街歩いた先の今里の夜

今日は大阪へ。



でっち上げられた「北朝鮮のスパイ」 21日、東成で上映 /大阪
毎日新聞 2018年1月17日 地方版

 韓国の情報機関のでっち上げだった「在日韓国人留学生スパイ団事件」などを題材にしたドキュメンタリー映画「自白」が21日、大阪市東成区大今里西3の区民センターで開かれる。

 2012年に脱北し、ソウル市職員になった男性が国家情報院に国家保安法違反容疑で逮捕された事件はソウル高裁が無罪判決を出した。判決は男性の妹の証言が不当な取り調べによるものと認定した。映画はこの事件を掘り下げ、不当な捜査を裏付ける。

 同じような事件が続いたのは軍事政権時代の1970年代。日本から韓国に留学した在日の若者たちが「北朝鮮のスパイだ」として無実の罪で拘束され収監された。後に再審で続々と無罪判決が出ている。無罪が確定した在日韓国良心囚同友会代表の李哲さん(大阪市在住)も登場する。

 監督は調査報道の独立メディア「ニュース打破」プロデューサーでキャスターも務めた韓国MBC(文化放送)社長のチェ・スンホさん。午後3時と5時の2回上映。2回目上映後にチェ監督とのトークセッション。1000円。問い合わせは上映実行委員会。【高村洋一】

https://mainichi.jp/articles/20180117/ddl/k27/040/335000c

これは、取り上げられている事件も、それを明らかにしている取材の過程も、その後起きた政治的変動もさることながら、作品としての映画自体が実に見甲斐のある作品に仕上がっています。

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足を運んだ甲斐は、ご本人登場のトークセッションまで含めて、お釣りがくるほどありました。

ちなみに、ニュース打破においてチェスンホ氏がこの中で追及していたのは、この事件です。毎日新聞の記事は1970年代の事件を見出しにしてますけど、作品のメインは2010年代のこちらの事件になります*1

検察と国情院の傷ついた信頼、笑うのは北朝鮮だけ
Posted April. 16, 2014 03:02, Updated January. 01, 1970 09:00

「ソウル市公務員スパイ」証拠捏造事件の捜査が2ヵ月で終了した。2月14日、ユ・ウソン(リュ・ジャガン)氏の弁護を引き受けた民主社会のための弁護士の会(民弁)の問題提起で始まった事件は、検察と国家情報院(国情院)、大統領にも大きな痛手となった。

記者にとってこの事件は格別だった。東亜(トンア)日報は昨年1月、ユ氏が脱北者出身の公務員として初めてスパイ容疑で逮捕されたことを報じた。国情院と検察は今もユ氏をスパイと見ており、最初の報道時に戻るとしても、記者が当時の捜査状況以上のことを知ることは難しいだろう。しかし、捜査の過程で証拠の捏造が行われたという疑惑が起こり、誰よりも気になった。

検察と国情院は、どちらも最初は「まさか」という反応だった。検察内部は、「国家最高の情報機関が偽の証拠を作るだろうか」と言っていたが、捏造の状況が明らかになり、当惑した。非難の矛先は国情院が持ってきた証拠を十分に検証しなかった検察内部にも向けられた。検察は、捜査と公訴維持担当の検事2人を嫌疑なしとしたが、大きなダメージを受けたのは明らかだ。北朝鮮絡み事件の捜査で、事実上国情院に依存し、「書き取り」をしてきたことが露になったのだ。検察捜査に対する国民の信頼失墜は当然だ。

最も痛手を負ったのは国情院だろう。国家情報機関としての自尊心と信頼は地に落ち、激しい情報戦が繰り広げられる海外で嘲笑の的になった。起訴されたイ対共捜査局処長(54・3級)、キム課長(47・4級)、駐瀋陽総領事館のイ領事(48・4級)、時限付きで起訴が中止になったクォン課長(50・4級)など表に出てはならない幹部やブラック・ホワイト要員の名前や身元、役割が露呈した。中国現地の協力者やヒューミットとの関係も切れた。徐千浩(ソ・チョンホ)第2次長が辞任しただけでなく、南在俊(ナム・ジェジュン)院長の更迭論が提起されるなど、指揮部が動揺している。

一部では、今回のことで対共事件の捜査が停滞することを憂慮している。捜査の過程で傷つけ合った検察と国情院の協力関係にひびが入ったためだ。すでに「公訴維持は検察がすることなのに国情院がこれまで助けすぎた」(国情院)、「もはや国情院が持ってくる資料は必ず疑ってみなければならない」(検察)などの言葉も出ている。

