中東でのG大阪ブランド化

中東の超有名ブランド「ガンバ大阪」(アラーの国のフットボール)

まあ、痛しかゆしではあります。
もっとも、個人的には必ずしも悪いことだとは思っていませんが。
移籍する選手がいても、引き抜かれても、そこにいる選手・スタッフで強くあればいいんです。こんなのは、負ける言い訳にはならないことです。

 さて、なぜ「中東(=湾岸)」サイドが毎年のように多額の金を積んでJ出身のブラジルストライカーを「強奪」したがるのか。ここから先は筆者の私見だ。
 バーレーン代表の多くが所属するカタールスターリーグ(=QSL)は筆者も見る機会が多いし、J出身のストライカーが加入したクラブは気になってQSLでなくてもそのクラブの試合をテレビでたまに見たりするのだが、その際にここ2−3年のJリーグがらみで湾岸にいて感じることは主に3つある。

 1)Jリーグのブランド化
 2)G大阪の超有名ブランド化
 3)中東リーグ、なかでもカタールリーグにおけるJ出身ブラジル人ストライカーの活躍(特に加入した初年度)

である。
 1)のJリーグのブランド化というのは、特にここ2−3年におけるJクラブのアジアCLでの活躍やクラブW杯での浦和、G大阪の善戦をこちらサイドでは驚きとある種の憧れをもって見ていることから生じている。アジアCLでは今年も16強にJクラブのすべてが進出したり、浦和が07年に続けてG大阪が08年にアジア王者になったりしたことなどがその憧憬に拍車をかけていることだろう。

 2)については、まずこちらのサッカー中継の場面から説明したい。たとえばQSLのゲームなどをテレビで見ているとアナウンサーが「ガンバオオサアーカー」と絶叫することがある。これはガンバ出身のマグノ・アウベスやクレメンソンがいいプレーをしたりゴールを決めたりするとなされることが多く「いいですか、この選手はあのアジアの王者クラブG大阪から持ってきたんですよ」というニュアンスに聞こえなくもない。ちょっと前までだと「浦和レッズ」もよく聞いたのだが、08−09シーズンはとにかく「ガンバオオサアーカー」の回数が非常に多かった。

 さらに08年12月のクラブW杯、マンチェスターU戦でのG大阪の戦いぶり(08年12月18日、マンチェスターU5−3G大阪)も、こちらでは絶賛されたのでG大阪の超有名ブランド化はさらに進んでしまったのではないだろうか(詳しくは過去コラム「アラブ世界がG大阪を絶賛、カミカーゼ・ヤバン!」参照)。

 3)についても過去コラムと大きくダブらない程度にごく簡単にまとめてみよう。カタールリーグを例にするといいだろうが、このリーグの優勝チームは00−01年シーズンから順に、アルワクラ(00−01)、アルガラーファ(01−02)、カタールSC(02−03)、アルサード(03−04)、アルガラーファ(04−05)と連覇チームなしであった。05年7月にエメルソンがカタールに上陸し、アルサードの一員になる。このエメルソンが入ったアルサード、とくに彼の2年目のシーズンは18ゴール(27試合)の大活躍で05−06シーズンと06−07シーズン連覇を果たし、アルサード黄金時代を予感させた。

 しかし、そうはいかなかった。ライバルチームのアルガラーファは07年の夏に大きな補強を行い、当時ブラジルのクルゼイロに在籍していたクレメンソンを引き抜いた。クレメンソンは1年目に27ゴールを挙げ得点王になり、07−08年度はアルガラーファが覇権を奪回。続く08−09年度も20ゴールの活躍で、チームは2連覇となったのである。結果だけを見るとJ出身のブラジル人ストライカーはまるでリーグ優勝のための「お守り」みたいではないか(ちなみに、08−09年度のQSL得点王はサウジアラビアアルイテハドからカタールのウムサラールにやってきたマグノ・アウベス=25得点)。

 なるほどアナウンサーが「ガンバオオサアーカー」と何度も何度も叫んでいたわけだ。そういう流れの中で、大金を投じてまで7月にウムサラールがダビを獲得し8月にアルサードがレアンドロを獲ったことの意味や彼らに託された非常に大きな期待などが見えてくる。

 やはり優勝チームがころころ変わるお隣りUAEリーグにおいても「お守り神話」は実現。去年、バレーの加入したアルアハリも08−09年シーズンを制し、同国で行われるクラブW杯の出場権を見事に手にしている(もっともバレー自身はUAEリーグへの適応に意外にてこずったようだ。2年目の活躍に期待しよう)。

「クレメンソン」って誰のことかと思ったら、アラウージョのことですね。リーグを初めて制した2005年のアラ様の活躍は、忘れられないものがあります。