三一節に訪れるのにふさわしいところ

…ということで、こちらを再訪。

前に書いたように、工事のためにほとんどフェンスで囲まれてしまっている独立公園の中で、入ることができるめぼしいポイントは2ヶ所しかない。
一つは독립관(独立館)である。




ここは、いわゆる「光復」以前、もしくは大韓民国建国以前に愛国独立運動に斃れた「殉国先烈」の位牌を奉安する施設であり、地下には「社団法人大韓民国殉国先烈遺族会」の事務所などが入っている。
こうした「殉国先烈」の墓地はソウルや大田の顕忠院にあるのだが、大韓民国建国後の軍警関係者が多い顕忠院は、彼らには実はいささか居心地の悪いものであるらしい。そんなわけで、この独立公園と独立館は彼らにとってたいへん重要な拠点となっている。
さて、次はこちらである。

西大門刑務所歴史館のこの壁は、韓国のドラマや映画などで「刑務所からの出所シーン」には必ず出てくる名所である。いつもは入場料1500ウォンが必要な歴史館であるが、3.1運動90周年を迎える今日は無料開放である。




様々なイベントも開催されていて敷地内は大賑わい。憲兵さんや愛国者さんもにこやかに場内を歩き回っておられる。
この手の「愛国」に、左右や進歩保守の別はない。親子そろって楽しく参加できるナショナリスティックイベントとして、今日の陽気に相応しく実にほのぼのとした昼下がりの情景である。そのつもりで見れば*1
ちなみに、貴重な歴史の現場である獄舎は、大部分が改修工事中であり、一部が見学可能である。




個人的な希望としては、できるだけ現状を維持しつつの改修をお願いしたいところである。一部ですでに展示に供されているような安っぽい(失礼)体験型コーナーで埋め尽くされてしまった獄舎には、本当の意味での歴史体験は期待できない。
今でも思い出す。2001年の凍て付くような冬のある日、初めてここを訪れたときのことを。
1987年まで実際に使用されていた獄舎の2階に上がり、その木製の渡り廊下を歩いたとき*2
響く音は、自分の靴の音と、きしむ廊下の音のみ。
あの場面、あの音、あの感覚は、今も忘れられないでいる。歴史館地下のマネキン展示以上に鮮烈な印象を、私の中に残している。

3・1運動90周年:全国に響いた「万歳」の声

李大統領「自己犠牲と和合の3・1精神で危機の克服を」

 3・1独立運動90周年に当たる1日、殉国烈士をたたえる万歳三唱の声が全国で響き渡った。忠清南道天安にある独立記念館「民族の家」では1日午前、李明博(イ・ミョンバク)大統領や韓昇洙(ハン・スンス)首相をはじめ行政・立法・司法の要人、愛国志士、在韓外交官ら2500人余りが参加する中、3・1節(独立運動記念日)記念行事が開催された。

 李明博大統領は記念の辞で、「烈士らが3・1運動で示してくれた自己犠牲と和合の精神は、今われわれに求められている時代精神だ。個人や集団の利己主義では困難を克服できず、われわれ皆が共に生きる案を模索しなければならない」と語った。

 政府が主管する3・1節記念行事が独立記念館で行われるのは、1987年の開館以来初めてのことだ。この日のイベントで、独立有功者119人のうち故・権轍洙(クォン・チョルス)、姜仁沢(カン・インテク)、閔順哲(ミン・スンチョル)、イ・チュヒョン、金仁愛(キム・インエ)ら5人の子孫に対し、建国勲章愛国章などが授与された。国家記録院は独立記念館で国家記録特別展「記録で見るその日の喚声」を開き、柳寛順(ユ・グァンスン)の判決文や各種の宣言書の原本を初めて一般に公開した。独立記念館にはこの日、例年(3万人)より多い5万人の観覧客が訪れた。

 またソウルのタプコル公園では、3・1節記念民族共同行事準備委員会の主管で独立宣言書に署名した33人と3・1運動で犠牲になった英霊たちのための鎮魂大祭と記念式が行われた一方、韓国民族宗教協議会や大倧教教などが主催する「3・1節記念民族共同行事」も開かれた。

 普信閣ではソウル市が主催する「3・1節打鐘イベント」が開かれ、33回鐘を鳴らした。当時の衣装を身に着けた学生や一般市民ら500人余りが仁寺洞から普信閣まで街頭行進し、太極旗(韓国の国旗)を振って万歳を叫んだ。ライト・コリア、大韓民国仏教徒総連合などが参加する「国家刷新国民連合」はソウル市庁前広場で、500人余りが参加する中、「経済の活性および安全保障強化3・1節国民大会」を開催した。

 天道教はソウル市鍾路慶雲洞の中央総部で記念イベントを開き、教団の未来をかけ教団レベルで3・1運動を先導した天道教の先輩の精神をたたえた。

 そのほかにもマラソン大会(仁川・蔚山・春川)、自転車大行進(釜山・大田)、太極旗掲揚(光州)、マダン劇公演(京畿)など、全国的にさまざまな3・1節イベントが行われた。

キム・ハンス記者

チョン・ヒョンソク記者

http://www.chosunonline.com/news/20090302000021

*1:愛国者を自認しつつ、日本の「亡国的」現状を日々嘆いている諸賢も、先入見をいったん横において、こうしたイベントが自然に成立する隣国の姿を、いちど真面目に見つめなおしてみてはどうだろうか。以上、若干の軽口として。

*2:現在はどこの獄舎も2階に上がることはできなくなっている。有るがままの獄舎の姿を見るには、あの頃が最後の機会だったのかも知れない。