徴兵制と志願制:スウェーデンと韓国

スウェーデンでいったん廃止した徴兵制を復活させるというニュースを見たんですが、端折られてるのか、ちょっとわかりにくい記事です。ともあれ、年間4000人の徴兵だということなら、対象年代のごく一部ってことですよね。

スウェーデン、8年前廃止の徴兵制復活へ 2018年から
2016年09月30日 13:03 発信地:ストックホルム/スウェーデン

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スウェーデン・ビスビュー港に配備されたスウェーデン軍部隊(2016年9月14日撮影、資料写真)。(c)AFP/TT NEWS AGENCY AND TT News Agency/SOREN ANDERSSON

【9月30日 AFP】スウェーデン政府は28日、8年前に廃止した徴兵制を2018年から復活させると発表した。

 スウェーデンでは過去2世紀にわたって自国領内で武力衝突が起きておらず、現代の軍隊におけるニーズに徴兵制は不適切だとの判断に基づき2010年に徴兵制を廃止していた。

 ペーテル・フルトクビス(Peter Hultqvist)国防相は記者会見で、「より安定した堅固で機能的な新兵獲得方法に至る道を見いだしつつあると期待している」と述べた。

 徴兵制復活後は、18歳以上の男女約4000人が毎年徴集される見通し。

「兵士の質・量ともに志願兵では供給が不十分な状況を数年間見てきたことを考えれば、賢明な提案だ」と、防衛専門家のヨハン・エステルベリ(Johan Osterberg)氏はスウェーデン通信(TT)に語っている。(c)AFP

http://www.afpbb.com/articles/-/3102636

この手の話、日本よりも韓国の方が敏感なはずです。スウェーデン徴兵制廃止の時の記事を載せているハンギョレさんの日本語版も、いずれ復活の方の記事も掲載することになるでしょう(たぶん)。

スウェーデン‘軍 徴兵制’ 109年ぶりに歴史の中へ : 国際 : ハンギョレ

韓国は韓国で、自分とこの徴兵制の維持の是非が話題になってるところですしね。

韓国国防相 軍の志願制導入に否定的「真剣な検討必要」
2016/09/21 16:58

【ソウル聯合ニュース】韓国国防部の韓民求(ハン・ミング)長官は21日の国会答弁で、軍に志願制を導入する問題について「韓国軍は最低50万人程度の常備兵力を維持しなければならないと判断しているが、(徴兵制でなく)志願制でその兵力を集められるかどうかについては真剣に考える必要がある」と述べた。

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答弁する韓長官=21日、ソウル(聯合ニュース

 韓長官は志願制を議論するには、まず北朝鮮の120万の兵力規模に対し韓国軍がどの程度の軍事力を持つべきかという前提が必要になると指摘。その上で、「それ(前提)なしに志願制を導入するというのは本末転倒だ」と述べた。

 また、世界192か国中、志願制を選択している国は53%、徴兵制は47%で、敵の脅威が大きい国はおおむね徴兵制を選び、脅威がない国は志願制を選んでいるとした。

 英国やフランス、ドイツは冷戦後、敵がいなくなり大規模な兵力が必要なくなったため志願制でも十分成り立つが、韓国は50万人の兵力が必要だと考えた場合、志願制で賄えるか真剣に検討しなければならないと説明した。

http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2016/09/21/0900000000AJP20160921004100882.HTML

徴兵制維持に賛成48% 志願制は35%=韓国世論調査
2016/09/30 17:08

【ソウル聯合ニュース世論調査会社の韓国ギャラップが30日に発表した徴兵制に関する調査結果によると、回答者の48%が徴兵制の維持に賛成した。35%は徴兵制の廃止と志願制の導入に賛成した。

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徴兵検査を受ける対象者=(聯合ニュース

 年齢別では50代以上で徴兵制の維持に賛成する回答が55%だったが、20~40代では徴兵制の維持、志願制の導入の回答がほぼ二分した。

 徴兵制の維持に賛成する理由としては、「国防の義務は公平でなければならない」(24%)、「国の安全保障と存立に必要だ」(23%)などを挙げた。

 志願制の導入に賛成する理由では「軍隊には希望者だけが入るべきだ」(31%)との回答が最も多かった。

 軍生活が人生に役立つかどうかを問う質問には、72%が役立つと答えた。▼共同体・団体・組織生活の経験(21%)▼責任感・自立心(17%)▼忍耐心・根気を学ぶ(15%)▼社会適応力・生活力の育成(15%)――などを挙げた。

 一方、回答者の20%は「時間の無駄」「硬直的で画一的な軍隊文化」などを理由に、軍生活が人生に役立たないと答えた。

 息子、または親戚が軍隊に入る際、薦めたい軍隊は陸軍(38%)、空軍(16%)、海兵隊(13%)、海軍(3%)の順だった。2011年の調査と比べ、空軍が5ポイント増加し、残りは大きな変化がなかった。

http://japanese.yonhapnews.co.kr/society/2016/09/30/0800000000AJP20160930003600882.HTML

