日本ハムのソフトボール出身選手育成プロジェクト

ソフトボール選手をドラフト指名した時にも驚きましたが、キャンプでもこれだけの打撃を見せるとはさらに驚きです。球団としてはそのへん、ある程度は見込んでいたんでしょうけど。

夕刊フジ」らしく、やや軽薄な見出しで煽っていますが、ここで書かれている程度のことは当然織り込み済みで指名したんでしょうから、最終的にはじっくり腰を据えて育成するだろうことは予測がつきます。ダルビッシュ中田翔を育て上げた実績もありますし、そこは日本ハムファイターズ、定評のある球団です。

気の遠くなるほどに地味な鍛錬が続くと思いますが、間違いなく夢のある育成プロジェクトです。コーチも取り組み甲斐があるのではないでしょうか。

“ソフト出身”大嶋にハードな“穴”!首脳陣もトホホ〜
2012.02.10


2戦目もマルチ安打で打撃のセンスをみせた大嶋なのだが…

 打てば打つほど困っちゃう!? 日本ハムのドラフト7位で早大ソフトボール部出身の大嶋匠捕手(21)が、横浜DeNA・中畑清監督(58)をもしのぎ、キャンプの目玉ナンバーワンに躍り出る勢いだ。8日には“プロ初打席”でバックスクリーン弾を放つと、9日も右へ左へ技ありのマルチ安打。異色のニューヒーロー誕生に、周囲は「スタメン奪取か?」と色めき立つがちょっと問題がある。実は守備が全くの“素人”なのだ。(宮脇広久)

 ひょうたんから駒、いや、ひょうたんからニュースターだ。

 沖縄・国頭村の2軍キャンプでプロ野球の“イロハ”を学んでいた大嶋が、試しに1軍の紅白戦(名護市営球場)に呼ばれてみると、プロ初実戦の初打席初スイングで初本塁打の離れ業。9日の第2戦でも、第1打席で右腕の矢貫俊之投手(28)から右前へクリーンヒット。第2打席は、左腕の土屋健二投手(21)から左前打。7回1死二塁で迎えた第3打席は、プロ8年目の右腕・松家卓弘投手(29)の前に二ゴロに倒れたが走者を三塁に進め、本人いわく「進塁打をねらっていた。最低限の仕事はできた」と胸を張った。

 山田正雄ゼネラルマネジャー(67)は「結果だけでなく、打っている形がいい」と評価。今季初の対外試合となる11日の広島との練習試合(名護)でも、ベンチ入りが決まった。

 こうなると、ファンも報道陣も色めきたつ。この日の紅白戦はベテラン組が欠場していたこともあり、拍手が起きるのは中田翔内野手(22)と大嶋の打席だけ。

 栗山英樹監督(50)はやや戸惑い気味で「毎試合ヒットを打つ限り2軍には落とせない。首脳陣がというより、みんな(報道陣?)が許さないでしょう」となんともビミョーな言い回し。報道陣が「広島戦ではスタメンも?」と詰め寄ると、さすがに「それは…ないかな。もう少し時間をちょうだいよ。守備位置の問題があるし、ケガをさせないようにしないと。みんなの思いは僕が一番わかってますから」とストップをかけた。

 スター不足の球界にあって、マスコミが大嶋を一日でも早く異色のニューヒーローに仕立て上げたがっていることくらい、引退して以来スポーツキャスターとして活躍してきた指揮官なら百も承知。もちろんダルビッシュ有投手(25)の抜けた球団にとっても、願ってもないこと。

 ただ一方で、不安とためらいもある。センスを感じさせる打撃はともかく、守備の方はプロとして試合に出るどころか、1軍の練習に参加することさえはばかられるレベルなのだ。

 大嶋の出場は2試合ともDHで、マスクはまだ1度もかぶっていない。福沢洋一2軍バッテリーコーチ(44)は「現状は“投球を捕れたらOK”という段階。ミットにいい音を響かせて捕るとか、スローイングを考える段階にはまだ達していない。そういう捕手とバッテリーを組ませることは、1軍入りを争っている投手には迷惑になってしまう。本人の大きなケガにつながる危険性もある」と説明する。

 ブルペンでは、開幕投手候補の武田勝投手(33)の投球を受けるシーンもあったが、「先発ローテ入りは間違いなしの武田勝だからこそ、引き受けてもらえた」(福沢コーチ)というのが実情だ。

 さらに…。

 「プロの捕手としてやってきた僕らでも、もし“300メートルの上空から落下させたボールを捕れるか?”と聞かれたら、想像を絶していて答えようがない。大嶋はいま、そんな心境で野球をやっているのではないか。僕は過去にこういう選手を教えた経験はないが、彼の立場に立って、どんな感覚でいるのかを確かめながらひとつひとつ教えていかないと」

 硬球とソフトボールでは、大きさも重さも全く違う。「強肩かそうでないかも、評価できる段階でない。硬球はソフトボールより小さいわけだから、どう握ってどう投げればいい送球が行くのか、感覚をつかむことが先決」とも福沢コーチは指摘する。

 ただでさえ、捕手は他と比べて覚えることが多い。かといって内・外野にコンバートしようにも大嶋に経験がなく、おいそれとはいかない。となればDHという手があるが、昨年は稲葉篤紀外野手(39)が最多の60試合、二岡智宏内野手(35)が27試合務めたように、本来は実績のある強打者が務めるもの。

 昨年横浜で20本塁打を放ったスレッジ外野手(34)も3年ぶりに復帰し、基本的には新人の出る幕ではない。

 それでも栗山監督は「学ばなければならないことを後回しにして、打つだけで勝負をさせてもいいのかもしれない。それくらい勢いがある」と、打撃次第で1軍入りさせることも視野に入れ始めた。

 “ソフト君”の挑戦には夢があり、ファンの喝采を浴びるだろう。だが同時に、首脳陣にとって難しい判断を迫られるプロジェクトであることも確かだ。

 ■おおしま・たくみ 1990(平成2)年2月14日、群馬県生まれ。小3時に軟式野球を始め、中学からソフトボールに転向。新島学園高では1年時に高校総体、国体で優勝。早大では2008年にソフトボールU−19全日本の4番を務め、10年U−23ワールドシリーズで優秀選手賞。昨季の公式戦でも13試合連続本塁打を放っている。180センチ、95キロ。右投げ左打ち。

http://www.zakzak.co.jp/sports/baseball/news/20120210/bbl1202101143001-n1.htm