アルプスとブラバンの甲子園

さすがナンバー。渋く内容のある記事を書いてきますね。

個人的には、PL学園ブラスバンドは、オリジナルな定番に加えて、それまで甲子園では使われていなかった曲を次々に応援歌として世に問うて、アルプススタンドでも甲子園のトレンドを率いていたことが思いだされます。なので、極私的には「天理とPL学園」が甲子園ブラバンの双璧だったのですが、それが「天理と大阪桐蔭」になっているのは、時代の流れでやむを得ないかもしれません。

これを聞いていても、PLの時だけ血の沸き立ち方が一段違います(個人の感想です)。智弁学園智弁和歌山は似ているようで選曲が違っていたり、京都西(京都外大西)が完全オリジナルだったり、いろいろ集められていてよいですね。

似たような編集をしたものに、こちらもありますね。

ああでも、PL学園の応援を甲子園でまた聞きたいなあ…。


野球の強豪は、吹奏楽の名門も多い!? 完全ブラバン目線で見る選抜甲子園。

梅津有希子 = 文
text by Yukiko Umetsu photograph by Hideki Sugiyama
2015/03/20 11:00

 天理(奈良)、大阪桐蔭(大阪)、常総学院(茨城)、愛工大名電(愛知)、春日部共栄(埼玉)、東海大四(北海道)……言わずと知れた甲子園の常連校だが、吹奏楽の世界でも強豪ということをご存じだろうか。

 野球の名門で、実は吹奏楽も名門という学校は少なくない。アルプススタンドで彼らが奏でる音色は、まるでステージで吹いているかのような名演揃い。何気なく吹いているように聴こえる応援曲も、注目して聴いてみると、とてつもなくクオリティが高いのだ。

 今センバツブラバン応援の見どころで、筆者のイチオシは天理と大阪桐蔭

 古豪天理と、一大勢力を築いた新興校・大阪桐蔭。どちらも、全日本吹奏楽コンクールに出場経験がある名門校だが、伝統を重んじる天理の応援に対し、大阪桐蔭はJ-POPや最新のヒット曲を取り入れるなど、“今どき”な応援。新旧の対比がわかりやすいこの2校は、応援スタイルがまるで違うのが興味深いところ。詳しく解説していこう。

ヒット曲には見向きもしない、伝統の天理。

 高校野球の定番応援曲といえば、「タッチ」や「狙いうち」、「サウスポー」などの懐メロが中心。現役高校生たちが知る由もない昭和のナンバーが、今も脈々と受け継がれている世界だ。

 最近では「あまちゃん」や「アナ雪」などのヒット曲を取り入れたり、選手ごとに応援曲を吹き分ける学校も多い中、伝統を重んじる天理には一切ブレがない。ミーハーなヒット曲には手を出さず、基本的に同じ曲の繰り返しだ。

「セント・ポール」、「オブラディ・オブラダ」、「ラブ・ミー・テンダー」、「ワッショイ」。そして、チャンスの時に吹く「天理ファンファーレ」。

「セント・ポール」は立教大学の応援歌で、プロ野球では阪神タイガースが、高校野球では天理のほか、横浜(神奈川)など多くの学校が採用していることでも知られる。柳沢慎吾が甲子園の名場面を再現する「ひとり甲子園」というオリジナル芸があるが、「横浜vs.PL学園」に登場する、「ててーててーてーよこーはまー♪」である。

 ちなみに、元の歌詞は「St.Paul's will shine tonight, St.Paul's will shine.」。まさに、名場面に名曲あり。

大阪桐蔭の嵐「Happiness」は必聴の美しさ。

 大阪桐蔭は、今や野球、吹奏楽ともに一大勢力を築いている。

 吹奏楽部の創部は2005年でまだたった10年の歴史だが、創部からわずか2年で全日本吹奏楽コンクール出場を果たすなど、日本の吹奏楽界に彗星の如く現れた。名門校がひしめき合う激戦の吹奏楽コンクール関西大会を突破し、毎年のように全国大会に出場し続けている。

 同校の演奏は、とにかくシンフォニックであることにこだわる。吹奏楽部はセンバツの開幕直前まで演奏旅行でニューヨークに遠征しているが、カーネギーホールでも、甲子園のアルプススタンドでも、どこで吹いても美しく交響的で、品がある。

 吹奏楽部の全部員が駆けつけると、総勢200人近くにもなる大所帯としても知られるが、高校野球大阪府大会は鳴り物禁止のため、迫力ある吹奏楽部の応援が聴けるのは、基本的に甲子園だけなのだ。

“浪速のモーツァルト”作曲の「アルプス・キダ・タロー」。

 同校の応援を聴いてしみじみ感じるのが「応援の前に音楽である」ということ。応援に熱くなるのはどこの学校も一緒だけれど、どの曲も終始「ff」(フォルテシモ)の大音量で吹き鳴らす学校も多い。本来、どんな曲でも楽譜には必ず音の強弱が書かれているものだが、アルプススタンドではダイナミクス(=音の強弱)まで気にする学校は少ない。

 しかし、大阪桐蔭は違う。大音量で吹くべきところは吹き、抑えるべきところは抑える。筆者のお気に入りは、嵐の「Happiness」で、サビの部分のクレッシェンドの美しさは、いつもうっとりと聴きほれてしまう。「ちゃんと強弱つけてさすがだな」と。

 大半の曲の終わりを「タッタタタ」のリズムで締めるのも、同校の特徴。AKB48の「上からマリコ」や、SMAPの「SHAKE」など、おなじみのJ-POPも多いが、闘争心をかきたてるような「You are スラッガー」と、“浪速のモーツァルト”こと、キダ・タローが作曲した「アルプス・キダ・タロー」は必聴のオリジナル曲。ぜひ注目して聴いてほしい。

大阪桐蔭スーザフォンは、1台100万円!

