混乱してしまって理解に苦しむ済州のお話

私に言わせれば、そんな遠いアメリカ合衆国のお話を引き合いに出さなくても、すぐ近くにピッタリのケースがあるというのに、「日本の沖縄では〜」と書かない『朝鮮日報』の社説には、どちらが正常なのか、混乱してしまいます。

記事入力 : 2010/08/04 14:02:30
【社説】発展もたらす基地建設を拒む済州

 済州道および済州道議会が2日、韓国政府に対し、済州海軍基地建設に関連する工事の中断を要請した。米国では、各自治体がそれぞれ便宜を図って軍事基地の誘致競争を繰り広げている。連邦議会の議員や州知事は、もともと地元にあった基地が閉鎖されることになれば、政治的に致命的な打撃を被る。地域に軍事基地が建設される場合、長期的に地域経済の発展にとって大きな助けとなるからだ。そこで歴代大統領は、ある議員の歓心を買ったり、あるいはその議員に仕返しをする政治的武器として、軍事基地の維持や閉鎖を使用することもある。議員の側も、地元の軍事基地関連の予算が削減されるのを防ぐため、国防総省に代わって駆け回る。ヨーロッパ諸国の多くでも、同様の状況にある。ところが大韓民国では、道知事や地方議員らが基地建設を阻止するために動いており、どちらが正常なのか、混乱してしまう。

 韓国政府は、今年から2014年にかけて、西帰浦市江汀村に軍事基地を兼ねた観光港を開発する予定だ。イージス艦をはじめとする韓国海軍の艦艇20隻余りと、最大で15万トン級のクルーズ船2隻が同時に接岸できる港を建設する構想だ。済州道にとっては、観光資源をもう一つ確保することになる。韓国海軍は、済州南方の海域における海上輸送の安全を確保し、有事の際に韓半島朝鮮半島)周辺海域を守るに当たって済州海軍基地が必要だとして、2005年から基地建設計画を進めてきた。済州島南方の海域は、韓国の貿易物流量の99%を占める中心的な貿易航路で、ここを経由して毎日40万トンもの石油が供給されている。

 だがこの計画に対し、済州地域の一部の市民・環境団体や政党は、「平和の島になぜ軍事基地なのか」というスローガンを掲げ、基地建設阻止に力を尽くしてきた。現地住民450人は、韓国海軍が基地建設に必要な手続きを踏んでいないとして、基地建設計画を無効にして欲しいという訴訟も起こした。しかし、ソウル行政裁判所は先月、「海軍が環境影響評価を行って道知事と協議し、公聴会などで提示された住民の意見を反映する過程を経た以上、手続きには問題はない」という判決を下した。

 それでも済州道と道議会は、突如として「手続き的正当性」を口実に、工事の中断を叫んでいる。済州道は、海軍基地建設の代価として、何か大きなインセンティブを与えることを政府に要求しているという。要するに「工事中断」は、中央政府を圧迫するための交渉の手段というわけだ。米国のように、自治体が中心となって基地の誘致運動に乗り出してはいないにせよ、国家安全保障と済州発展のために必要とされる基地建設を、済州道自らがけり飛ばしている状況は、どうにも理解に苦しむ。

http://www.chosunonline.com/news/20100804000050

「国家安全保障と済州発展のために必要とされる基地建設を、済州道自らがけり飛ばしている状況」の理解に苦しむのは『朝鮮日報』の側の事情であって、ホントに理解できないで真面目にこれを書いているのなら「ちょっとは考えろよ!」という話です*1

国家安全保障とか地域発展とかいう「お題目」を唱えてもそれが効力を発揮しない理由を、あくまで相手の「信仰心の欠如」に見るのか。それとも、見方を変えてお題目そのものをいちど疑ってみるか。政治家やマスコミの論説委員の人たちが現場でつらつらと考えてはいられないかも知れませんが、そんなことを誰かは考えてもよさそうなものです。

