刈谷工の自殺、第三者委員会が調査報告書を提出

共同通信が記事を配信したので、ロイターや地方紙も記事にしているほか、中日新聞や読売新聞・朝日新聞などが独自の記事を載せています。

県教委、学校報告うのみ 刈谷工生自殺で調査委最終報告
2014年2月5日


大村秀章知事(右)に報告書を手渡す第三者調査委員会の加藤幸雄委員長=名古屋市中区の県公館で

 刈谷市刈谷工業高校二年の野球部員山田恭平さん=当時(16)=が自殺した問題で、県が設置した第三者調査委員会が四日にまとめた最終報告。山田さんの死から二年半が過ぎ、関係者の証言が得られにくい中、事実の究明は困難を極めた。調査委は「早く調査していれば、もっと真実に近づけた」と悔やみ、学校と県教委、県教委設置の第三者調査委の対応の甘さを断罪した。

 県の第三者調査委員会の最終報告は、事実究明に対する県教委の消極的な姿勢を指摘した。加藤幸雄委員長は「学校側の自発性に任せ、専門的見地からの助言をしていなかった」と批判した。

 報告書によると、生徒の自殺から一カ月後、学校側が「野球部内で体罰があった」と県教委へ報告。県教委が「体罰と生徒の自殺は関係ない」との学校の報告を信じ、体罰情報を自殺と結び付けて受け止めなかったことを「非常に問題がある」と断じた。

 さらに、今回の調査委が設置される前に、県教委が設けた最初の調査委が委員の氏名を非公表としたことや、遺族の事情聴取の際に代理人弁護士の立ち会いを拒んだことを問題視し、「遺族の不信感を招いた」とした。

 県教委は今回の反省を踏まえ、昨年十一月に調査委の設置要項を見直した。これまでは非公開としていた調査委の調査内容を「原則公開」に改め、委員の氏名も公表。弁護士など遺族の付添人の同席も認めることにした。

 県教委の担当者は「学校からの報告に限定せず、あらゆる可能性を考えて調査分析が必要だった」と話し、「遺族の理解を得ることを念頭に進めていかなければならない。委員の選出にも遺族の意向を反映させる」と述べた。

http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20140205/CK2014020502000044.html

刈谷の高2自殺 「体罰見聞き、うつ病進行」

第三者委最終報告 学校側対応批判も

 愛知県立刈谷工業高校2年の山田恭平さん(当時16歳)が2011年6月に自殺した問題で、県の第三者委員会は4日、所属していた野球部で体罰を見聞きしたことなどでうつ病が進行し、自殺に至ったとする最終報告書をまとめた。

 体罰を直接受けていないとして因果関係を十分調査しなかった学校側に対しては、消極的な姿勢が遺族の反発や不信を招いたと批判した。

 第三者委は、県教育委員会が当初設置した調査委員会が委員名の公表や弁護士の立ち会いを拒否したことなどから遺族側が反発し、大村秀章知事に設置を求めた。報告書は「入り口で(遺族との)対立を助長し、調査が水泡に帰した」と当時の県教委の対応も問題視した。

 自殺の原因については、山田さんが〈1〉肩や手のけが〈2〉体罰を含む部の雰囲気〈3〉学業成績に関するプレッシャー――などで葛藤が生じ、部活動を「辞めたい」「辞められない」という二律背反に悩まされうつ病になったと指摘。野球部顧問による他部員への体罰を見聞きしたことも症状を悪化させた一因と位置づけ、「思考の狭窄きょうさくが起こり、もはや死ぬことしか考えられなくなった」としている。山田さんは廃車の中で練炭自殺した。遺書はなかった。

委員長「早く調査始めれば・・・」

 第三者委は13年4月に発足し、約1年かけて学校関係者らから聴き取り調査を行った。ただ、自殺からすでに約2年が経過しており、元同級生や野球部員63人のうち聴き取りに応じたのは7人、アンケートには14人だけ。「協力しない」との回答は19人に上った。

 このため、委員長の加藤幸雄日本福祉大名誉教授は4日、大村知事に報告書を手渡した際、「聴取に応じない人も多数いた。早く調査を始めれば、より真実に近いまとめができたのではないかと残念」と初動対応の重要性を訴えた。

 報告書には今後の対策として、学校と教育委員会の緊密な連携や心の健康対策の充実などが提言として盛り込まれた。大村知事は「教育現場に周知徹底し、二度と起きないよう取り組む体制を作りたい」と再発防止の徹底を強調した。

 一方、遺族側は今回の報告書の内容について「説明不足」と不満を募らせている。山田さんの母・優美子さん(44)は4日、読売新聞の取材に「うつ病は否定しないが性格や成績など本人のことばかり書かれ、体罰など周りの要因について指摘が不十分。我々の疑問に答えていない」と語った。県側に調査の継続を要望しているが、大村知事は「丁寧に調査してもらった」として応じない構えだ。

(2014年2月5日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/chubu/news/20140205-OYT8T00128.htm

体罰を見聞き、自殺の一因」 愛知の高2、部活動悩み
2014年2月5日14時26分

 愛知県立刈谷工業高校2年の山田恭平さん(当時16)が2011年6月、練炭を使って自殺した。遺書などはなく、県の第三者調査委員会が13年から自殺の経緯などを調べ、4日、最終報告書をまとめた。「山田さんが所属する野球部内で体罰を見聞きしたことなどでうつ病を発症し、自殺の一因となった」と結論づけた。

