今上天皇皇后の葬法・陵墓についての検討

なるほど。つまりこれは、両陛下の意向がまず表明されたうえでの検討、ということになるわけですか。立場上、思うようにならないこともあるのでしょうが、そうした面も十分に配慮したうえでの意向表明のようですし、尊重すべき見識であろうと思われます。

宮内庁:天皇、皇后両陛下のご喪儀、葬法は火葬
毎日新聞 2013年11月14日 17時50分(最終更新 11月15日 01時28分)


武蔵陵墓地。(左から)武蔵野陵昭和天皇)、武蔵野東陵(香淳皇后)=東京都八王子市で2013年11月13日、本社ヘリから小関勉撮影

 天皇、皇后両陛下の「ご喪儀(そうぎ)」の在り方を検討していた宮内庁は14日、葬法を火葬とすると発表した。天皇の葬法は江戸時代前期から土葬で、火葬は1617年に亡くなった後陽成天皇を最後に途絶えていた。両陛下の墓所にあたる「陵」については、一つの陵への「合葬(がっそう)」でなく、隣り合わせにして一体的に造成することで従来より規模を縮小する。両陛下による簡素化の意向を踏まえたもので、皇太子さまや秋篠宮さまの了承も得ているという。

 ◇陵を縮小、寄り添う形に

 ご喪儀を巡っては、羽毛田信吾長官(当時)が昨年4月の記者会見で「火葬が一般化しており、火葬なら陵の規模や形式も弾力的に検討できる」との両陛下の意向を公表。大正以降の天皇、皇后(皇太后)の陵がある東京都八王子市の武蔵陵墓地の用地に制約があることもあり、見直しを進めてきた。

 同庁で、(1)火葬に変えることで生じる諸問題(2)陵の規模と形(3)一般の本葬に当たる「葬場殿(そうじょうでん)の儀」の場所選定−−を中心に検討した結果、一部の儀式で変更が必要となるが、火葬は両陛下の意向であり、土葬と火葬双方が行われてきた皇室の伝統にかなうことなどから導入を決めた。

 これにより、ご喪儀は昭和天皇の時と同じ内輪の儀式、一般のお通夜に当たる皇居・宮殿での行事である殯宮祇候(ひんきゅうしこう)に加え、「丁寧で比較的小規模な葬送儀礼」が行われる。その後、武蔵陵墓地に設ける専用施設で火葬され、焼骨は宮殿に新設する「奉安宮(ほうあんきゅう)」に安置。拝礼の儀式に続いて葬場殿の儀となる。

 両陛下の陵は武蔵陵墓地大正天皇陵の西側に「寄り添い、不離一体の形」となるよう隣同士に造る。天皇陛下には当初、合葬の意向もあったが、皇后さまが遠慮し、見送られた。陵の面積は計約3500平方メートルとなり、昭和天皇陵と香淳皇后陵を合わせた面積の8割程度になる。形状は明治以降の陵にならい、上部が円く、下部が四角に土を盛った上円下方(じょうえんかほう)墳とする。

 一方、葬場殿の儀の場所については「国民生活や環境への影響が少なく、集中豪雨や竜巻などにも十分対応できる安全な場所」などとしたが、具体的な場所選定は先送りされた。【真鍋光之、長谷川豊】

http://mainichi.jp/feature/koushitsu/news/20131115k0000m040010000c.html

ご喪儀見直し:解説…両陛下の思い反映
毎日新聞 2013年11月14日 22時04分(最終更新 11月14日 22時53分)

 ご喪儀の見直しは、天皇、皇后両陛下による「国民生活への負担を極力少なくしたい」との意向から始まった。念頭には、戦前の法令に準拠して大がかりに営まれた昭和天皇のご喪儀があるとみられる。皇室の長い歴史でも例の少ない生前の意向表明は、「国民と共に歩む」という両陛下の強い思いを示したものといえる。

 天皇陛下が前立腺がんの摘出手術を受けた2003年以降、宮内庁は少なくとも2度、内密にご喪儀の見直しを本格的に探った。「表だって議論しにくい事柄」(同庁幹部)のため、立ち消えになっていた。