このような状況はまったく国益のためにならない。ある司正当局関係者は、「検察と国情院がいがみ合えば、笑うのはスパイと北朝鮮ではないか」と指摘した。検察と国情院いずれも今回のことを機に身を削る内部刷新を通じて再び信頼を得ることを国民の一人として切に望む。

http://japanese.donga.com/List/3/all/27/424607/1

[分析]国家情報院スパイねつ造事件、司法体系を籠絡した深刻さに較べ処罰不十分
登録:2014-10-28 23:17 修正:2014-10-29 07:06

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イ・ビョンキ国家情報院長(右)が28日午前、ソウル瑞草区の国家情報院庁舎で開かれた国会情報委員会の国家情報院に対する国政監査で、ハン・ギボム1次長と話している。 共同取材写真//ハンギョレ新聞社

「罪責重い」「厳罰が要求される」としつつ
国家情報院上層部は処罰対象から除外
「不法捜査の慣行が安保を脅かしている」
「牽制装置の用意が至急必要」の声

 国家情報院職員が6回も証拠をねつ造して司法体系を徹底的にもてあそんだスパイ証拠ねつ造事件で、関連者6人全員に有罪が宣告され“1次的断罪”はなされた。 だが「国家と国民のために奉仕」したという理由で、国家情報院職員4人のうち実際に刑が執行されるのは1人にとどまり、事案の深刻性に較べて処罰が軽すぎるという声も出ている。

■前例無き証拠ねつ造「罪責非常に重い」としつつも…

 事件の骨格は、2006年5月末~6月初めにかけユ・ウソン氏が北朝鮮からスパイの指令を受けたという公訴事実につじつまを合わせるため、国家情報院が中国公文書4件と駐瀋陽総領事館領事事実確認書2件を偽造したということだ。 ユ氏の妹であるユ・ガリョン氏が国家情報院及び検察の調査で「兄はスパイ」と言った陳述を1審法廷で覆したために無罪が宣告されると、追い詰められた国家情報院は控訴審で有罪判決を出させるために証拠をねつ造したことが明らかになった。 ユ氏は2006年5月27日に北朝鮮で母親の三回忌を行って中国に出国したが、国家情報院はその日に再び北朝鮮へ入国し6月10日まで留まりスパイ指令を受けたとし、それに符合するよう証拠をねつ造した。

 今回の事件は韓国最高の情報機関が中国政府の公文書を偽造したものを証拠として裁判所に相次いで出したという点で、司法体系をもてあそんだことはもちろん、外交問題にまで飛び火した。 裁判所は28日の宣告公判で「刑事司法機能を深刻に妨害し、在外公館の公文書の真実性に関する公共の信用に悪影響を及ぼした」と明らかにした。

 だが、1審結果で実刑が執行される国家情報院職員は犯行を最も積極的に主導したと名指しされたキム・ポヒョン課長のみだ。 直接の上層部ラインであるイ・ジェユン対共捜査処長は実刑を宣告されながらも防御権保障などを理由に法廷拘束を免れた。 他の二人は執行猶予を宣告された。 反面、国家情報院の指示で中国の公文書を偽造した中国同胞二人には実刑が宣告された。 裁判所は、国家情報院職員の「罪責が非常に重い」とし、犯行を否認したうえに反省もしていないと指摘した。 しかし「国家安保守護の一翼を担うなど、国家と国民のために奉仕」してきたという理由などで執行猶予を宣告した。

 国家情報院職員は裁判の過程で証拠をねつ造していないとか、証拠がねつ造されたとすれば、それは協力者らの過ちだと弁解した。 証拠ねつ造に数千万ウォンを使っていた事実も裁判の過程で明らかになった。

 仮にユ氏の弁護団が積極的に対応しなかったとすれば、ユ氏はねつ造された証拠を根拠に法定最高刑が死刑であるスパイ罪で有罪を宣告されることもありえた。 民主社会のための弁護士会などは、国家情報院職員が誤りに相応する罰を受けるためには、スパイ罪と同じ刑量で処罰できる国家保安法の無辜・ねつ造容疑を適用しなければならないと主張したが、検察は受け入れなかった。 これに先んじた捜査で、検察は国家情報院上層部ラインは関与の事実があきらかにならなかったという理由で処罰対象から除外した。 検察はねつ造文書を裁判所に提出した検事3人に停職1か月または、減給1か月の処分を下すに終わった。

 ユ氏の弁護団はこの日出した声明で「法治国家としては想像すらできない証拠偽造を行い、国家の基本を揺るがした被告人の犯行に比べてあまりに軽微な刑が宣告された」と批判した。

