の開発をないがしろにしたまま、内需に頼るようになった。自動車業界では、現代自が1974年に初めて固有モデルの「ポニー」を開発して以降、独自開発に全力を傾け、1990年代初めから積極的な海外生産を通じて競争力を確保していくようになったが、それとは正反対だった。

 そして2003年にバイクの輸入規制がなくなると、中・低価格の製品は中国や台湾製が、高価な製品は日本や欧州製が大量に輸入されるようになった。これにより、内需を二分していた大林とS&Tは悪循環に落ち込むことになった。規模の経済と技術力という2本柱のうち、どちらも持ち合わせることができなかったため、低価格製品と高価格製品の双方で対応が難しくなり、当然販売台数は減っていった。販売台数が減ったことで、研究開発への再投資はさらに減り、輸入車を圧倒できる新製品の開発は困難を極めた。

敗因2:急増するレジャー用市場に対処できず

 国内メーカーは、レジャー用バイクという新たな市場トレンドの到来も予測できなかった。

 大林自は通貨危機以降、むしろバイク市場の拡大を見込んでいた。消費者たちの所得が減り、自動車の代わりにバイクに乗る人が増える。そして退職者たちは自営業に進出し、商用・配達用のバイク需要が増えるといった考えだ。しかし、市場の流れは予想とは反対だった。

 韓国バイク市場は1997年の30万台から98年には14万台と、あっという間に半数以下に減ってしまい、2008年の金融危機以降はさらに激減、今では9万台前後にとどまっている。

 しかし、こうした状況下でもレジャー用高価格バイク市場は唯一需要が急増した。そして大きくなった市場は、そっくりそのままBMWハーレーダビットソンなど欧米メーカーの売り上げを増やす基盤となった。BMWは2009年の485台から昨年には1107台と、3年で128%成長した。ハーレーダビットソンも2009年の795台から1072台へと35%成長した。両社の製品は1台当たりの平均単価が1500万−2000万ウォン(約127万−170万円)と高価だが、国内の高所得層の拡大とレジャーブームの到来で販売は年々伸びている。

 しかし大林自は、内需販売の半数を配達用バイクが占めるなど製品群が商用に集中しており、独自開発したエンジンも125ccクラスの小型にすぎなかった。従って、500ccや1000ccクラスの中大型エンジンをベースとする高級レジャー用バイク市場は、初めから進出さえできなかった。

 高級レジャー用バイクの内需販売規模はまだ4000台水準で、全市場の5%にすぎない。しかし、小型スクーターに比べて価格が10倍にも上るため、販売額に換算するとすでに全市場の半分近くを占めているわけだ。これほど大きな市場であるにもかかわらず、国内メーカーにとってはほぼ手付かずの状況が続いている。

 S&Tは国内で初めて700ccクラスのエンジンを開発するなど、大林自よりもレジャー用市場への対応が早かったが、ブランドイメージや規模の経済面で海外メーカーには勝てなかった。

敗因3:ホンダの低価格市場攻勢に対応策なし

 ホンダが高価格戦略に代わって中低価格の製品を大量に販売する戦略を取り入れたことが、大林自とS&Tにとっては大きな脅威となっている。2008年に韓国市場で3600台を販売したホンダは、09年に1900台と実績が低下した。日本製を主としたホンダの高級製品が、BMWハーレーダビットソンに圧倒されて販売台数が減ると、今度は東南アジアやタイ製の代表モデルを韓国で販売、大林自やS&Tの製品と競合させるという構想を抱くようになった。

 この戦略に合わせて2010年に韓国で発売したホンダの「PCX」は、韓国メーカーが得意とする125ccクラスのスクーターでありながらも、昨年2000台が売れるほどの人気を呼んでいる。勢いに乗ったホンダは今年7月に配達用バイク「スーパーカブ110」の韓国進出を発表した。価格は200万ウォン(約17万円)台前半で、国内モデルとの価格差は20万−30万ウォン(約1万7000−2万5000円)にすぎないという。ホンダは「スーパーカブ」を年間5000−6000台ほど販売するとの目標を打ち立てた。目標が達成されれば、一気に国内配達用バイク市場の4分の1を占めることになる。

