KAISTはどこに向かうのか

もちろん「ハンギョレ」などもこの件について書いているんですけど、「朝鮮日報」の方がニュースの取り扱い方に微妙で複雑なひだが見えるので、こちらをクリップしておくとします。

記事入力 : 2011/04/09 11:54:55
自殺者相次ぐKAIST、授業料免除制度に問題?
卒業生の13%は医師志望

 韓国科学技術院(KAIST)で学生の自殺が相次いでいる問題をめぐり「KAISTでは国民の税金により授業料の全額が免除されているが、この制度そのものに問題があるのではないか」との指摘が相次いでいる。韓国が産業化を目指していた時代に与えられた恩恵が、今では学生たちにとってストレスとして重くのしかかっているというのだ。

 KAISTの前身は、1971年に設立された理工系大学院の韓国科学院(KAIS)だった。政府は当時「工業立国」を目指して優秀な科学者の養成に力を入れたが、学生たちは学費や兵役の免除という形でその恩恵を受けることができた。

 1984年にはKAISTに学部課程が設けられ、大学院生に与えられていた恩恵はそのまま学部生にも適用された。その後も2007年に徐南杓(ソ・ナムピョ)総長(学長)が「授業料免除の段階適用」を導入するまで、KAISTの学生は全員が授業料を全額免除されていた。現在も5段階評価で平均3.0以上の成績を挙げれば、学部生も1学期の授業料600万ウォン(約47万円)が全額免除される。

 しかし、在学生全員に与えられるこの免除制度は「過去の過剰な恩恵」であり、結果として学生たちに安易な考え方を持たせるようになったとの指摘もある。ある私立大学の理工系教授は「今は1970年代のように国が学生を経済的に支援し、科学者を養成するような時代だろうか」と指摘する。また、別の理工系教授は「現在のように特定の大学で学費を免除するよりも、国が奨学生を選抜して奨学金を支給する方が合理的だ」と述べた。

 国民の税金で授業料の支援を受けながら、最終的には医師を目指す学生も少なくない。2009年の卒業生620人のうち、13.2%にあたる82人は医学系の大学院に進学した。

 米国や日本では、KAISTのように国が授業料を全額支援するようなケースはみられない。マサチューセッツ工科大学(MIT)やカリフォルニア工科大学カルテック)など、米国の名門私立大学における2009−10年度の平均授業料は2万6273ドル(約222万5300万円)で、公立大学の平均は7020ドル(約59万4600円)だった。

キム・ヨンジュ記者

http://www.chosunonline.com/news/20110409000033

記事入力 : 2011/04/09 11:56:58
KAIST:成績による授業料免除が学生のストレスに
KAIST「授業料免除の段階適用」18%が授業料を納付
一般高校出身者は大きな挫折感
中学校を飛び級で卒業した学生、ストレスに弱い傾向

 来月に創立40周年を迎える韓国科学技術院(KAIST)が、最大の危機を迎えている。今年に入ってから4人の学生が相次いで自殺したことをめぐり、2007年に導入された「授業料免除の段階適用」と、大学当局によるずさんな学生管理が問題の根本として指摘されているのだ。徐南杓(ソ・ナムピョ)総長(学長)による改革の本丸とされてきた「授業料免除の段階適用」は、本来はKAISTそのものの競争力を高めることを目的としていたが、一部の学生にとっては大きな挫折を味わう原因となっている。

■無理な改革だったのか

 KAISTは7日に「授業料免除の段階適用」の撤回を突然発表し、「徐南杓改革」の目玉の1つが崩壊した。この制度が導入されてから、学生たちの間で競争が激しくなり、実力が向上するというプラス面も確かにあった。しかし、これに適応しきれなかった学生も多く、これがまた別の問題を生み出しているのだ。

 学生たちの間では「奨学金足切り(単位不足や成績の問題で国から理工系奨学金を受けられなくなること)」を意味する「チャンチャル」という言葉が広まっている。奨学金足切りの憂き目にあった学生たちは、自分が落ちこぼれになったような挫折感を味わい、そのつらさを友人にも打ち明けられない状況にあるという。


兪碩在(ユ・ソクジェ)記者

http://www.chosunonline.com/news/20110409000034

記事入力 : 2011/04/09 12:06:21
【社説】KAIST改革、温情と手厚い支援で後押しを

 韓国科学技術院(KAIST)の学生が、先日また一人自殺した。今年に入ってすでに4人目だ。自殺の原因としてこれまで指摘されてきた懲罰的な授業料納付の制度について、徐南杓(ソ・ナムピョ)総長(学長)は「来学期からこの制度を廃止する」と発表した。KAISTの在学生はかつて全員が国費の奨学生だったが、この制度が導入されて以降、学生たちは成績が5段階で3.0から0.01下がるたびに、6万ウォン(約4700円)の負担を求められるようになった。

 徐総長は米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)で36年にわたり教授として在籍した後、2006年7月にKAISTの総長に就任した。徐総長は世界トップの工科大学に勤務した経験をKAISTで生かすとして、すべての講義を英語で行うと同時に、授業料免除の段階適用制度を導入した。教授たちに対しては定年保障審査を強化し、2007年には審査対象となった38人のうち15人を脱落させるなど、多くの議論を巻き起こした。厳しい教授評価、英語による講義、授業料免除の段階適用は「徐南杓改革」を支える3つの柱だった。ところがその柱の1つが、学生の相次ぐ自殺によって廃止されることになったのだ。

 一方、この改革のおかげで、英紙「ザ・タイムズ」が選定する世界大学評価において、KAISTのランキングは2006年の198位から、07年に132位、08年に95位、09年には69位と、年々上昇している。またKAISTの改革は、無気力に陥った韓国国内の大学に競争意識を駆り立てるきっかけになったとも言える。04年から始まったザ・タイムズの評価で、09年にはソウル大学が47位、KAISTが69位、ポステック(旧浦項工大)が134位、延世大学が151位に入るなど、韓国の4大学が一気に200位以内に浮上した。

 しかし、徐南杓改革はこれらの成果をもたらす一方で、学内ではさまざまな問題を引き起こしたことから、制度の見直しが進められている。徐総長は「目標が正しければ、たとえどんな反対があっても最後までやり抜くべきだ。自分はKAISTを世界最高の大学にするために努力しており、その目標は今も正しいと信じている」とたびたび口にしている。また、国民も誰一人としてこの目標が間違っているとは考えていないだろう。だからこそ、この目標を追求するに当たっては、改革のマイナス面を最小限に抑えることにも一層の努力を傾けるべきだった。

 授業料免除の段階適用制度はすでに廃止が決定し、全ての講義を英語で行うという方針も緩和されつつある。しかし、この国で世界トップレベルの大学を育てるという目標まで取り下げてはならない。もちろん、学生が感じる勉強へのプレッシャーを和らげ、極端な行動に走らないようにするためにも制度面での見直しは急ぐべきだろう。世界トップレベルの大学を目指すという目標は維持する一方で、今後は学生を配慮し支援する改革も同時に進めていかなければならない。

http://www.chosunonline.com/news/20110409000038