日本の墓じまいの現状:福井新聞と朝日新聞から

福井新聞の記事が目に留まったので、備忘のために関連する記事と併せてクリップしておきます。

改葬も墓じまいも、つまりは必要に応じてお墓を移動することも、無縁化したお墓を解体したり撤去したりすることも、最近になって始まったことではなく、昔からあったことです。それが今、こうして改めて注目されるようになっているのには、それだけの社会的背景があるはずです。

他人様のお墓参りばかりしている人間にとっても、他人事ではありません。

後継者なく「墓じまい」の現実 解体・撤去、仏石を合祀場で供養
(2016年1月31日午前7時10分)


福井県内各地から解体・撤去された仏石が集まる合祀場(安養寺クラシック提供)

 福井県の丹南地域の山あいに、家名や「南無阿弥陀仏(あみだぶつ)」が刻まれた1万8千を超える墓石(仏石)が整然と置かれている。観音像を中心にピラミッドのようにも見える。墓の解体・撤去、引き取りを専門に行っている安養寺クラシック(越前市)の「合祀(ごうし)場」。平林徹也代表(35)は「8年ほどの間に県内各地から集まった」と話す。受け継ぐ人がいない墓を撤去・解体し、遺骨を共同墓などに移す「墓じまい」が県内でも出始めている。

 平林代表によると、以前は年数が経過して傷みが激しくなった墓の建て替えで引き取ることがほとんどだったが、最近は墓じまいに伴うものが年間二十数件ある。

 福井県石材業協同組合の理事長を務める水間石材工業(福井市)の水間久一社長(58)は「年間3、4件の墓じまいの依頼があり、他の店も同じようだ」と現状を語る。同組合には現在36社が加盟しており、県内で年間100件近くの墓じまいがある計算になる。

 若いころに進学や就職で県外に出た70代前後の人から、県内に残った親が亡くなった際に墓じまいを依頼されるケースが多い。多くは自分たちが徐々に墓参りが難しくなり、子どもにも世話を任せられないのが理由という。

 平林代表が強く印象に残っている依頼がある。関西に住む70代の夫妻が福井県内に残していた墓を処分し、自宅近くの共同墓に移すという。墓には2歳で亡くした子どもの遺骨も入っていた。夫妻は「安心して子どもと同じお墓に入れる」と笑った。

 墓を解体した後、土台などは細かく砕いたり加工したりしてリサイクルされる。ただ、「仏石は先祖が宿り、多くの人が手を合わせてきたもの」(平林代表)で、長年にわたって墓地の一角に集められたり、石材店が保管している場合が多い。安養寺クラシックで引き取りを始めたのは、平林代表の父が石材店から供養する場所がないと相談を受けたことがきっかけだった。

 同社では引き取った後、1〜2年間は仮安置して合祀場に移す。墓じまいを知らされていなかった親族とのトラブルを避けるためだ。合祀場では、地元の僧侶に来てもらい、毎年法要を営んでいる。

 福井市の足羽山西墓地公園などを管理している同市公園課には、盆や彼岸になると、放置された墓の雑草の苦情が寄せられる。何とか使用者と連絡を取ろうとするが、全てたどり着けるわけではなく、職員が草刈りなどに当たる場合もある。担当者は「長年手入れされていないものがどれくらいあるか把握できていないのが実情」と説明する。

 平林代表は「墓じまいというとマイナスイメージがあるが、やらなければ次の世代に問題が残る。供養する場所や適切な処分の流れがないと、墓の放置や撤去・解体された墓石の不法投棄につながる」と強調。水間社長は「昔はお盆に帰省して墓参りするのが家族旅行だったが、時代が変わったのだろう。先祖のお墓があるだけで自分たちのルーツが分かる。できれば守り続けてほしい」と呼び掛けた。

http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/society/88531.html

お墓のあり方、広がる選択肢
本田桂子 2015年12月12日07時00分


埋葬の方法は多様になっている

 遠方に先祖代々のお墓がありますが、自宅の近くに私たち夫婦のお墓を建てようか迷っています。子どもになるべく負担をかけたくないのですが、どうしたらいいでしょうか。

 お墓が遠方にあると、お盆やお彼岸に墓参りをするのにも一苦労です。近年、少子高齢化や地方の過疎化により、子や孫らの世代がお墓を維持することが難しくなってきています。しかし、そのまま放っておくと、将来、無縁墓になる恐れがあり、それを避けるために、いわゆる「改葬」や「墓じまい」をする人が増えています。

 改葬は、いわばお墓の引っ越しです。墓石と遺骨を新しい墓所に移すケースと、遺骨だけを移動させるケースがあります。費用や手間、受け入れ先の事情などから後者を選ぶ人が多いようです。厚生労働省の調査では、改葬の件数は2014年度に8万3574件。5年前の09年度は7万2050件で、このところ増える傾向にあります。

 寺院墓地の場合、改葬すると、檀家(だんか)をやめることになります。お寺からお布施の一種である「離檀料」を求められることがあり、それが高額で払えないというトラブルも生じています。日頃あまりお寺との付き合いがない人が突然、改葬を申し出ると話がこじれやすいので、早い段階でお寺と相談しましょう。

 「墓じまい」は、お墓を解体・撤去し、墓地の使用権をお寺に返して更地に戻すことです。改葬のために行うほか、継承者がいないなどの理由でお墓そのものをやめてしまう場合もあります。

 新しくお墓を建てる場合は、墓地や霊園と契約したうえで墓石店に依頼しますが、指定業者が決まっている場合があるので確認が必要です。費用は、墓地の使用料と墓石の建立費、お布施などで総額100万〜200万円程度。「全国優良石材店の会」による15年の調査では、全国平均で164万6千円でした。

 また最近、注目を集めているのが、永代供養墓です。故人の遺骨をほかの人と共同のお墓や納骨堂に安置し、お寺が供養・管理してくれるものです。無縁墓になったり子どもに負担をかけたりする心配がなく、費用も一般的なお墓より安くすみます。

 一昨年に母親が亡くなり、永代供養墓に埋葬した40代のある女性は「毎年、行事の際に寺院から案内が届き、出席するだけなのでお墓の手入れなどの手間がかからない」と言います。独身の姉も同じお墓に入る予定で、その点でも心配がなくなったそうです。

 遺骨をお墓に入れるのではなく、自然の中に返すという選択肢もあります。遺骨を粉状にして海や山林にまく「散骨」という方法です。

 業者に頼んで海にまく「海洋葬」の場合、費用は5万〜50万円程度です。ただ、特定の場所へのお参りが難しいので、どのように故人をしのぶかを事前に家族で話し合っておくといいでしょう。全部を散骨せずに、一部を専用の置物やペンダントに入れる「手元供養」も、ここ10年ほどで一般的になってきました。遺骨をダイヤモンドに加工したり、遺灰を使ってバラを育ててブーケにしたりするなど、広がりをみせています。

 自分の希望を優先しつつ、残される家族が困らないように、時間をかけて話し合い、費用負担や将来の維持管理なども考慮して決めるようにしましょう。

ファイナンシャルプランナー 本田桂子)

http://digital.asahi.com/articles/SDI201512074469.html