 報告書によると、山田さんが自殺する約20日前、校内でトランプをしていた野球部員5人に、副部長が平手打ちをしたり、蹴ったりするのを目撃していた。

 山田さんは直接的な体罰は受けなかったが、第三者委は「周辺で体罰を見聞きしたことで心を痛めたことを自殺に至る経過の中では重視するべきだ」と指摘した。野球部をやめたくてもやめられないという二律背反に悩み、うつ病を発症。解消するには自殺するしかないというところまで追い詰められていた。

 野球部をやめようとした理由については、「野球部の体罰を伴うハードな指導のあり方に不満を持っていた」とした。ほかにも肩を壊して思うように野球ができず悩みながら、監督らに慰留されるなどしてやめられなかった。

 報告書では、父母間の暴力を見聞きすることも虐待の一種とみなす「DVウィットネス(目撃者)」という考え方を紹介した。その上で、「体罰を受けていないから(自殺と)無関係という短絡的判断はやめたほうがよい」と指摘した。体罰の是非ではなく、「体罰による負の影響が存在することが重要」との見解を示した。

 さらに、山田さんの母親が学校に野球部内で体罰があることを指摘したのに、「学校が行った調査は極めて不十分」と批判。「自殺と体罰は関係がない」と判断した学校の報告をそのまま受け入れた県教育委員会の姿勢も「非常に問題」と断じた。

 自殺をめぐっては、学校と県教育委員会がそれぞれ調査したが、遺族が調査方法などに不信感を持ち、県教委から独立した調査委の設置を県に求めた経緯がある。

 自殺防止対策のひとつとして、学校や教育委員会が日頃から専門職や専門機関と密接な関係を持っておけば、事案発生時にも専門的見地からの助言を得やすくなる、と提言した。(山本奈朱香)

     ◇

 《刈谷工業高2自殺》野球部員で2年生だった山田恭平さん(当時16)が2011年6月に自殺した。遺書はなかった。遺族側は野球部での体罰が自殺の原因と主張。学校側は因果関係を認めなかった。その後、愛知県教育委員会が第三者調査委員会を設置したが、委員名を公表しないことなどに遺族が「公平で十分な調査ができない」と反発。県教委から独立した調査委が昨年4月以降、自殺の経緯や県教委と学校の対応の検証、再発防止策を協議してきた。

http://digital.asahi.com/articles/ASG1Y66M4G1YOIPE03H.html

第三者委員会の調査が入ったことによって、それがなかった時のことを考えれば、まだましになったとは思います。しかし、これで納得しろと言われて納得できるかと問われれば、とてもそんな段階ではないとも思います。

県教委、文書開示を拒否 刈谷の高2自殺
2014年2月6日12時02分

 愛知県立刈谷工業高校2年の山田恭平さん(当時16)が2011年6月に自殺した後、遺族が開示可能な公文書の開示を求めたにもかかわらず、県教育委員会が「法定代理人になり得ない」と、間違った理由で拒否していたことがわかった。

●遺族に誤った説明

 県教委などによると、県教委は、山田さんの自殺後に想定問答集を作り、11年9月30日に遺族宅を訪れた際に携帯した。その際、山田さんに関する情報の開示請求を考えていた母親に対し、「親というだけでは法定代理人になり得ない」と話したという。

 朝日新聞が入手した想定問答集には「(学校からの報告書を)公文書開示情報請求された場合は存否応答拒否」「自己情報開示請求された場合は、遺族といえども法定代理人となり得ないことを根拠に拒否する」と書かれていた。

 さらに体罰については、「(副部長の教諭のたたく、蹴る、正座させるなどの体罰的指導について)なぜ全てを体罰として処分しないのか」という質問を想定。「一般的に、指導する側、される側の体罰のとらえ方は個人によって異なる。状況や双方の受け止め方等を勘案し学校長が判断する」とあった。

 07年の文部科学省通知では「身体に対する侵害を内容とする懲戒(殴る蹴る)など」を体罰と定めている。

 県教委は公文書開示拒否について、「当時の担当者が知らなかった。遺族へは申し訳ないことをした」。体罰については、「(副部長の)具体的な行為に対して述べたものではない」と説明している。

 これに対し、母親の優美子さん(44)は「学校長の判断で体罰でなくなってしまうから、体罰は決してなくならなかったんだと思った。こうした県教委の対応も第三者委に調査して欲しかった」と話している。(山本奈朱香)

●ミスで正座・硬球ぶつけ・ビンタ

 山田恭平さん(当時16)の同級生で、同じ野球部員だった男性が、朝日新聞の取材に応じ、「ミスをすると正座をさせられ、教諭から硬式球をぶつけられることもあった」と証言した。

 野球部副部長の教諭が2011年5月、トランプをしていた野球部員に体罰をした際の様子も目撃したという。この体罰は県の第三者委の最終報告書でも認定されており、「平手で結構な強さで顔をビンタされていた。『そこまでやるか』と思った」と話した。

 山田さんについて「優しい子で、人の悪口も言わなかった」と振り返る。「僕は体罰は指導の一環だと思っていたが、『嫌だな』と、引きつった顔だった」と記憶しているという。

 男性は第三者委には証言しておらず、アンケートにも応じていない。当時の部員約20人で相談し、「控えよう」と決めたからだった。男性は「学校や県教育委員会の調査を受け、何度も聞かれるのはつらかった」と話した。

http://www.asahi.com/articles/CMTW1402062400001.html