 名門吹奏楽部に共通するのは、ハイクラスな楽器を使っているという点。

 特に際立つのが、ピカピカに光り輝く、大阪桐蔭スーザフォンスーザフォンとは、朝顔のように大きく開いたベルが特徴の、野外用の低音楽器。立っていても吹きやすい形状で、通常はチューバ奏者が担当する。多くの学校が、繊維強化プラスチック(FRP)製の白いスーザフォンで演奏する中、大阪桐蔭のスーザは1台約100万円の真鍮製。ちなみにFRP製は約50万円なので、ほぼ倍である。同校にはスーザフォン奏者が10人ほどいるが(多い!)、アルプススタンドから、真鍮だけがもつ重厚な響きをとどろかせている。つまり、1000万円の重低音を放っているのだ。

 キラキラと陽射しを反射しながら、大阪桐蔭のすべての応援曲を底から支えるスーザフォン。テレビで見ていてもあの迫力ある大群はひと目でわかるので、ぜひ注目してみてほしい。

浦和学院vs.龍谷大平安は、サンバとボレロの戦い。

 3日目第3試合の浦和学院(埼玉)vs.龍谷大平安(京都)は、ずばりサンバvs.ボレロ対決。

 吹奏楽コンクール西関東大会常連の強豪・浦和学院の名物応援曲といえば「浦学サンバ」。1〜5までバリエーションがあり、底抜けに明るい応援が特徴だ。

 対する龍谷大平安は、吹奏楽部顧問作曲の「怪しいボレロ」で勝負。曲名通りの不気味なメロディーは、ダントツのオリジナリティ。業者からCD収録の依頼があるものの、「オリジナルを大切にしたい」との理由ですべて断っているという。近年真似して演奏する学校が急増中の、人気曲でもある。

 この2校の対戦でしか観られない、稀有なサンバvs.ボレロ対決は超貴重! 龍谷大平安の巨大なHの人文字も見もの。

 茨城の強豪・常総学院も、全日本吹奏楽コンクールの常連校。骨太でクラシカルな応援団が全体を引っ張っていくのが特徴で、大学野球の応援の影響が色濃いという印象。慶応の「ダッシュ慶応」と、早稲田の「大進撃」の両方を演奏するというハイブリッドスタイルは、当然ながら大学野球ではあり得ないことで、高校野球の応援ならではの“いいとこ取り”といえるだろう。

 多くの学校では打楽器パートの生徒がバスドラムやスネアドラムでリズムを刻むが、常総は、大太鼓を革が破れそうなくらい力強く叩く、応援団の大太鼓が全体の演奏を引っ張っていくという珍しいスタイル。オリジナル曲の「JOSOサンバ」に注目。

近江高校の名物は、地元スーパーのテーマソング!?

 滋賀県代表の近江高校は、マーチングの強豪校。琵琶湖ブルーに染まるアルプススタンドで、キレのいい演奏を聴かせる。名物は滋賀県民なら誰もが知っている名曲、スーパー「平和堂」のテーマソングだったが、聞くところによると今年はほかの曲でいく模様。

ルパン三世」や「アフリカン・シンフォニー」など、おなじみの応援曲を演奏する一方、ロシア民謡の「カチューシャ」の存在感が際立つ。この曲を吹くのは、おそらく近江くらいではないだろうか。ユニフォームやTシャツに加え、メガホンや応援曲を書いたプラカードまで青・青・青。徹底的に“琵琶湖ブルー”なアルプススタンドは要チェック。

 今回センバツに出場出来なかった学校も、素晴らしいブラバン応援は全国にたくさんある。テレビ観戦と球場での観戦は、音の迫力がまったく違うし、吹奏楽強豪校のキビキビとした立ち居振る舞いや規律正しさ、安定した音程の良さなど、演奏も雰囲気もまるごと楽しめるのはライブならでは。

 ブラバン目線の野球観戦、一度球場で体感したらその魅力にどっぷりとハマってしまうこと間違いなし!

http://number.bunshun.jp/articles/-/822954

ちなみに、近畿と関東ではだいぶブラバンの選曲が違いますね。関東勢が強いときには、それがまた忌々しく癇に障るんですよ…。

もっとも、記事にも挙がっていますけど、常総学院のサンバなどは私も好きです。サンバでは浦和学院も有名ですね。

そしてあと、甲子園と言えば、特定の学校を問わず、これを抜きには語れません。