合葬墓・永代供養墓・新しい墓地のあり方

最初は北広島市の合葬墓の記事が目に付いたんですが、関連記事として引っかかってきた記事もついでに。

北広島霊園合葬墓 利用申請44件80体に 遺族「ほっとした」
10/27 16:00


合葬墓への納骨を終えた後、慰霊堂の献花台に花を供え、手を合わせる遺族

【北広島】市が9月17日から受け付けを始めた北広島霊園(仁別)の合葬墓(がっそうぼ)の利用申請が、26日までに44件80体分に達した。納骨も始まっており、23日までに31件56体の遺骨を埋葬。利用者の多くは、墓を管理する人がいないことを申請の理由に挙げているといい、来年1月に始まる生前予約についても問い合わせが相次いでいる。

 23日午前、北広島霊園の慰霊堂。栄町の女性(83)は、夫と母親の骨が骨つぼから床下の合葬室に移されるのをじっと見守っていた。市職員に「最後のお別れを」と促され、目を閉じて手を合わせると、その後は納得した様子で「ほっとしました」と礼を述べた。

 札幌市内に本家の墓はあるが、高齢で1人で参拝するのは難しい。近くに墓を建てても一人娘は嫁いでおり、誰も守る人がいない。自宅に骨を保管したまま悩んでいたという。「ここならすぐにお参りできる。ほかの人の骨と一緒だからさみしくなくていい」と語った。

 合葬墓の整備は近年全国各地で相次いでおり、市も身寄りのない人らの遺骨を安置する慰霊堂の床下に、2千体の骨を収容できる合葬室を新設。9月17日から納骨の受け付けを始め、今月9日から埋葬を行っている。合葬墓の利用料は、永代使用料と永代管理料を合わせ1体2万7千円(15歳未満の遺骨は2万3千円)。

 市によると、多くの利用者が申請の理由を「墓を守る人がいない」としている。今月23日、岩見沢の寺の納骨堂から両親の骨を合葬墓に改葬した稲穂町の女性(70)も「子供に迷惑をかけたくない。私が元気なうちに墓じまいをしよう思った」と語る。自身も亡くなれば合葬墓に入るつもりで「両親には『もうすぐ私も行く』と声をかけた」という。

 霊園を管理する市環境課は「予想はしていたが、あらためて合葬墓が求められていたと実感した」と語る。埋葬後、ほとんどの人が職員に感謝の言葉をかけるといい「時代に合ったサービスを提供し、喜んでもらえるのは、私たちもうれしい」とやりがいを感じている。

 一方、生前予約は1月から始める予定で、これまでに30件以上の問い合わせがあった。今年4月から合葬墓の生前予約を開始した千歳市では、26日までに21件の予約があったという。市は「年末までの納骨の申請状況を見て予約の受付件数を決めたい」としている。(本郷由美子)

http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/area/sapporo/1-0195107.html

上の北海道新聞の記事にある北広島のケースでは、合葬墓と永代管理とが一体で運営されています。ただ、合葬と永代供養とは、重なることも多々ありますが、必ずしも重なるとは限りません。そのへんについては、下の佐賀新聞の記事が参考になるでしょう。

とりあえず留意しなければならないのは、「合葬は後戻りができない」ということです。その後、お骨を取り分けることはできなくなりますから、その点をよくよく考えて選択しなければなりません。

永代供養墓、佐賀県内でも関心高く

 先祖代々の墓を処分し、寺に管理や供養を託す「永代供養墓」への関心が佐賀県内でも高まっている。跡継ぎが県外に出て行くなど、「墓守」がいない地域社会の現実を映し出す一方、家制度と結びついた「檀家(だんか)」に支えられてきた寺院側にとって、新たな生き残り策の側面も。超高齢化から「多死社会」を迎えつつある今、供養や信仰の在り方が変わりつつある。

 本紙の連載企画「たそがれの時代」で今月5日に紹介した永代供養墓には、読者からの問い合わせが相次いだ。記事中の寺院は小城市小城町の妙鏡院。一つの墳墓に不特定多数の人が入る合葬墓とはいえ、永代供養料が1体2万5千円で、数十万円とされる「相場」をはるかに下回る。

 「必要とするすべての人を受け入れようと、年金生活者でも払える価格にした」と阿比留節眞住職(42)。「困った人を分け隔てなく助けるのが宗教の役割。それを忘れ、何かにつけて高額な金を取るようになったのが今の寺離れ、檀家離れを招いた」と話す。

 仏教界の「常識」を破った価格設定は注目を浴び、墓には建立から4年で200体が入った。さらに佐賀市内の葬儀社と組み、戒名や火葬を含む葬儀一式を総額40万円で引き受ける事業も始めた。

 「それこそ檀家離れを助長している」と否定的意見もあるが、大手スーパー「イオン」が3万5千円で永代供養ができるサービスに乗り出すなど、葬送・供養のビジネス化は進んでいる。人口減少で檀家制度が揺らぐ寺院も「生き残り」の模索を迫られている。