 天皇による生前の意向表明では、平安時代初期の淳和(じゅんな)天皇(786〜840年)による遺言が知られている。火葬にし、骨を砕いて山上から散布させたとされるが、両陛下が遺言という形を取らなかったのは政府関係者に十分な準備期間をという配慮とみられる。

 課題もある。一般の葬儀に当たる「葬場殿の儀」の場所が決まっていないことだ。昭和天皇のご喪儀では、皇室行事である葬場殿の儀に続き、国の儀式の「大喪の礼」が同じ新宿御苑で営まれた。「政教分離に反する」との憲法論議が起き、葬場殿の儀終了後に鳥居を撤去し宗教色を消すなど苦肉の策が取られた。宮内庁の風岡典之長官は14日の記者会見で「政府との調整が必要となる」と話したが、両陛下の「簡素に」という思いをどう反映させるのか。重い宿題が残された形となった。【真鍋光之】

http://mainichi.jp/feature/koushitsu/news/20131115k0000m040079000c.html

両陛下:今後のご陵及びご喪儀の在り方についてのお気持ち
毎日新聞 2013年11月14日 18時07分(最終更新 11月15日 00時26分)


宮内庁=東京都千代田区で

 ◇宮内庁が公表した「今後のご陵及びご喪儀の在り方についての天皇、皇后両陛下のお気持ち」

 昨年秋、皇后陛下のお誕生日に際し、宮内記者会から皇后陛下に、今後のご陵及びご喪儀の在り方についてのお気持ちをお聞かせいただきたいという質問があり、その折皇后さまには、このようなことを陛下に先立ちご自分がお答えになることへのご懸念がおありのようで、どうしたものか長官、侍従長にお問い合わせがあった。このご懸念はもっともなことであり、宮内庁としても、いずれ天皇、皇后両陛下のお気持ちをご一緒にお示しいただくことが望ましいと判断し、また、その時期もお誕生日というご慶祝の機会ではなく、改めて別の機会にしていただくよう両陛下にお願い申し上げてきたところである。

 一方、両陛下からは、今後のご陵及びご喪儀の在り方について、かねてよりご意向をお示しいただいてきたところであるが、この質問の出された昨年来、更に折に触れて、ご意向をお伺いする機会をいただき、今回、宮内庁として両陛下のご了解を得てお気持ちをおまとめしたので、これをもって、質問に対する回答とするものである。

 ◇検討に至る経緯について

 天皇、皇后両陛下には、ご即位以来、国と社会の要請や人々の期待におこたえになり、象徴として、あるいはそのご配偶として心を込めてお務めをお果たしになっていらしたが、いつとはなしに、将来のお代替わりのことについて思いをいだかれるようになり、また武蔵陵墓地のご陵をご参拝の機会にも、今後のご陵の在り方について思いを致され、かなり早くから、お二方の間でご陵及びご喪儀のことについてお話し合いになると共に、このようなことは、ご自身方のお気持ちだけで決められることではないからと、折に触れ長官や参与の意見にも耳を傾けていらっしゃった。

 ご陵及びご喪儀の検討の内容については、基本的には皇室の方々ご自身でお決めいただくことで、またことがらの性格上、必ずしも公表を要しないところであるが、上記の宮内記者会からの要望を受け、また、検討の結果を正しく国民に伝えることも必要であると考え、このことを両陛下にご説明の上、大まかなところを公表させていただくこととしたものである。

 ◇今後のご陵及びご喪儀の在り方全般について

 天皇陛下には、皇室の歴史の中に、ご陵の営建や葬儀に関し、人々に過重な負担を課することを望まないとの考え方が古くよりあったことにかねてより思いを致しておられ、これからのご陵やご葬送全体についても、極力国民生活への影響の少ないものとすることが望ましいのではないか、とのお気持ちをお持ちであった。

 同時に陛下には、これまで長きにわたり従来の皇室のしきたりはできるだけこれを変えず、その中で今という時代の要請も入れて行動することを心がけていらっしゃり、ご陵及びご喪儀の在り方についても、そのお気持ちに変わりはない。

