塾業界にとどまらない「授業準備の業務認定→賃金支払い勧告」の影響

アルバイトというか、非常勤の塾講師の給料が受け持ち授業時間で計算され、授業準備など付帯業務の時間がそこに入っていないというのは、昔から一般的なことでした。マルクス的にベタな言い方をすれば、これは講師の剰余労働による剰余価値として、搾取されてきた部分です。その部分への賃金支払いが勧告された、というのは、「労働に対してはそれに見合った賃金が支払われるべき」という原則からして、働く側にとっては歓迎すべきことであると思います。

ただ、これと同じ「搾取」は、教育業界には広く見られるわけで、例えば大学の非常勤講師も、シラバス作成や授業準備や事後対応、さらに試験監督や採点業務などについての賃金は受け取っていないのが一般的だと思われます。こちらへの波及は、果たしてあるんでしょうかね…?

最近は、文部科学省から言われることもあるんでしょうが、「教わる側」の学生に対して予習や復習のことをうるさく言うのがトレンドになってます。だったら、「教える側」の非常勤講師の授業の前後の業務に対しても、チキンと認めて給料払うのが筋なんとちゃいますか。

アルバイト塾講師 授業準備も業務 賃金支払いを勧告
毎日新聞2016年1月8日 23時23分(最終更新 1月8日 23時31分)

 アルバイト塾講師の賃金について、相模原労働基準監督署が、授業準備や報告書作成など授業以外の仕事も労働時間と認定し、半年間の未払い賃金22万円の支払いなどを学習塾に命じる是正勧告を出していたことが分かった。授業のコマ数(授業をしている時間)に応じ賃金を支払う塾業界の労働慣習が、見直しを迫られている。

 塾講師らが加入する個別指導塾ユニオンなどによると、勧告を受けたのは学習塾大手の湘南ゼミナール横浜市)系列の「森塾淵野辺校」(相模原市中央区)。中高生を教える男子学生(19)が昨年11月、賃金不払いなどを申告した。勧告は同12月28日付。

 男子学生などによると、授業30分前に出勤し自分の授業の予習や生徒の出欠確認などを行い、休憩時間中は生徒の質問に対応。授業後は約50分間、報告書作成や塾生送り出し、清掃をする。だが、賃金は授業1コマ80分1500円でコマ数分のみ。授業以外の労働時間についても賃金の支払いを求めたが、塾側は応じなかった。

 勧告について、湘南ゼミナールは「真摯(しんし)に受け止め、誠意をもって対応したい」(広報部)としている。

 アルバイト塾講師を巡って厚生労働省は昨年3月、授業以外の準備に要する時間も労働時間として賃金を支払うよう求める文書を塾業界7団体に送った。ところが、同ユニオンによると、塾大手の明光義塾を運営する「明光ネットワークジャパン」(東京)の関係5教室でも、今回と同様の賃金未払いがあったとして労基署から是正勧告を受けたことが昨年10月に発覚。改善がなかなか進まない実態が浮かんだ。

 厚労省が昨年11月に公表した学生アルバイトに関する初の実態調査でも、アルバイト塾講師経験者の57%が、労働条件を巡るトラブルがあったと回答。「授業の準備や片付けの時間の賃金が支払われなかった」「採用時に合意した以外の仕事をさせられた」といった訴えが目立った。【東海林智、高場悠】

http://mainichi.jp/articles/20160109/k00/00m/040/097000c