ソウル大工学部大学院の斜陽化

だってあなた、ソウル大の大学院、それも博士課程まで進学したって仕方ないじゃないですか。ソウル大の問題というより、韓国社会の問題ですよそれは。

記事入力 : 2010/12/27 08:55:52
ソウル大工学部博士課程、3年連続で大幅欠員

14カ所中6カ所で定員に達せず
留学、専攻変更

 ソウル大学工学部の博士課程が3年連続で大幅な欠員を出している。

 ソウル大は26日、2011年度前期工学部募集単位14カ所(8学部、3協同課程、3研究中心大学〈WCU〉学科)のうち、6カ所の博士課程志願者が定員に達しなかったことを明らかにした。定員に達しなかったのは電気・コンピューター工学部、機械航空工学部、建設環境工学部、化学生物工学部、都市設計学専攻(協同課程)、材料工学部ハイブリッド材料専攻(WCU)だ。

 バイオエンジニアリング専攻(協同課程)と、エネルギー環境化学融合技術専攻(WCU)の2カ所は競争率が1倍だった。全14募集単位のうち、8カ所が競争率1倍以下だったことになる。

 昨年の10年度募集でも、14カ所のうち前期8カ所、後期5カ所の志願者が定員に達しなかった。09年度前期募集は11カ所のうち5カ所が、後期は14カ所のうち8カ所が競争率1倍を下回った。07・08年度で定員に達しなかったのは1−3カ所だった。

 同大工学部の教授は、博士課程が定員に達しない事態が深刻化している原因について、「博士号を取るため海外に出る学生は増えているが、国内の大学院に進学し博士課程を修了しようという学生が減っているため。工学を専攻していても、待遇がいい金融分野に進もうと、会計士の資格を取るなど専攻を変更する場合もある」と話している。

李碩浩(イ・ソクホ)記者

http://www.chosunonline.com/news/20101227000015

何でそんなことになるか、実際には理由はみんなわかっているんですけどね。

記事入力 : 2010/12/28 15:10:33
ソウル大工学部博士課程、3年連続で大幅欠員のワケ(上)

海外の博士課程出身者に押され、実験室では雑務処理も
大部分が海外に留学か弁理士・会計士など「実務」選択

 「同窓会で弁理士や技術公務員、司法公務員となった3、4歳下の後輩たちがお金を稼いでいるのを見ると、正直うらやましい。学部を卒業して医学専門大学院に行った友人はまだ正規の医者ではないけれど、後にたくさん稼ぐだろうし…」

 今年2月、ソウル大学電気工学科で博士号を取得し、ソウル市内の大学で非常勤講師をしているA氏(32)は、教授になる夢をあきらめ、大手電子会社に就職することを決めた。A氏は「入社しても、初任給が(年収で)7000万〜8000万ウォン(約504万〜576万円)の弁理士に比べ、1000万〜2000万ウォン(約72万〜144万円)少ない。自分のレベルでは、教授になるには能力が足りない。地方の無名大学なら何とかなるかもしれないが」と話した。

 韓国の工学・産業界で最高クラスの人材を輩出してきたソウル大工学部が、博士課程で3年連続して大幅な定員割れを起こしているのには理由がある。工学部の学生、大学院生たちは、「工学を志す学生としてビジョンが見えない」と話す。修士号や博士号を取得しても、外に出れば海外での博士号取得者があふれ、内部では教授の雑務まで処理しなくてはならないのが、ソウル大工学部大学院の現実だ。現在、ソウル大工学部の教授310人のうち、同大工学部大学院出身者は11.3%に相当する35人だけだ。同大工学部で教授になれる確率が低いため、大学院の志願率も低い。

 電子・造船・自動車分野の技術開発に力を入れ、経済発展を導いてきた工学系の先輩たちの誇りも昔の話だ。ソウル大工学部のある教授は、「一人当たり国民所得2万ドル(約166万円)の時代に入りさまざまな職種が生まれ、相対的に理工系のプライドが低下した。国家の収入を左右する工学分野が非常におろそかにされている感じがする」と話した。

http://www.chosunonline.com/news/20101228000061

記事入力 : 2010/12/28 15:10:45
ソウル大工学部博士課程、3年連続で大幅欠員のワケ(下)

 ソウル大学機械航空工学科で修士号を取得し、博士課程に進学する代わりに法学専門大学院に進学したB氏(27)は、「修士・博士課程に進学する学生たちは、勉強よりも軍入隊の問題を何とか逃れようとしているケースが多い」と打ち明けた。

 ソウル大材料工学科のある教授は、「兵役特例の恩恵を受けようと工学部大学院に進学する学生がおり、純粋に工学博士号を取得しようという学生だけを数えると、競争倍率はさらに低下する」と話した。工学部の教授たちは志願者減少が実験室(研究室)の学生たちのレベル低下につながっていると話す。ある教授は「実験室で修士・博士課程の学生と話が通じないケースもある」と話した。

 権威的な実験室の雰囲気や事務的な雑務までこなさなくてはならない現実も、工学系の学生たちが大学院の実験室に背を向ける要因といえる。ソウル大工学部の修士課程を修了したキム氏(25)は、「教授は『王』、学生は『従者』という実験室の文化のせいで、きちんと勉強して教授になりたいという友人たちは、早々に海外へ行ってしまう。韓国の大学は、外国の大学の実験室のように、教授と学生がパートナーとして協力関係を結ぶことができない、前近代的な構造を持っている」と指摘した。

