【高校野球】東の二松学舎大付、西のPL学園

まだ予選が全部終わったわけではありませんし、石川県大会決勝での星稜の9回裏8点差をひっくり返した逆転サヨナラ勝ちなど、今年の高校野球は話題には事欠きませんけど、個人的にはやはりこの2校がずっと気になっていました。

まずは去年、予選決勝10連敗を喫した二松学舎大付。そこから2年連続して決勝まで這い上がってきたところに、40年越しの悲願成就に賭ける当事者・関係者の思いが見えるようでした。帝京との決勝戦の展開にも、並々ならぬ執念を感じました。こういうチャンスはそうそう巡ってくるものでは、ありませんからね。

高校野球東東京・二松学舎大付の悲願はまたも持ち越し

11度目ついに夏切符!二松学舎大付 1年生パワーで帝京撃破

東東京大会決勝 二松学舎大付5―4帝京 (7月29日 神宮)


<二松学舎大付・帝京>優勝を決め大喜びの二松学舎大付ナイン Photo By スポニチ

 第96回全国高校野球選手権大会(8月9日から15日間、甲子園)の地方大会は29日、5大会で決勝が行われ、東東京では決勝で10連敗中だった二松学舎大付が帝京を延長10回の末、5―4で下し、悲願の初優勝を飾った。今村大輝捕手(1年)が7回に同点3ランを放ち、大江竜聖投手(1年)も6回途中から好救援を見せるなど、1年生コンビが負の歴史にピリオドを打った。30日は神奈川、静岡、大阪、長崎で代表校が決まる。

 1点リードの10回2死。最後の打者を二ゴロに仕留めると、マウンド付近に歓喜の輪が広がった。その瞬間、市原勝人監督は、多くのOBたちがいる一塁側スタンドに向け、丁寧に一礼した。

 「最後のアウトは夢を見ているようだった。僕の方が“また今年も駄目か”とくじけそうでしたけど、選手がたくましかった」

 71年から決勝は実に10連敗中だった。昨年に続き迎えた、11度目の決勝戦。5回に先制され、6回にも2点を失った。指揮官が諦めかけるほどの劣勢。歴史を塗り替えたのは、4カ月前まで中学生だった1年生だった。

 3点を追う7回1死一、二塁で今村が打席に入った。1ボールからの2球目、高めのスライダーを強振した。打球は風にも乗って左翼席に飛び込んだ。公式戦初本塁打が起死回生の同点弾になり「入るとは思わなかった。ベースを一周しても実感が湧かなかった」と振り返った。実は、ベンチからは「待て」のサインが出ていたが「集中し過ぎて、周りの声も聞こえなかった」と言った。

 昨夏の決勝戦を神宮のスタンドで観戦し、泣き崩れる選手を目にした。「何回も決勝で負けていることは知っていて入学した。自分が少しでも貢献して甲子園に行けたらと思った」。春の東京都大会からベンチ入りすると、5月からは正捕手に。グラウンドに出たら学年は関係ない。日々の練習では一日1000スイングにも音を上げず、先輩投手にも「攻めろ」「もっと腕を振ってこい」などと、強い口調で鼓舞してきた。3年生エースの大黒は「試合前は“オエー”って吐きそうになっていたのに、試合になったら1年生とは思えなかった」と舌を巻いた。

 試合を締めくくったのも、1年生だった。6回1死二、三塁からマウンドに上がった大江は、先頭打者に適時打を許したが、最後まで踏ん張った。「喜びは(男手一つで育ててくれた)父(広志さん)に伝えたい。緊張は全くなかった。甲子園に行くための通過点と思って、練習試合みたいな気持ちだった」と、強心臓ぶりを発揮した。今大会は4試合に登板し、わずか1失点の快投だった。

 同校のエースとして82年センバツ準優勝投手になった市原監督は言った。「実は試合前に初めて選手に、“(俺を)甲子園に連れて行ってくれ”と頼んだんです。でも、(待て、のサインで本塁打など)選手は最後は僕の手の中から飛び立った。勝てる時はこういうものなのかな」。11度目の正直で手にした甲子園切符。あとは夢舞台で目いっぱい暴れるだけだ。

[ 2014年7月30日 05:30 ]

http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2014/07/30/kiji/K20140730008654640.html

二松学舎大付・市原監督 過去10度の涙 最後の最後まで不安「夢見てるよう」

第96回全国高校野球選手権・東東京大会決勝 二松学舎大付5―4帝京 (7月29日 神宮)


