ACLに予感するアジアサッカーの地殻変動

ACLの開幕戦では、日本勢が1勝1分け2敗という結果でした。ガンバ大阪は自滅気味でしたけど、リーグ王者相手のアウェイ戦とは言え、柏レイソルがタイで敗れたのは、当事者にとってはやや予想外だったかもしれません。


柏が3失点黒星、中3日&気温36度でアジアの洗礼…ACL


前半、先制点を奪われ悔しがる柏イレブン(左から増嶋、ジョルジ・ワグネル、大谷、1人おいて北嶋=共同)

 ◆ACL ▽1次リーグ・H組 ブリラム3―2柏(7日・ブリラム) 各地で1次リーグ初戦が行われ、H組では昨季J1王者の柏が敵地でタイリーグ王者のブリラムに2―3で敗れた。0―2から後半にFW田中順也(24)、DF酒井宏樹(21)のゴールで追いついたが、終盤に決勝点を奪われた。

 柏が敵地でアジアの洗礼を浴びた。屈辱の3失点。「想像していた通り難しい試合だった。勝てたかもしれないがアウェーの(応援の)力に負かされた」。ネルシーニョ監督は悔しげに振り返った。

 3日に富士ゼロックス杯を戦い、中3日の強行軍。気温36度の暑さも響いた。なかなかエンジンがかからず、前半11分に先制点を献上。30分にはミドル弾を決められた。

 それでも意地は見せた。後半出場のロボから出たパスを田中が決め、その後もレアンドロのクロスを酒井が頭で押し込み同点。だが、32分に速いパス交換で中央を破られ、痛恨の決勝点を奪われた。

 全4チームが各国リーグ覇者という“死のグループ”。初陣の柏には苦しい船出となった。11日のJ開幕(横浜M戦)へ、疲れと敗戦ムードを引きずらないことが重要となる。

http://hochi.yomiuri.co.jp/soccer/jleague/news/20120308-OHT1T00030.htm

しかし、それ以上に衝撃的だったのが、昨年のACL準優勝チームでもあるKリーグ王者・全北現代がホームで1−5と大敗を喫したことでした。韓国ナショナリズム的には、相手の広州恒大の監督が韓国人であったことで衝撃は多少相殺されることと思います。ただ、アジアサッカー的には、ここ数年で築かれてきた〈常識〉が今後覆されていくことを予感させる出来事であるような気がします。


記事入力 : 2012/03/08 08:27
ACLサッカー:全北が広州恒大に大敗

攻撃サッカーの全北、ホームで1−5の大差で敗れる
城南は名古屋とドロー

 波状攻撃(通称「タッコン」)が売りの全北現代が、広州恒大(中国)との攻撃サッカー対決で大敗を喫した。

 サッカーのアジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)は7日、各地でグループリーグの試合が行われ、H組の全北現代はホームで広州恒大(中国)に1−5の大差で敗れた。韓中両国の代表が多数出場したこの試合は、ミニ韓中戦として注目を集めていたが、ふたを開けてみると、結果は外国人選手を擁する広州の一方的な展開だった。

 試合の流れは、前半26分に全北の趙晟桓(チョ・ソンファン)が相手選手のタックルを受けてピッチの外に運ばれたのを機に、広州の方に傾いた。

 前半28分にはクレオ林裕煥イム・ユファン)のパスをカットして先制点を奪い、同40分にはダリオ・コンカがフリーキックで追加点を挙げた。後半に入っても広州は攻撃の手を緩めず、後半23分から30分までの7分間に、クレオ、コンカ、ムリクイが3連続ゴール。中国人留学生たちによる応援団3500人の後押しを受けた広州が、アウェーにもかかわらず大勝を収めた。全北は後半24分、チョン・ソンフンが1点を返し、完封負けは免れた。

 G組の城南一和は、日本で名古屋グランパスと対戦し、2−2で引き分けた。城南は1−2でリードされていたが、後半ロスタイムにエベルジーニョがオーバーヘッドで劇的な同点ゴールをたたき出した。

全州= チョン・ビョンソン記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/03/08/2012030800628.html

記事入力 : 2012/03/08 09:36
ACLサッカー:中国人を掌握した李章洙監督のリーダーシップ

「のどにナイフを突き付けられても八百長はしない」

 「イ・ジャンス」と「リー・ジャンジュ」…。どちらも「李章洙」という同一人物だが、それぞれの名前が与える存在感は全く違う。韓国の「イ・ジャンス」がKリーグで4シーズン司令塔を務めながらリーグ戦で一度も優勝できなかったのに対し、中国の「リー・ジャンジュ」は優勝請負人であると同時に、サッカーの韓流ブームの中心に立つスター監督だ。

 中国で今年12シーズン目を迎える李章洙・広州恒大足球倶楽部監督(55)は自身のチームを率いて7日、全州ワールドカップ・スタジアムを訪れた。アジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)H組の組別リーグに臨む広州の対戦相手は、昨シーズンのKリーグチャンピオン全北現代だ。試合前に李監督は「韓国は中国のサッカーに警戒心を持たなければならない」と話していたが、その警告はピッチで現実のものとなった。

