【南海の風景】2017年1月の南海追慕ヌリ・その2:自然葬地「追慕庭園」、ようやく風向きが変わってきたか?

こちらの続きです。

【南海の風景】2017年1月の南海追慕ヌリ・その1:平峴平里自然葬追慕墓域のトレンド - 大塚愛と死の哲学

敷地の中央にある納骨堂や葬礼式場・火葬場の建物を過ぎて敷地の奥に向かいます。そこにあるのは、平峴平里自然葬追慕墓域に先駆けて造成されていた南海追慕ヌリの自然葬地「追慕庭園」です。

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ここもまだ工事中だった頃から見ています。元の雑木林を全部なかったことにして人工的に作り上げられた「自然葬地」というものを初めてハッキリ目にしたのがここでした。

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けど、率直に言ってこれまで碌なもんではなかったです。大々的な工事をしていた割りにはその後、利用者も訪問者もほとんどなく打ち捨てられていましたからねえ。

※昨年の状況は、こちらを参照してください。

【南海の風景】南海追慕ヌリ・その3:追慕庭園 - 大塚愛と死の哲学


しかし、一年のインターバルを置いて今回目にした「追慕庭園」には、これまでにはなかった動きがありました。

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遠目ではなかなかわかりにくいですが…墓碑がかなり増えています。これは、昨年までとはまったく異なる状況の出現です。

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ざっと見ても、2016年に亡くなってここに葬られた方がかなり見られます。そして、先に亡くなっていた人物(多くの場合は配偶者や祖先等と思われる)を隣に移葬し、家族墓地のような形になっているところもあります。墓碑の大きさは、納骨平葬墓域とは異なる小さなもの(だいたい手の平サイズ)で統一されています。

こうした形でのお墓を設置する場所として、この「追慕庭園」がようやく人々に受け入れられつつあるようです。

ちなみに、いま見たのは道路沿いの敷地の最上部です。斜面を降りると相変わらず荒れ放題ではあります。このへんを利用するには、もともとは墓碑のない散骨を予定していたと思われるレイアウトを見直すなど、利用者のニーズに応じた再整備が不可避でしょう。

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とりあえず、ベンチを起こすところから始めないと。

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いずれにせよ今後、こちらの墓域の利用者が増えていくのは確実です。その意味でこれは「南海郡における自然葬の普及」ということになるのでしょう。

ただ、その際の「自然葬」とは、「火葬遺灰を地中に直接埋める」「(土葬墓に比べて相対的に)小さな墓碑を個別に設置し、一定の面積を占める」「所定の年月(法律上、最長で60年)を経て還元され、墓域はリサイクルされる〔予定〕」といった特徴を持つ葬法である、ということを確認しておく必要があります。

南海に限らず、韓国内各地の現状を見る限り、このモデルが標準化していく可能性はかなり高いと思います。「自然葬」として通常イメージされるような「海上での散骨」など、人工物を排除しつつ、死後すぐの時点で個別性を解消するような葬法は、普及したとしてもごく一部に留まるような気がしています。

それは例えば、こういうの(下記)と韓国の「自然葬」とでは、(成立に至る経緯についても、背景とするイデオロギーについても、現地の墓域の形態についても)重なるようで重なっていない部分がかなり出てくる、ということです。

樹木葬
墓地を森林に再生 自然回帰志向・墓不足で注目
毎日新聞2016年6月11日 11時12分(最終更新 6月11日 15時31分)

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日本生態系協会が運営する樹木葬墓地「森の墓苑」を見学に訪れた夫婦ら=千葉県長南町で2016年4月10日、五十嵐和大撮影

 樹木周辺に遺骨を埋葬する樹木葬に、国内で初めて環境団体が乗り出した。千葉県内の土砂採石跡地に樹木葬墓地を開設。その運営で得た収益で墓地を森林に再生させることを目指す。自然回帰志向の高まりや都市部の墓不足から注目を集めている樹木葬は、「終活」と自然保護の両立を果たせるのか。

 「死んだら自然に返りたい。散骨もいいが、子どもらが『墓参りの場所がなくなる』と反対する。お参りできる樹木葬なら納得してくれるでしょう」

 千葉県長南町にある樹木葬墓地「森の墓苑(ぼえん)」で4月に行われた現地説明会に参加したさいたま市の牧野拓弥さん(75)はこう話した。

 墓地を運営するのはビオトープの普及や動植物の調査などを行う公益財団法人日本生態系協会(池谷奉文会長)。説明会には60〜70代の夫婦らが参加した。

 協会によると、墓地を整備した土地は尾根を切り開いた土砂採石跡地で、業者が倒産して放置されていた。周辺には首都圏では珍しいゲンジボタルの自生地があり、協会は森を再生させる価値は高いと判断したが、土地の購入費用が難点だった。そこで樹木葬に着目。自然保護のために森林を買い取る「ナショナルトラスト」の発想で、採石跡地周辺の林を含む約3万7000平方メートルを取得し、そのうち約1万平方メートルの敷地に墓地を開設した。

 墓地には1〜2人分の遺骨を納める個別墓を計1400区画、各200人分の遺骨を合葬する計4区画をそれぞれ整備。利用者は墓石の代わりにコナラやミズキなどの苗木を植えられる。故人のネームプレートも設置できるが、朽ち果てることを想定。管理委託料は個別墓は65万円から、合葬墓は30万円からで、協会は墓地運営の収益を森林再生の資金に充てる。これまで現地説明会に約180人以上が参加し、生前契約は約15件となった。

 協会は、全区画で埋葬を終えてから約30年間は、樹木の維持管理や墓参に必要な通路の草刈りを続ける。その後は作業の頻度を減らし、自然の回復力に委ねる。堂本泰章理事は「50年かけてゆっくりと墓地を森に戻したい」と意気込む。

 樹木葬が注目される背景には、都市部での深刻な墓不足もある。例えば東京都は、都立霊園の墓地面積は変わらないが、墓地の需要が2025年には05年時点より1.5倍に増えると試算している。

 樹木葬は通常の墓地に比べ、都市部で土地を確保する必要がなく、企業やNPOが手掛けるケースが増えている。12年には都立小平霊園(東京都小平市東村山市東久留米市)が樹木葬を募集、定員500人に対し倍率は16倍を超えた。

 樹木葬に詳しい池辺このみ・千葉大教授(環境造園デザイン学)は「遠く離れた菩提(ぼだい)寺にある墓を守ることに煩わしさを感じる人は多い。環境意識の高い都市部の住民が、墓への投資が自然再生に役立つことに魅力を感じる可能性もある。樹木葬は割安感もあり、希望者は増えるだろう」と話す。

 ただ、業界団体「全日本墓園協会」の横田睦・主任研究員は「社会的な理解が十分広がっていない樹木葬を遺族が受け入れられるか。埋葬後にトラブルがないよう、親族でよく話し合う必要がある」と、安易な利用に警鐘を鳴らす。【五十嵐和大】

ことば【樹木葬

 樹木を墓標とする埋葬方法を指す。遺骨を海などに散布する「散骨」と異なり、地方自治体に認められた事業者が営む墓地で行われる。日本では1999年、岩手県一関市の寺院が樹木葬墓地を開設したのが始まりとされている。

http://mainichi.jp/articles/20160611/k00/00e/040/216000c