 ソウル大工学部のカン・テジン学長は、「工学部博士課程の学生一人に投入される年間教育費が、米国の大学の30%の水準にすぎない。博士課程の学生の生活費と研究費が教授たちの外部プロジェクト研究費に左右される状況の中、工科大学博士課程に対する政府の支援が切実に必要な状況だ」と話した。工学部のある教授は「工科大学の博士課程志願者を増やすため、産学協力企業が数百社に上る中国精華大学のように、企業と手を結んで工学の優秀な人材を育成する必要がある」と話した。

李碩浩(イ・ソクホ)記者
キム・ウンジョン記者

http://www.chosunonline.com/news/20101228000062

この問題、『朝鮮日報』は社説でもいちおう取り上げてはいますが、私が見るに表面的な言葉ほど深刻に考えられていない節が感じられます。じゃあどうしたらいいのか、という肝心なところを「対策が急がれる」の一言で片付けるあたり、丸投げですやん*1

要は、問題としての優先度にあまり高い順位が与えられていないことの現われではないかと思われます。

記事入力 : 2010/12/28 15:11:26
【社説】ソウル大工学部博士課程の定員割れが意味するもの

 ソウル大学工学部の2011年度博士課程新入生選抜試験で、前期募集単位14カ所(8学部、3協同課程、3研究中心大学〈WCU〉学科)のうち、電気・コンピューター工学部、機械航空工学部、建設環境工学部など6カ所の志願者が定員割れとなった。昨年は、14カ所のうち8カ所が、09年度には11カ所のうち5カ所が定員割れとなった。

 ソウル大工学部は、韓国科学技術院(KAIST)と共に、韓国国内で工学分野最高の大学として、半世紀もの間、韓国の産業化を率いる技術者を輩出してきた。そのような大学の博士課程が定員割れになっているのは、理工系出身者の賃金がそれほど高くなく、企業内で最高経営者として出世する可能性も低く、技術発展のスピードが速いため、若くして退職を余儀なくされる可能性が高いためだ。

 さらに大きな問題は、ソウル大工学部のグローバル競争力だ。科学技術分野は、国家間の人材移動にほとんど壁がなく、インターネットを通じた同時情報共有が実現、多様な学問の融合で随時新しい分野が創り出されている。このような流れの中で、ソウル大工学部の競争力は、海外の大学の工学部に次第に押され、工学を志す優秀な韓国人学生も外国に目を向けている。

 ソウル大工学部は、世界的な大学評価機関クアクアレリ・シモンズ(QS)の工科大学分野評価で今年38位となった。アジア圏だけを見ても東京大(7位)、シンガポール国立大(10位)、清華大(11位)、京都大(17位)に大きく後れを取り、10番目という成績だ。世界38位、アジア10位の大学の博士号では、韓国国内の中堅大学の教授職に就くのも難しい。ソウル大だけでなく、主要大学の工学部の実験室が、中国やベトナム、モンゴルなどから来た留学生たちでいっぱいなのもこのような理由からだ。

 実力がある博士課程の学生たちと学界で認められる論文を書いたポスドク(博士号取得後の若手研究者)の研究実績が蓄積されることで、再び優秀な学生が集まるという好循環が生まれる。ソウル大工学部博士課程の定員割れは、数年後に韓国の科学技術のレベルが低下することを予告する憂欝(ゆううつ)な信号であり、韓国の製造業の老化と斜陽を予告する先行指標だ。対策が急がれる。

http://www.chosunonline.com/news/20101228000063

朝鮮日報』の社説的には、こちらの方が「より深刻な問題」と受け止められているようです。これが重大な問題であることには、私も異論がありません。貴重な存在であるはずの留学生にこの扱い、韓国国内の大学院教育に、韓国政府も関心を失いつつあるんでしょうかねえ…。

記事入力 : 2010/12/28 10:04:50
【社説】韓国政府の約束信じた留学生を帰国させるな

 来年度予算案に、政府招請の外国人奨学生に支給する奨学金の予算が反映されておらず、留学生200人余りが帰国せざるを得ない状況に置かれているという。政府招請外国人奨学生事業を運営する国立国際教育院は、「少なくとも14億ウォン(約1億円)必要で増額を要請したのに、予算が全く反映されなかった」と話している。来年度の外国人奨学生関連予算は、今年に比べ2300万ウォン(約166万円)減額の326億3900万ウォン(約23億5060万円)だ。

 政府招請外国人奨学生の学事指針には、「修士は6カ月、博士は1年まで奨学期間の延長が可能」と明記されている。言葉が不自由な外国で勉強する留学生が韓国人学生と競争しながら、決められた期間内に学位を取得するのは容易ではない。学事指針に延長可能規定を明記したのも、このような理由からだ。

 しかし企画経済部は、「内実ある運営」という名分で、奨学期間延長に対する支給額を予算案に取り入れなかった。2008年に837人だった政府招請奨学生が、来年は120カ国2100人へと大幅に増加するという点を考えず、予算削減にメスを入れたことになる。国会教育科学委員会は、このような問題を知り、延長支給金を追加反映することに合意したが、本会議では(この議題が)扱われなかった。

 外国人留学生は、後に本国へ戻り、その国の指導者として活動する人材だ。韓国政府が約束を守らなかったために困窮し、韓国を去らなければならないとしたら、韓国に対してどう思うだろうか。聞かなくとも明らかだろう。

http://www.chosunonline.com/news/20101228000029

*1:私から対策を申し上げれば、韓国研究関係以外の大学院は、マサチューセッツカリフォルニアあたりへ移転させることをお勧めします。