就職活動と教育実習とのバッティング

これねえ。教員免許持ちとしては他人事ではありません。教育実習は「実習」ですから、その期間中は実習先の学校に常駐する必要があります。生徒を相手にして授業も受け持つわけで、面接などがあったとしても、平日に自己都合で離脱することは極めて難しい。本人の努力や能力でどうにかなることではありません。

現場では実施前から懸念されてたことなんですけど、結論から言えば「無視」されたわけです。

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で、やっぱり懸念通りになっている、と。現状、学生と企業と大学の間で個々のケースごとに悩みながら対処していくほかありませんが、指針を決めた経団連が知らん顔をしていいことではないでしょう。学生の置かれた立場を理解したうえで対応していかないと、どちらにとっても不幸なことになります。

例えば、下の記事にある中央大学の「あらかじめ教育実習か採用選考か絞るよう」という「指導」は、苦渋の選択だと思いますけど、あるべき姿ではありません。教職課程を履修して単位も揃えてきたはずの4年生になってのその仕打ちは、理不尽そのものです。

同様に不利な条件を背負わされる海外留学生の問題も、無視できません。学生にとってはキャリア設計に関わることですから、今後、留学志望者が留学を諦めるケースが増えるだろうことは容易に予測できます。

まあ、「海外留学を減らしたい」なら、このままやってけば確実に効果はあるでしょう。

教育実習と面接重なり困惑 大学生らの採用選考前倒し、6月解禁
2016年6月25日05時00分

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キャリアセンターで就活の相談をする学生ら=京都市上京区同志社大学

 大手企業による来春卒業の大学生らの採用選考が6月に始まった。そんな中、就職活動と並行して教員免許取得を目指す学生が、日程のやりくりに悩んでいる。教員免許に必要な教育実習は6月に設定されることが多く、今年は企業の面接と日程が重なったためだ。

 「教育実習と面接が重なり、本当に困りました」。広島県に住む大学4年の女子学生(22)は5月末から6月中旬までの2週間、母校の高校に教育実習に行った。

 子どもの成長に関われる仕事にやりがいを感じ、教員を目指していた。一方で、金融業界も並行して志望し、就職活動もしていた。すると、5社の面接が教育実習と重なった。

 5社に事情を説明すると、第1志望の会社を含め2社は休日に面接の機会を設けてくれたが、3社からは「日程変更は無理」と断られ、選考を辞退した。

 背景にあるのは、大手企業が加盟する日本経済団体連合会経団連)が昨年11月に見直した採用の指針だ。新たな指針により、面接などの採用選考を始められる解禁日が昨年は8月1日だったが、今年は6月1日に前倒しされた。

 教員免許の取得には、母校などで授業やホームルーム活動を経験する教育実習が必要で、2~4週間程度かかる。文部科学省によると、実習の時期に定めはないが、比較的行事が少ない6月ごろに学生を受け入れる学校が多い。

 この女子学生は、経団連の指針を知り、教育実習と企業の面接の日程が重なるから教員免許取得をあきらめようと思ったという。だが、指導教員から「迷いがあるなら両方チャレンジした方が良い」とアドバイスされ、教育実習を受けた。

 結局、実習を経験して「自分は教員に向いていない」と見極められ、金融業界で働こうと決めた。「第1志望の会社が日程を変えてくれなかったら後悔していたかも」と話す。

■大学側、企業に「配慮を」

 企業への就職活動をしながらも、教員免許は取得しておきたいと考える学生は多い。免許があれば、企業で働いたうえでやっぱり教員になりたいと思った時、すぐに教員採用試験を受けられるからだ。

 今年度約250人が教育実習を受けた大阪大では、「面接と実習の日程が重なった場合、どうすればいいか」「就活のため実習を休んだらどうなるか」といった相談が寄せられた。大学では、急な欠席は受け入れ先の学校に迷惑がかかるとして、病気などやむを得ない理由を除き実習を休まないよう指導している。すでに1、2年生からも「採用選考と日程が重なる。教員免許をあきらめた方がいいか」といった相談があるという。