甲子園出場を決め笑顔の二松学舎大付・市原監督 Photo By スポニチ

 延長10回2アウト。最後の打球が二塁に転がっても、二松学舎大付・市原勝人監督は“半信半疑”でグラウンドを見つめていた。

 「二ゴロに取った時に、それでも不安で…。夢見てるようです」。

 過去10度、決勝に進出しながら、つねに跳ね返されてきた大きな壁。それを11度目にしてついに打ち破った。苦しい展開となったこの日の決勝。試合中には「また今年もか、と思う場面もあった」と市原監督。中盤に失点を重ね、6回を終えて3点ビハインド。だが、今年のナインは、先輩たちの無念を晴らすため必死に立ち向かった。

 7回、1年生捕手・今村の左越え3ランで追いつくと、再びリードを許した8回にも、小峯の三塁強襲適時打で追いついた。そして延長10回、竹原の左中間適時三塁打で勝ち越した。このリードを6回途中からリリーフした1年生左腕・大江が守った。

 「選手はよく頑張ってくれた。たくましかった。1年生バッテリーには頭が下がります。甲子園では3年生に頑張ってもらいたい」。市原監督は喜びをかみしめながら、大舞台へと思いをはせた。

[ 2014年7月29日 16:05 ]

http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2014/07/29/kiji/K20140729008652440.html

そしてPL学園。対外試合禁止処分に長期にわたる監督不在と困難に直面していたことは間違いないのですが、よくここまで来ましたね。決勝戦の相手は昨今の大阪高校野球界をリードする大阪桐蔭ということで、春夏連覇経験校同士の激突に、好勝負を期待しています。

名門・PL学園、復活への道のり

PL学園 “監督不在”も決勝進出!5年ぶりの夏へあと1

第96回全国高校野球選手権大阪大会準決勝 PL学園7―3関大北陽 (7月29日 舞洲ベースボールスタジアム


関大北陽・PL学園>決勝進出を決めガッツポーズのPL学園・谷 Photo By スポニチ

 監督が事実上不在で戦っているPL学園が関大北陽に打ち勝ち、5年ぶりに決勝進出を果たした。野球未経験ながら監督登録でベンチ入りしている正井校長は「昨年は(不祥事で)大会に出られなかったうちが、ここまで来られて出来過ぎ」と感激しきりだった。

 3―1の6回に追い付かれたが、校長の「まだ終わっていない」との激励に選手が応える。8回に攻め立てて4点を勝ち越し。5年ぶりの夏切符を目指して大阪桐蔭に挑む。中川圭主将は「校長先生を胴上げする気持ちで、あした戦いたい」と必勝を誓った。

[ 2014年7月29日 17:27 ]

http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2014/07/29/kiji/K20140729008652600.html

PL学園 校長監督で王手!5年ぶり覇権で“新たな伝説を”

大阪大会準決勝 PL学園7―3関大北陽 (7月29日 舞洲ベースボールスタジアム


関大北陽・PL学園>8回、ベンチで正井監督(右)に代わりナインに指示を出す宇佐美 Photo By スポニチ

 これはもう、高校野球界の一つの事件だ。経験や勝負勘が必要とされる夏の大会、しかも激戦区大阪で、野球未経験の“校長監督”がチームを決勝に導いた。PL学園・正井校長は強豪・関大北陽撃破に目を丸くしながらも、元国語教諭らしく穏やかな口調で喜んだ。

 「言葉が出てきません。監督は私ですが本当に努力をしているのは、選手、スタッフなど、いろいろな方のおかげです」

 昨年2月の部内暴力の処分で昨夏の大阪大会には出られなかった。そして監督も不在に。昨秋はやむなく、正井校長が指揮官になった。その後も指導者は見つからず、今夏も“校長監督”を継続させている。ただし、「技術は分かりません。選手をけなさないのが、結果が出ている要因では」と、ムード作りに専念。作戦を考えるのは全て選手だ。

 ダッグアウトの本塁寄りに立ち、あたかも監督のようにサインを出す選手がいる。背番号14の宇佐美がその人。準決勝は5度の無死一塁で全て犠打を指示して成功した。大人がやっても難しい仕事ゆえ、うまくいくことばかりではない。4回1死一、三塁では、9番・改田にスクイズを指示するか迷った。強攻策が実らず、ここは無得点。「みんなの意見が一致するサインを出さないといけないのが難しい」。この改田は8回に決勝犠飛を放ち、作戦に苦労する宇佐美を助けてみせた。

 継投は主将の中川圭が決断する。この“プレーイングマネジャー体制”で昨秋の府大会に準優勝し、今夏もあと一つまでやってきた。5年ぶり18度目の夏切符をつかめば、栄光の歴史に新たな伝説を加えることになる。

[ 2014年7月30日 05:30 ]

http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2014/07/30/kiji/K20140730008654860.html