朝日新聞の「高等教育とお金」関連記事

数日の間隔を置いて朝日新聞に出ていたこれらの記事、連動してるように思います。


まずこちら。文部科学省がここ最近ぶち上げてきた数々の構想や事業で、「そんなこと」になってなかったものって、ありましたっけ?

大風呂敷を広げた末に予算を削減されて尻すぼんで、尻切れトンボになったものばっかりな気がするんですけど…?

文科省「グローバル大」構想に不満続々 「まるで詐欺」
石山英明 2016年4月27日01時04分

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求められる国際化…

 大学の国際競争力強化を狙った「スーパーグローバル大学」(SGU)構想。文部科学省の肝いりで始まったが、選ばれた大学が不満を募らせている。国の支援が想定より少ない上、予定していなかった仕事も次々発生しているからだ。

 「これじゃまるで『SGU詐欺』だ」。東日本の大学トップは「びっくりするほど支援の額を値切られた」と話す。

 SGUは世界に通用する研究や国際化を進める大学を重点支援するため、文科省が2014年に募集。104大学が計画を提出し、37大学が選ばれた。「世界ランキングトップ100を目指す力のある大学」(タイプA)は最大で年5億円、「グローバル化を牽引(けんいん)する大学」(タイプB)は最大年3億円を、それぞれ最長10年間支援する。

 だが、15年度の平均支援額は、タイプAが2億8800万円、タイプBは1億3100万円。1億円未満も5大学あった。「あれだけぶち上げておいてこれか。文科省は風呂敷を広げすぎ」(西日本の大学幹部)。「今も納得していない。でも、『文部科学省さま』に文句は言えない」(関東の私大の担当者)。さらに、各大学への交付額は未公表で、「あの大学はうちより少なかったようだ」などと臆測が飛び交う。

 思わぬ制限もある。

 各大学に昨秋、文科省からメールが届いた。会議やシンポジウムでは、「SGU」ではなく正式名称を使うようにとの内容だった。札幌学院大が「SGU」を商標登録しており、「SGUを使用した場合、商標権を侵害」と書かれていた。東日本の大学の担当者は「印刷物を刷り直すはめになった。完全に余計な出費。最初に調べておいてほしい」と怒る。

 さらに、文科省の定める英語での呼称は「トップグローバル」大学。「スーパーグローバル」は英語では普通は使わない表現だからだ。西日本の大学の担当者は「なんで国内向けはわざわざ妙な名前にするのか。海外向けに翻訳する際、直す手間がバカにならない」とあきれる。

 テレビ番組で英会話講師を務める鳥飼玖美子・中央教育研究所理事は「英語では、『グローバル市民』なら国連などでも使っているが、『スーパーグローバル』なんて言い方はしない。『トップグローバル大学』と言えないことはないが、あまり聞かない」。事業自体についても、「そもそも海外ではグローバル人材という概念がないし、グローバル化は否定的にとらえられることもある。グローバル人材育成という発想が、グローバルでない」と指摘する。

■「背伸び」した計画も

 SGUに選ばれたくて、実現が難しい計画を立てた大学もある。東日本の大学の担当者は「海外の大学と留学の協定を結ぶことや、受験生受けを考えると、『国のお墨つき』がないと不利。計画をちょっと『盛って』しまい、精査して青くなっている」と話す。

 計画には、留学生の割合の数値目標も盛り込まれている。現在、海外からの留学生の授業料を減免する大学が少なくない。学生の定員は決まっており、留学生が増えるほど授業料収入に響く。例えば、授業料100万円の3割を減免する場合、留学生の受け入れを2千人増やすと年6億円の負担増になる。「『もうからない』学生の割合が増え、経営体力との勝負になる」(西日本の大学)。減免措置の見直しを検討する大学も出始めた。

 SGUに選ばれた多くの大学が外国人の教員の比率を上げる目標を掲げた。ただ、外国で教育研究歴のある日本人でも「外国人教員等」として比率に含めることが可能だ。「外国人教員の確保は大変なので、日本人で達成すればいい」(関東の私大)という、「数あわせ」も頻発しそうだ。