 こうした状況を受けて、中央大は今年、あらかじめ教育実習か採用選考か絞るよう学生に指導した。就職支援担当者は「コツコツと準備をしてきた学生にとって、教員免許取得をあきらめるのは苦渋の選択。企業側が日程を配慮してくれるとありがたい」と話す。

 面接などの採用選考の6月解禁を巡っては、海外に留学中の学生からも「帰国が選考に間に合わない」という声が上がっている。

 大阪大や名古屋大、同志社大など6大学の就職支援担当者でつくる「大学生のキャリア支援を考える会」は5月、留学や教育実習が選考日程と重なった学生のため、別途、選考の機会を設けてほしいと経団連に要請。文科省なども5月、経団連などに選考を休日や夕方以降の時間にするなどの配慮を加盟企業に周知するよう再度求めた。三菱商事三井物産、丸紅などは6月に選考を受けられなかった学生のため、7月以降に選考の機会を設けているという。

 同志社大の担当者は「学生はどういう学生生活を送るか、4年間の計画を立てている。解禁日を変える場合は、変更を3年先にするなど長期的視点で考えてほしい」と話す。(沢木香織)

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就職活動の日程

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12426105.html

【就活ルール再変更】真面目な学生救済を(6月10日)

 来春卒業の大学生らを対象とした企業の採用面接が1日解禁された。経団連の採用選考指針の見直しで昨年より2カ月早まった。就職活動は実質的な「短期決戦」で、企業の人手不足を背景に学生優位の「売り手市場」となっており、就活は熱を帯びている。一方、従来から批判の多い一部企業による解禁破りも相次ぐ。解禁日程を真面目に守って就活に出遅れてしまう学生もおり、十分な配慮が必要だ。

 経団連の採用指針の変更は2年連続となる。かねてから問題視されていた就活の長期化と学業への悪影響に対応する措置だ。しかし毎年の変更は就活の現場に混乱を招く。

 昨年は、採用日程を遅らせて学業に充てる時間を増やそうと、面接解禁を4カ月繰り下げて8月とし、10月の内定解禁までの期間を短縮した。だが、経団連非加盟の外資系や一部企業が他社より先に優秀な学生を確保しようと水面下で解禁破りを繰り広げ、面接日程を前倒しした。これで就活はかえって長期化した。

 今年の変更では面接解禁を6月に早めて対応し、会社説明会と内定解禁はそれぞれ3月と10月に据え置いた。その結果、説明会から面接までの期間が昨年より2カ月短くなった。新たな学業対策として、大学の講義のない夕方や休日に面接を行うよう企業に促すなど積極的な対応も示した。

 しかし一部企業の解禁ルール軽視はいまだに続く。就職情報会社の調査では、解禁前の5月下旬の内定率が43%に上った。解禁ルールは罰則のない紳士協定のため、中小企業が大手に対抗するには違反もやむを得ない-との風潮もあり、ルールの形骸化が一層進んだと言わざるを得ない。解禁日程を守って就活する学生が損をする異常な事態だ。

 6月は教育実習の時期と重なる。「企業研究と同時にはしっかり取り組めない」との不満も聞こえる。8月解禁を見越して留学した学生が遅れて帰国することも予想され、早急な対応が求められる。

 半面、学生調査では過半数が面接解禁の6月前倒しを歓迎している。「卒論などと向き合う期間が増える」と好意的に受け止めている。

 そもそも経団連の採用指針は、公平、公正、透明さの確保と男女機会均等の実現などを主眼としている。今年は新たに、就職の機会を広げる秋季採用の導入努力や留学経験者への配慮を指針に加えた。大きな進歩として評価したい。解禁破りの弊害を最小限に抑え、真面目に取り組む学生を救済するため、今こそ指針を再確認し、理念の実現を図ってほしい。(高橋 英毅)

( 2016/06/10 09:14 カテゴリー:論説 )

http://www.minpo.jp/news/detail/2016061031787