記事入力 : 2010/08/03 11:23:34
済州道・議会「海軍基地建設の中断を」(上)
「変更・承認計画は適法、事業は続行可能」
裁判所の決定と相反する要求

 済州道および済州道議会は2日、「韓国海軍の基地建設(民・軍複合型観光美港)に関連するあらゆる工事の中断を要請する」と発表した。これにより、2014年から本格運営を予定していた済州海軍基地の建設事業に支障が生じるのは避けられない見通しだ。

 済州道と道議会は同日午後5時50分、済州道議会教育委員会の会議室で、禹瑾敏(ウ・グンミン)済州道知事と文大林(ムン・デリム)済州道議会議長らが出席する中、政策協議会を開いた。その席上でこうした決定が下され、議会内に「海軍基地対立解消特別委員会」を設置、運営することとした。

 知事や議長らは共同発表文で、「海軍基地に関連する政策決定は手続きの上で正当性が十分でなく、(建設予定地の)江汀村をめぐって対立が生じたという点で、認識が一致した。海軍基地をめぐる対立を、済州社会最大の懸案と認識し、力を合わせて解決に乗り出す構えだ」と表明した。

 さらに韓国政府に対し、「済州道と道議会が共同で対立解決に努める間、政府に対しては海軍基地建設に関連するあらゆる工事の中断を要請する。済州道民が共感できる方向で、汎政府的役割を尽くしてもらうことを望む」と求めた。黄仁平(ファン・インピョン)行政副知事は、建設地の再選定を含む事業の全面的な再検討を言っているのかという質問に対し、「その段階までは至っていない」と答え、一線を画した。

http://www.chosunonline.com/news/20100803000043

記事入力 : 2010/08/03 11:23:44
済州道・議会「海軍基地建設の中断を」(下)

 こうした済州道・済州道議会の要求は、裁判所の決定と相反するもので、議論が高まることが予想される。ソウル行政裁判所行政13部(裁判長:パク・ジョンファ部長判事)は先月15日、済州海軍基地設立計画の取り消しを求める住民400人余りが国防部を相手取って起こした訴訟で、「最初の事業計画は無効だが、今年3月に変更・承認した計画は適法で、事業は続行可能だ」という判決を下した。裁判部は当時、「海軍が最初の事業計画を承認した後、環境影響評価を行って道知事と協議し、公聴会などによって提示された住民の意見を反映して補完する過程を経た以上、事業の進行は適法」と述べた。国防部が環境影響評価を経ないまま昨年1月に承認した基本計画はすべて無効だが、その後に不備が補完されたため、事業の進行は正当だと判断したのだ。

 海軍の関係者は、「正当な法的手続きに従って推進している海軍基地建設に対し、済州道や済州道議会が、すべての工事を中断せよと要請するのは遺憾。合理的かつ、利害関係者すべてが納得できる方向で問題が解決されることを望む」と語った。

 韓国海軍と済州道は2007年6月、西帰浦市江汀村の海岸を海軍基地の候補地として選定し、海軍は今年1月29日、施工業者と契約を結び着工届を提出した。用地の買収は、敷地の54%に相当する15万1994平方メートルで協議が済み、233億ウォン(現在のレートで約17億2843万円、以下同)の補償金が支給された。漁業補償も、件数にして87%が完了し、補償金94億ウォン(約6億9731万円)が支給されている。ところが、地域住民や一部の市民団体の間で反発が起こり、現在まできちんと工事が行われていない。

 海軍済州基地事業団は、今年から2014年にかけて総額9587億ウォン(約711億円)の費用を投じ、イージス艦を含む海軍の艦艇20隻余りと、最大15万トンのクルーズ船2隻が同時に接岸できる「軍・民複合型観光美港」を建設する計画を推進している。

済州=オ・ジェヨン記者

http://www.chosunonline.com/news/20100803000044

*1:実はその背景までじっくり考えた上でレトリックとして書いている可能性も、主観的にはホントにわからなくてこう書いている可能性も、両方あると思っています。