 こうした状況に対し、自動車コラムニストのナ・ユンソク氏は「ヤマハなどその他の日本メーカーの中国・東南アジア製モデルも大量に出回るようになってきており、さらには数十万台から百万台規模の生産体制を確立した台湾製までが市場でしのぎを削っている。韓国メーカーの国内市場シェアは今後さらに低下する可能性が高い」と分析する。

 全世界のバイク市場は現在年間5000万台、70兆ウォン(約6兆円)規模と推算されており、新興国を中心に市場は年々拡大している。こうした魅力的な製造業で韓国がこのまま淘汰(とうた)されるとすれば、国家経済に大きな損失をもたらしかねないだろう。

崔元碩(チェ・ウォンソク)記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/07/07/2013070700209.html

個人的にはカワサキ派で、しかもどちらかと言えば軽いバイクの方が好きなので、このNinja250はめっちゃ気になります。


川崎『ニンジャ250』発売前予約殺到 年間販売1万台突破か
2013.07.07 07:00

 国内の二輪車市場は1982年の328万5327台をピークに下降に転じ、2010年には38万242台と、実に8分の1以下にまで落ち込んでいた。だがこの市場が、わずかながら上昇に転じ始めている。

 2011年の販売台数は対前年比6.7%増の40万5533台。この勢いは今年も続いている。その牽引役を担っているのが、川崎重工業のスポーツバイク『ニンジャ250』。海外で圧倒的人気を誇る『ニンジャ』、その250ccモデルの新型が2013年2月に国内発売され、爆発的に売れているのだ。

「自分で開発したバイクに娘を乗せて走りたいと思っても、品薄で手に入れることが難しい状況です」

 開発のリーダーを担った田中邦博は、そう苦笑する。

 開発のスタートは数年前。主に中小型エンジン開発を担っていた田中が、次期『ニンジャ』の開発責任者として抜擢された。

 次期『ニンジャ』に田中が求めたものは“進化”だった。何を進化させるか? 先代『ニンジャ』ユーザーは、次期モデルに何を期待するのか? その答えを求めて、田中は国内はもちろん、欧米、ブラジル、そしてインドネシア等へ向かった。

 田中の海外調査行脚は数次にわたり、調査した人数は優に100人超。これらの調査により、次期モデルの進化点を探っていった。

 こうして登場した新型『ニンジャ』はライダーの風防のために設けられるカウルが一新され、ヘッドライトは一眼式から二眼式に変更。タイヤも太くし、海外で人気の大排気量『ニンジャ』を彷彿とさせる姿となった。

 スタイルだけではない。見て感動、乗ってもっと感動してもらいたい──そのために革新的な装備が用意された。そのひとつが熱風対策だ。走行中は風を巻き込んでエンジンから発する熱を後方へ逃すようになっている。しかし停止中は熱がエンジン周囲にこもりやすい。そこで、停止中でも熱が逃げやすい冷却装置を採用した。

「先進国では“バイクは信号待ちでの停車中は多少熱気を感じても仕方がない”という常識がある。でも年中暑いインドネシアのユーザーには通用しない。これを改善できたら、日本でもきっと話題になる」

 このアイデアインドネシアでの調査によるユーザーの声が元になっている。

「作り手であるメーカーとユーザーでは、“当たり前”感に差がある。我々はその差を埋めた上で、期待を超える目標を立てないと、いい仕事はできない」

 田中が手がけた『ニンジャ250』は、2012年に一足先にインドネシアで発売。噂が噂を呼び、日本国内でも今年2月の正式発売前に予約が殺到。1万台という年間販売台数の大台を突破する可能性も見えてきた。

「二輪車は日本が世界をリードする数少ない商品のひとつ。我々にとっては日本市場の再興こそが大きな夢。なんとかこの夢を叶えたい」

 田中は今、この目標の達成に照準を合わせている。

■取材・構成/中沢雄二(文中敬称略)

週刊ポスト2013年7月12日号

http://www.news-postseven.com/archives/20130707_197571.html

ちなみに、「バイク業界におけるインドネシアなどアジア市場の重要さ」については、日経ビジネスのこちらの記事でも論じられています。なかなか読み応えのある内容です。

インドネシア、バイクが映す10年後のクルマ市場 - 日経ビジネスオンライン