【熊本の風景】花岡山陸軍墓地

昨日の続きです。

blue-black-osaka.hatenablog.com

花岡山招魂社の脇の上り坂を登っていくと、熊本に2か所ある陸軍墓地の一つ、花岡山陸軍墓地に行き当たります。

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ここは、熊本市教育委員会によって熊本市指定史跡に指定されています。1980年のことです。陸軍墓地とありますが、いわゆる神風連の乱(1876年/明治9年)において官軍方として戦死した人々のための埋葬地ですので、時期としてはかなり初期、内戦期のものです。その後の対外戦争期の戦死者は、もう一つの小峰陸軍墓地に葬られています。

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先達の訪問記としては、例えばこのあたりがあります。由来や詳細などはこれらをご参照ください。

shinkokunippon.blog122.fc2.com
花岡山(熊本県) - 軍人墓地参拝記録
花岡山陸軍墓地 - 陸軍墓地・海軍墓地・戦争遺跡そして護国神社参拝

慰霊碑というか記念碑として、神風連の乱関連のものが目につきます。これらはいずれも神風連の乱100周年を期して1976年に建立されています。いったん荒廃していたというこの墓地に再び注目が集まり、再整備の機運が高まったのがおそらくそのタイミングだったのではないかと思われます。昭和で言うと50年代のことです。

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他方、道に面して大きく聳えるのは、軍人軍属合葬の碑。こちらは明治18年の建立とあり、西南戦争で荒れた墓地の復旧にともなってここに合葬された者の個人名が刻まれています。一人一人を判読するのは骨が折れそうですが、決して不可能ではないといった状態です。

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これとは別に、陸軍墓地には個人墓碑が多数並んでいるのですが、そちらを見る前に隣接する県官墓地の方を見ておきます。荒れ果てているとまでは言えないかもしれませんけど、倒れてしまっている墓碑もあって、維持管理が十分とは言い難い状態です。

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ここでは、神風連の乱で殺された県令・安岡良亮の墓と、乃木希典の病没した娘・乃木恒子の墓が目立っています。

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さて、さほど広くない敷地に大小さまざまなお墓がひしめき合っている県官墓地に比べると、陸軍墓地の方は相対的に広い敷地に整然と墓碑が並んでいます。

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ホントは一基一基詳細に検討すべきところですが、その時間も余裕もありませんので、いつものように断片的なスナップを。階級ごとに墓域が分けられ、墓碑の大きさも異なる点、また隊列から離れた場所に将校クラスの人物の墓碑が立っているところもある点など、規模は異なるものの、大阪の真田山に通じる面を感じます。それはおそらく明治初期に成立した陸軍墓地に共通する特徴なのでしょう。

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2月末という時期もあってか、この墓域に関する限りは、先達の皆さんが述べられているほどの荒れた感じはありませんでした。花岡山の麓から山頂にのぼる道の途中にあることもあって、ここを散歩コースにされているご老人が一休みしたり体操したり談笑したりという場所にもなっています。

とは言え、破損した墓碑はやはりけっこうあります。

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真田山ほかの陸軍墓地でもしばしばみられるように、花崗岩ではない砂岩系の石を使った墓碑は数十年単位での経年劣化を避けがたいので、これにはやむを得ない面もあります。材質によって違いはありますが、墓石だって風化する=寿命があるのです。永久保存すればよいというものでは必ずしもないのではないでしょうか。

www.sanadayama.or.jp

そのあたり、こちらの石材屋さんの説明ページはわかりやすくて参考になります。

宮崎石材:お墓に使う材質・色んな石種