■当初より採択大学数増え…

 事業を担当する文部科学省高等教育企画課の担当者は、支援額への不満について、「大学から直接少ないと言われることもある。財政状況が厳しく、予算を思っていたほど確保できなかった上、当初予定していた30大学より採択大学数が増えたので、1大学当たりの支援は少なくなった。『最大で』の金額が、誤解された面もある」と説明。「スーパーグローバル」の呼称については、「和製英語。でも、分かりやすいし、インパクトのある表現だと思う」。外国人教員の比率を巡る大学の対応は、「グローバルな日本人であれば問題ない。外国籍でなければならないということはない」。計画を『盛った』大学の存在は想定外で、担当者は「ちゃんとやれないなら理由を説明してもらうことになる」と話している。(石山英明)

http://digital.asahi.com/articles/ASJ4T5DB4J4TUTIL04W.html

で、こちらの記事と並べてみれば、とりあえず、文部科学省や「スーパーグローバル」大学の担当者には、現代日本の一般家庭の家計を任せられないということですよ。あんな調子でやられては危なっかしくて見てられませんし、家族が路頭に迷いかねません。

ま、文科省様や大学側の都合と思惑だけで他人様を思うように動かせると思ったら大間違いです。こちらにはこちらの都合があります。意味もなく無理はしませんし、できません。

地方高校生に「東京離れ」 仕送り負担、地元志向強まる
川口敦子、岡雄一郎 石山英明 2016年5月1日02時52分

 東京の有名大学で、合格者の「首都圏集中」が進んでいる背景には何があるのか。仕送りの負担増のほか、親や子どもの意識の変化もあるようだ。学生の多様性が大学の活性化につながるとみる大学側は、画一化を懸念する。

都内有名大、増える首都圏高卒 30年間で1.4倍に

 島根大55人、岡山大16人、鳥取大16人――。4月下旬、島根県立松江南高校(松江市)の進路指導室前には大学合格者数が書かれた紙が貼られていた。都内の有名大は少なく、30年前に11人が受かった東京大は1人だけだった。

 「広い世界を見てほしいが、無理強いはできない」。長野博校長(59)が生徒の東京離れの一因とみるのは、経済負担だ。地元でも国立大の授業料は年約54万円で30年前の2倍超。都内なら仕送りも要る。同高では近年、卒業生の約半数が奨学金を申請する。

 東京地区私立大学教職員組合連合が2015年度、都内で下宿する私大生の親にアンケートした結果、仕送りの月額平均は1986年度より約1万6千円少ない8万6700円だった。一方、平均家賃は2万6500円高い6万1200円。仕送りの71%が家賃に充てられ、生活費は1日平均850円だった。同連合の担当者は「下宿生の生活環境は悪化している」と話す。

 一方、親子ともに地元志向が強まったとの指摘もある。松江市の進学塾経営者は「親に『子どもに近場の大学を勧めて』と頼まれることが増えた」。駿台予備学校の石原賢一・進学情報センター長も少子化を踏まえ、「子どもを遠方に出さない親が増えた」という。

 リクルート進学総研が13年の高卒者に尋ねた調査では、大学進学者約3千人の49%が「地元に残りたいと思った」と回答。09年より10ポイント増えていた。「地方にこもる若者たち」の著書がある阿部真大(まさひろ)・甲南大准教授(社会学)は「東京で苦学するより、親の経済力に頼れる地元にいる魅力が大きいのだろう」と指摘。ネットの普及で、地方都市でも都会と同レベルの情報が得られるようになったことも影響しているとみる。(川口敦子、岡雄一郎)

■大学側は学生確保に躍起

 地域貢献型人材発掘入試(仮称)。早稲田大は18年度、こんなAO入試を始める。受験生が考えた地元への貢献策を示させ、地域性を重視して選考するという。09年度からは首都圏(東京都、埼玉、千葉、神奈川県)以外の高校出身者を対象に「めざせ! 都の西北奨学金」を新設。親の所得などの条件を満たした学生に年40万円を給付してきた。17年度からは制度を拡充し、半期分の学費相当額(約50万~80万円)を免除する。

 慶応義塾大も12年度、首都圏以外出身の学生向けに「学問のすゝめ奨学金」を設け、親の所得などの条件を満たす学生に年60万~90万円を給付している。法学部はAO入試で12年度から、全国7地域別に定員枠を設けて学生を募集し始めた。「多様な学生が集まればこそ学びの場が活性化する。偏りがあると、見識を深めることに弊害が生まれる」(慶大広報)と考えたためだ。

 東京大は昨年、各高校の出願人数を「男女各1人」に絞った推薦入試を始めた。合格者の出身校が、一般入試で多くの合格者を出す首都圏の私立高などに偏らないようにする狙いがあり、「合格者の出身地が分散し、うまくいった」と相原博昭・副学長は話す。(石山英明)

http://digital.asahi.com/articles/ASJ4T7GGNJ4TUTIL099.html