 ◇ご陵について

 天皇陛下には、昭和天皇陵と香淳皇后陵が、大正天皇陵と貞明皇后陵の場合と異なり、隣接して平行に設置される形になっていないことをご覧になり、ご陵用地に余裕がなくなってきているのではないかとのご感想をお述べになってこられたことは、昨年4月の発表の際にお伝えしたところであるが、陛下には、このように武蔵陵墓地内にご陵用地を確保するには限度があることをおもんばかられ、今後品位を損なうことなくご陵を従来のものよりやや縮小することができれば、とのお気持ちをお持ちになったところである。

 また、ご陵をやや縮小することにより、武蔵陵墓地内に、昭和天皇陵、香淳皇后陵をお囲みする形で、ご自分方お二方を含めこれからも何代かにわたりご陵が営建され、皆様が離ればなれにならずにお鎮まりになることが可能になるのではないかとのお気持ちもおありであった。さらに、天皇陛下には、ご陵の歴史の中で、かつて合葬の例もあったことから、合葬という在り方も視野に入れてはどうか、とのお考えをお持ちであったが、この合葬とすることについては、皇后さまから、ご自身昭和の時代にお育ちになり「上御一人(かみごいちにん)」との思いの中で、長らく先帝陛下、今上陛下にお仕えになってきた経緯からも、それはあまりに畏れ多く感じられるとされ、また、ご自分が陛下にお先立ちになった場合、陛下のご在世中にご陵が作られることになり、それはあってはならないと思われること、さらに、遠い将来、天皇陵の前で祭事が行われることになる際に、そのご陵の前では天皇お一方のための祭事が行われることが望ましく、陛下のお気持ちに深く感謝なさりつつも、合葬はご遠慮遊ばさねばとのお気持ちをお示しであった。

 ただ、ご陵の大きさや配置に配慮することで、ご自分方をはじめとし、せめて昭和天皇を直接間接にお身近に感じ上げている世代の方々が、昭和天皇香淳皇后のお近くにお鎮まりになることができれば、とのお気持ちは皇后さまも陛下と共通してお持ちであり、その上で、用地の縮小という観点、また、合葬をとの陛下の深いおぼしめしにお応えになるお気持ちからも、皇后陵を従来ほど大きくせず、天皇陵のおそばに置いていただくことは許されることであろうか、とのお尋ねがあった。

 ◇ご火葬について

 ご喪儀の在り方に関することがらのうち、ご葬法については、天皇、皇后両陛下から、ご陵の簡素化という観点も含め、火葬によって行うことが望ましいというお気持ちを、かねてよりいただいていた。

 これは、ご陵用地の制約の下で、火葬の場合はご陵の規模や形式をより弾力的に検討できるということ、今の社会では、既に火葬が一般化していること、歴史的にも天皇、皇后の葬送が土葬、火葬のどちらも行われてきたこと、からのお気持ちである。

 ご火葬施設について、両陛下のご身位にかんがみ、既存の施設によらず、多摩のご陵域内に専用の施設を設置申し上げたい旨、両陛下に申し上げたところ、その場合には節度をもって、必要な規模のものにとどめてほしい、とのお気持ちをお示しであった。

 ◇葬場殿の儀の場所について

 国葬の場合は、その関係者の意見もあろうが、崩御後皇室として執り行う葬場殿の儀の場所については、国民が広く利用している場所を長期間占用したり、葬場の設営に際して多くの樹木の伐採をしたりすることがないかなど、国民生活や環境への影響といった点に留意する必要がある、とのお考えをお持ちである。

 さらに、両陛下には、近年特に顕著になっている気象条件の急激な変化を非常に心配しておられ、ご喪儀に参列される内外の方々に万一の事があってはならず、暑さや寒さに加え、集中豪雨や竜巻などの可能性も十分考慮し、出席者の安全確保ができる場所を、皇太子殿下や秋篠宮殿下など殿下方のご意見も伺いつつ選定してほしいとのお気持ちをお示しいただいたところである。

http://mainichi.jp/feature/koushitsu/news/20131115k0000m040011000c.html