 鳥栖市の龍華寺は7年前から永代供養墓を取り入れ、大野城市に所有する霊園を含め、約6千基ある墓のうち1割を占めるまでになった。供養料は一つの墳墓に骨つぼ四つまで入る家族墓で57万円。「お金がない高齢者が増えることを考えると、もっと安くすることもできるが、ほかの寺をつぶしてしまう」。大津茂登住職(71)は“価格競争”の激化を危ぐする。

 14年前、県内で最も早く永代供養墓を作った神埼市脊振町の浄徳寺は、家族墓1基100万円にもかかわらず、108基すべてが埋まった。「新しく作ってくれという声も多いんだけど…」と千々岩久外前住職(73)。今や永代供養墓は珍しくなくなり、価格が問われる時代。「費用をかけて作っても、全部埋まるかどうか」と不安を語る。

 永代供養墓は、ほとんどの寺院が宗派を問わないが、嬉野市のある寺は受け入れを檀信徒に限っている。「田舎の寺は墓だけの付き合いじゃだめ。門徒さんを大事にしないと、寺も維持できず、将来にわたる供養もできない」と住職。金銭だけでは割りきれない、地域コミュニティーとの深いつながりを強調する。

 永代供養は先祖崇拝を重視する日本の仏教独特のスタイル。「個人の宗教」とされるキリスト教に対し、仏教が「家の宗教」と呼ばれるゆえんだ。少子化核家族化で「家」そのものが揺らぐ中で、永代供養への関心の高まりは、宗教が「心のよりどころ」になり得ているか、重い問い掛けもはらんでいるようだ。

■永代供養墓 寺院が墓を引き継げない人に代わり、将来にわたり供養や管理を引き受ける墓のこと。墓の作りは、不特定多数の人が入る合葬墓や家族や夫婦で入る個別墓などさまざま。少子化核家族化、価値観の多様化に伴い関心が高まり、先祖代々の墓を撤去して遺骨を移す人も増えている。納骨の方法や供養の頻度、費用などは宗派や寺院によって異なる。

2014年04月20日更新

http://www1.saga-s.co.jp/news/saga.0.2666918.article.html

いずれにせよ、日本における墓地のあり方の変化は、極めてゆっくりとしたものです。なので、「新しい墓地整備のあり方」を考えるとき、相対的に急速に変化しつつあるお隣の国・韓国の墓地のあり方を、先行事例として参照する意味は小さくないと思います。

横浜国大生:市に提言 「墓地」と「地域」の共存を 周囲に菜園やスポーツ施設など、イメージ払拭 /神奈川
毎日新聞 2015年03月17日 地方版

 大都市部で墓不足が深刻化する中、横浜国立大の学生が、新しい墓地整備のあり方を横浜市に提言した。迷惑施設として地域から避けられがちなイメージを払拭(ふっしょく)し、「共存」をテーマに掲げた。市は2031年までに約10万区画の墓が不足すると推計しており、学生のアイデアを今後の整備計画の参考にする方針だ。【飯田憲】

 提案したのは、同大教育人間科学部1〜2年生の5人。1級建築士で非常勤講師の秋山怜史(さとし)さん(33)が受け持つ授業の一環で、昨年10月から、地域住民とのつながりや設置の意義、周辺の交通アクセスなど、墓地を取り巻く環境を多角的に研究してきた。

 題材に選んだのは、市が公園型墓園の整備を検討している在日米軍施設の旧深谷通信所(泉区、約77ヘクタール)の跡地。市の墓地経営の許可に関する条例に基づき、約2000台の駐車場を整備し、15ヘクタールを墓地用に確保する。円形の敷地の中央部に向かって樹木型、プレート型、日本式、合葬型の順で墓地を設け、その周囲に市民菜園やスポーツ施設、芝生広場などを配置する。

 高齢社会に不可欠でありながら敬遠される墓地のイメージを「我が町のシンボル」に変えたいと考えた。桜を植樹して故人と花見を楽しんだり、夜桜をライトアップして墓地の暗い雰囲気をなくしたり、見晴らしの良い立地を生かして秋の月見イベントを開いたりするなど、四季を通して自然と触れ合えるコンセプトを披露した。

 市は、12〜31年の20年間で約13万区画の墓地が必要と推計しているが、民間と五つの公営墓地で供給できるのは約3万区画。近年では、公営墓地の募集に応募が殺到する一方、建設計画が持ち上がると、地元住民との紛争に発展するケースも少なくない。

 市は、既存の公営墓地の未使用区画の再募集や、旧深谷通信所のような公園型墓地の整備検討を進めるとともに、日野公園墓地(港南区)では、初めて機械式の納骨堂の導入を目指している。

 学生たちは今月6日、市幹部を前にプレゼンテーションした。柏崎誠副市長は「墓地問題は自治体共通の課題。多角的な視点で検討され、参考になった」と述べ、リーダー役の立山晴香さん(2年)は「『お墓』のマイナスイメージを覆し、見守り、見守られる場所としての墓地の姿を今後も考えたい」と話した。

http://mainichi.jp/edu/news/20150317ddlk14040164000c.html