■「不法対共捜査の慣行を根絶しなければ」

 今回の事件を契機に違法・脱法的な対共捜査の慣行に対する牽制装置を用意しなければならないという声が高い。 国家情報院はユ氏の事件で中国の公文書を偽造したのみならず、種々の違法捜査慣行を露呈した。 ユ氏事件の1審で彼が中国で撮った写真を北朝鮮で撮ったものと主張したが、嘘であることが露見した。 また、ユ氏の妹ユ・ガリョ氏を合同尋問センターで調査している間、弁護人との面会や書信の交換を阻んだ。 裁判所はこれに関して、弁護人が出した準抗告を受け入れ「ユ・ガリョ氏は長期間外部と全く連絡を取ることができず独房で調査を受け、国家情報院から『兄さんが処罰を受けて出てくれば一緒に韓国で暮らせるようにする』という話を聞いた。 心理的不安と重圧の中で実の兄のために継続調査に応じた可能性を排除できない」と明らかにした。

 “直派スパイ”として知らされた北朝鮮脱出者ホン氏(41)の事件でも、先月1審で違法な捜査方式を理由に無罪が宣告された。 裁判所は検察が陳述拒否権と弁護人助力権を形式的に知らせただけで、陳述を拒否しても不利益を受けないとか陳述が法廷で有罪の証拠として使われることがあるという内容をきちんと説明しなかったと明らかにした。

 オ・ドンソク亜洲大法学専門大学院教授は「国家情報院がスパイ捜査の過程で、単純に司法手続きに違反しただけでなく、不法な方式で捜査してきた慣行がむしろ国家安保を脅かす結果を産んでいる」と話した。

キム・ソンシク、イ・ギョンミ記者

http://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/661902.html
韓国語原文入力:2014/10/28 21:34 訳J.S(2389字)

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/18636.html

この朝鮮日報の社説も、「自白」を観てからトークセッションを聞いた後に読むと、なかなか味わい深いものがあります。

記事入力 : 2018/01/15 10:01
【社説】国家情報院の弱体化、北の対南工作を利するものではないのか

 韓国大統領府は14日、国家情報院の対共捜査(共産活動に関する捜査)権を警察に移管したと発表した。多くの専門家や捜査経験者が「対共捜査機能が弱体化している」と懸念してきたが、これを警察に押し付けるということだ。国家情報院は北朝鮮・海外情報の収集だけをすることになる。これも国会で通過するかどうかは分からない。国家情報院のスパイ捜査が間違っていたり、ねつ造されたりしたケースはあった。しかし、それよりも本物のスパイを捕まえて活動を阻止したケースの方が多い。一部の過ちを持ってしてすべてをなくすという過剰さは必ず災いを招くだろう。

 スパイ捜査と情報は一体だ。1つの胴体を2つの機関で分担することがどれだけ効率的だというのか、疑問を抱かざるを得ない。国家情報院が情報を提供しても、捜査機関は違う判断をして情報が放置される可能性もある。逆に、不十分な情報で捜査が台無しになる恐れもある。両機関の間でもめることもあるだろう。スパイ捜査には長ければ10年以上蓄積されたノウハウが必要だ。そのノウハウを持つ国家情報院がありながら、他機関に捜査権を移管するのも不安だ。現職の国家情報院院長も「対共捜査が現在、最もうまいのは国家情報院だ」と言っている。新しい組織が国家情報院に匹敵するノウハウを構築し、情報を蓄積するのに数年から数十年かかるかもしれない。数多くの試行錯誤もあるだろう。今は北朝鮮の核危機がピークに達している状況だ。大統領は「6・25(朝鮮戦争)以降、最悪の危機だ」と言った。北朝鮮の偵察総局など対南工作機関は工作ネットワークや工作員を大幅に増やしている。

 盧武鉉ノ・ムヒョン)政権で国家情報院や公安機関の幹部を務めた人々も「ヒューミント(HUMINT=北朝鮮の人々を通じた情報収集)機能が弱体化している」「北朝鮮に対して『対南工作の高速道路』を作ってやるようなもの」と警告している。同日の大統領府発表には「スパイをより捕まえやすくなる」という主張が一言もなかった。ひたすら国家情報院の無力化ばかりを考え、対共捜査力には関心がないように見える。

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/01/15/2018011500890.html

*1:在日韓国人留学生の身に降りかかった40年以上前の事件についても、チェスンホ氏は取材をし、別の独立した作品にできるほどの材料はあるようなんですが、何せMBCの社長になってしまいましたからねえ。当分、映画化は難しいみたいです。