アジュンマの井戸端会議
第399話 募兵制をめぐる議論 2016-09-08

f:id:bluetears_osaka:20161001062001j:plain:left韓国では来年末に大統領選挙があります。与野党を問わず、大統領候補への立候補を宣言する議員もいますし、本人の言明はなくても次期大統領候補の呼び声の高い人もいます。そんななかで、早くから大統領候補への意欲を見せてきた南景弼(ナム・ギョンピル)京畿道知事が、自身の大統領選挙の公約の一つに「募兵制」を含めることを明らかにしたことで、募兵制をめぐる議論が再燃しています。

再燃というのは、この議論は今に始まったことではないからです。最近では、軍部隊内での集団過酷行為により兵士が亡くなるなど、軍での不祥事が相次いだ2014年、募兵制についての議論が盛んになりました。募兵制とは、今の韓国の軍隊の制度、徴兵制とは異なり、義務入隊ではなく、本人の意思で入隊するようにする制度のことです。

募兵制の取り入れに賛成する派は、この数年の人口減少の推移に鑑み、近い将来は現在の兵力を維持できなくなるからだとまず主張しています。南知事は、「2025年には出生率の低下によって今のように兵士の数を63万人に維持することはできない」と主張しました。募兵制によって兵士の数は減っても、いまは知能戦、先端兵器同士が戦うのであって、数が勝ち負けを決めるわけではないため、むしろ兵士の数を減らすことで国防の革新を実現すべきだというのです。

募兵制はいわば職業軍人を採用することですから、月給が支払われることになります。賛成派は、兵士に月200万ウォンの月給を保障するには3兆9千億ウォンの予算がさらに必要になるが、兵士が減るので兵力の運営費を削減できるうえ、雇用効果も期待できるとしています。ちなみに徴兵制下の兵士の月給は、19万5000ウォン(上兵基準。来年から)です。賛成派はさらに、軍での過酷行為や銃器事件などをなくすことができると主張しています。

しかし南北が対峙している今の状況で、募兵制は時期尚早であり、大統領選を控え若者の票を意識した公約だと、反対派は主張しています。実際、いまの軍には「有給志願兵制度」というものがあります。これは義務兵役期間を終えた後、さらに15カ月服務を延長し、先端装備などの専門分野で服務する制度のことで、徴兵期間が短縮されているなか、専門人材を安定的に確保するためのものです。延長服務期間中は月給205万ウォンが支払われますが、入隊前にこれに志願した兵士のなかで実際に服務を延長した兵士は2014年現在、36%しかいませんでした。志願した10人中7人が、軍の服務中に有給志願兵を放棄していることになります。こうした状況で、募兵制になったら、果たして国家の安保はどうなるのかと反対派は危惧しています。

政府は人口の減少などを理由に、2023年からは軍の兵力を52万人にするとすでに決定しています。今より11万人ほど少なくなります。国防問題の専門家らは、現在の徴兵制でも毎年3万人ほど兵力が足りない状態だとして、募兵制になるとさらに足りなくなるだろうと指摘しています。

http://world.kbs.co.kr/japanese/program/program_aunt_detail.htm?No=608

しかし、いま「兵役」でいちばん話題になっているのは、このことよりもユスンジュンのことです。もう14年にもなるんですか…。尾を引くにもほどがあると思うんですがねえ。

www.youtube.com

歌手ユ・スンジュン 韓国入国許可求める訴訟で敗訴
2016/09/30 19:20

【ソウル聯合ニュース】軍入隊を前に米国市民権を取得したことから兵役逃れ疑惑が持ち上がり、韓国入国が禁止されている歌手のユ・スンジュンさんが、入国許可を求める訴訟で敗訴した。

 韓国のソウル行政裁判所は30日、ユさんが駐ロサンゼルス韓国総領事館を相手に起こしたビザ発給を求める訴訟で原告敗訴の判決を下した。

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ユ・スンジュンさん=(聯合ニュース

 裁判所は、ユさんが入隊が迫っていた時期に国外旅行の許可を得て出国後、米市民権を取得したのは「兵役の義務を逃れるためだったとみられる」と判断した。

 兵役の義務を果たすと公言していたにもかかわらず、自身の大衆的人気や国民への影響力などを顧みずに米市民権を取得し、兵役の免除を受けたと指摘した。

 また、「ユ氏が入国し芸能活動を行った場合、兵役中の将兵の士気が落ち、青少年の間で兵役逃れの風潮がまん延することへの懸念があった。ユ氏の入国は社会の善良な秩序を阻害する恐れがある場合に該当する」と説明した。

 韓国で1997年にデビュー後、トップスターとして活動していたユさんは2002年1月、韓国国籍を放棄し米市民権を取得した。当時、ユさんは3カ月後に入隊する予定だったため兵役逃れ疑惑が持ち上がり、非難の声が高まった。

 これを受け法務部はユさんが出入国管理法に定められている「大韓民国の利益や公共の安全を害する行動を取る恐れがあると認める相当な理由がある者」に該当するとして、入国を禁止した。

 その後、中国などで活動を続けてきたユさんは昨年9月、駐ロサンゼルス韓国総領事館にビザを申請したが却下され、訴訟を起こした。

http://japanese.yonhapnews.co.kr/enter/2016/09/30/1000000000AJP20160930004500882.HTML