大阪医科大学の「非正規職員賞与不支給」に大阪高裁が違法判決

この方の場合、時給制の「アルバイト」とはいってもフルタイムで勤務していて、業務内容も正職員と変わるところはなく、なのに基本給・賞与・休暇の面で差別的取り扱いを受けていたわけですから、労働への対価=待遇として不合理だと思うんですけどねえ。どう考えても。

言い換えれば、その不合理を合理化する説明を大阪医大側はできなかった、ということになろうかと。

劣化する雇用 ビジネス化する労働市場政策

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アクチュアル労働法

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とは言え、この問題の本丸は「同一価値労働同一賃金」の原則の方にあるわけで、基本給の格差については却下されている点、この判決の後も引き続き問題提起していく必要があります。

jinjibu.jp

「アルバイトへのボーナス不支給は違法」、大阪医科大が一転敗訴 大阪高裁判決
毎日新聞2019年2月15日 19時59分(最終更新 2月15日 23時19分)

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判決後に記者会見に応じる大阪医科大元アルバイトの女性(中央)=大阪市北区で2019年2月15日、山田尚弘撮影

 学校法人・大阪医科大学大阪府高槻市、現・大阪医科薬科大学)のアルバイト職員だった50代の女性が、正職員との待遇格差は違法として、法人に約1270万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は15日、請求を退けた1審・大阪地裁判決を取り消し、約110万円の支払いを命じた。江口とし子裁判長は「賞与を支給しないのは不合理」と述べ、労働契約法に違反すると判断した。女性の弁護団によると、同種訴訟で賞与の格差を違法とする高裁判決は全国で初めて。

 判決は、法人が正職員に一律の基準で賞与を支給していた点を重視。賞与が「従業員の年齢や成績に連動しておらず、就労したこと自体に対する対価」に当たるとし、「フルタイムのアルバイトに全く支給しないのは不合理」と指摘した。契約職員には正職員の約8割の賞与が支給されていたことを踏まえ、アルバイトには6割以上を支給すべきだと判断した。

 さらに、アルバイトが夏期休暇を取得できず、病気による欠勤中に給与が支払われない点も不合理と認定。一方、基本給の格差などについては退けた。

 1審判決(2018年1月)は賞与の格差について「正職員の雇用を確保する動機付けとして一定の合理性がある」と判断。他の請求も退け、女性側が控訴していた。訴状などによると、女性は13年1月に研究室の秘書として採用され、時給制で勤務。約2年後に適応障害で休職し、16年3月に契約を打ち切られた。年2回の賞与が支払われないことなどが、労契法20条が禁じる「不合理な格差」に当たるかが争点だった。

 同法人は「判決文が届いておらず、コメントできない」としている。【戸上文恵】

「労働契約法に反する」の判断は異例、意義が大きい

 脇田滋龍谷大名誉教授(労働法)の話 非正規職員に賞与を支給しないことが労働契約法に反するという判断は異例で、意義が大きい。同一労働同一賃金は世界的には当たり前で、日本だけが取り残されている。賞与や各種手当の格差是正は一つのステップに過ぎない。正規・非正規の格差を抜本的に解消するため、将来的には基本給を同じにする必要がある。

https://mainichi.jp/articles/20190215/k00/00m/040/201000c

「非正規に励み」「画期的な判決」 ボーナス不支給違法判断、大阪高
毎日新聞2019年2月15日 21時11分(最終更新 2月16日 07時41分)

 「全国の非正規労働者にとって励みになる判決」。大阪高裁が15日、アルバイトに賞与(ボーナス)を支給しないのは違法とする判断を示した。全面敗訴だった1審判決から1年あまり。逆転勝訴に、訴えた女性や弁護団は「画期的」と歓迎し、企業などへの波及効果を期待した。

 大阪市内で記者会見した女性は「実際に働いている状況をきちんと見てくれた」と述べ、安堵(あんど)の表情を見せた。2013年1月から学校法人・大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)でアルバイトの秘書としてフルタイムで勤務。約30人の教授らを担当して一日中、スケジュール管理や来客対応、経理事務などに追われた。

 仕事量は正職員である他の秘書より多いのに、年収は3分の1程度だったという。「秘書として同じ内容の仕事をしているのに、おかしい」。疑問が膨らみ、休職中の15年に提訴に踏み切った。

 昨年1月の大阪地裁では請求を全て退けられたが、今回は高裁レベルでは初めてとなる、賞与の格差を違法とする判決を勝ち取った。夏期休暇などが認められないことも不合理と判断された。

 アルバイトや契約社員らの非正規労働者は2000万人を超え、全労働者の4割近くを占める。だが非正規労働者に賞与を支給していない会社や法人は多く、他の同種訴訟でも大きな争点となってきた。「この判決をきっかけに、全国の非正規労働者が少しでも働きやすくなればうれしい。これまで頑張ってきて良かった」。女性は笑顔を見せた。

 判決は、法人が正職員には一律の基準で賞与を支給していたことから、賞与が成績に連動した評価ではなく、働いたこと自体への対価と判断した。弁護団の河村学弁護士は「一律に賞与を支給している企業は多く、影響は大きい。この判断が定着すれば、多くの企業が運用を変えないといけないだろう」と指摘した。【戸上文恵】

https://mainichi.jp/articles/20190215/k00/00m/040/243000c