■「重慶・青島の星」

 「Kリーグの自尊心」全北に1−5という衝撃的な大敗を味わわせた李監督は「中国のプロサッカーを代表する気持ちでやって来た」と語った。同監督は波瀾(はらん)万丈の道のりを経て、今や中国プロサッカー界でトップのクラブの監督になった。中国行きを決心したのは今から15年前のことだ。

 Kリーグ天安一和の監督を務めた前途有望な指導者は1996年、40歳のときに突然、中国のプロサッカーリーグに行くと宣言した。周囲の人々に引き止められたが「若いからチャレンジできる」と言って反対を押し切り荷物をまとめた。

 当時、下部リーグに甘んじていた重慶力帆(当時は重慶隆キン〈上に金一つ 下に金二つ〉)足球倶楽部で指揮を執ることになった李監督は、就任3年目の2000年、チームを中国FAカップで優勝に導き、「重慶の星」と呼ばれるようになった。そして02年にも青島中能(当時は青島頤中)足球倶楽部を率いて再び中国FAカップで優勝、今度は「青島の星」になった。李監督は重慶・青島の両市で名誉市民の称号を贈られるほど地元ファンからも愛された。00年には審判の度重なる不公平な判定に激怒して辞表を出したが、重慶のファンは「辞めないでほしい」とチームの合宿所前で涙を流しながらデモを行ったという。

■時には強く、時には優しく

 李監督の成功伝説は、中国からすればよそ者だという弱点を克服して成し遂げたという点から、いっそう意義深い。李監督も当初は複数いる外国人監督の1人に過ぎなかった。外国人監督が初めてチームを預かったとき、主軸選手たちが「監督いびり」をするのは中国サッカー独特の慣習だ。李監督が重慶で監督に就任した際、中国代表の経験がある同チームの看板選手、高峰が事あるごとに反旗を翻した。そこで李監督は球団社長との面談の際に「私と高峰のどちらを選ぶのか」とたんかを切り、高峰はついにチームを去った。

 07年に就任した北京国安足球倶楽部でも同様だった。チームの主軸ストライカーがチームの規則をわざと破って「挑発」に出ると、李監督はこの選手を2軍に落とした後、手放した。選手団を掌握する強力なカリスマ性から「鉄帥(鉄の監督)」と呼ばれる李監督は「お前の命が二つでないなら八百長に加担しろ」という中国の暴力団による脅しにも決して揺らぐことはなかった。

 その一方で、李監督は親近感でチームをまとめた。球団が用意した家ではなく、合宿所で選手たちと苦楽を共にしたのだ。選手たちは打ち解けてふざけて冗談を言い、李監督を「大哥(兄貴)」と呼んで慕った。「お父さん」と呼ぶ選手もいた。

■アジアでもトップの座を狙う

 「チャイナ・ドリーム」を成し遂げた李監督にとって最大のピンチは北京国安にいたころだった。 07年にチームをリーグ2位に押し上げた李監督だが、09年9月に突然更迭された。選手起用に干渉するチーム首脳部との摩擦が主な原因だった。しかし、すぐに新たなチャンスが訪れた。09年に八百長で2部リーグに降格された広州のチームを、中国最大の不動産開発企業グループ「恒大」が買収し、李監督に指揮を任せたのだ。

 広州恒大は李監督の就任以来、10年に2部リーグで優勝、昇格1年目の昨年には1部リーグ優勝を決め、一気に中国トップのクラブになった。ブラジルリーグMVPを獲得したダリオ・コンカ=アルゼンチン=を移籍金1000万ドル(約8億1100万円)、ムリクイ=ブラジル=を同350万ドル(約2億8400万円)で迎え入れ、鄭智、孫祥ら中国代表選手を多数入団させるなど、球団は投資を惜しまなかった。それだけに個性の強いスター選手たちを一つにまとめる李監督のリーダーシップが光る。

 李監督は選手たちに絶えず緊張感を与えた。昨シーズンに李監督が導入した奇抜なインセンティブ制度も、選手たちを刺激する好材料となっている。勝てば500万元(約6400万円)の報酬がチームに与えられるが、負ければ300万元(約3800万円)をチームに罰金として支払わなければならないというものだ。

 今回の全北現代戦では、チームの勝利手当に600万元(約7700万円)、ゴール手当に200万元(約2600万円)が懸けられた。広州恒大の選手たちはこの日、5−1と圧勝し、約29億ウォン(約2億1000万円)のチーム手当を手にした。

 李監督は10年に広州恒大の監督に就任した際、中国を越えアジアを制覇するという目標を掲げた。今シーズンのAFCチャンピオンズリーグは「リー・ジャンジュ」のキャリアに新たな栄光をもたらすことになるのか、期待が高まる。


チャン・ミンソク記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/03/08/2012030800854.html

記事入力 : 2012/03/09 08:28
サッカー:「中国、5年後には韓国より強くなる」

広州恒大の李章洙監督が語る中国サッカーの熱気


広州恒大の李章洙監督

 広州恒大(広州エバーグランデ)の李章洙(イ・ジャンス)監督(56)=写真=は最近、中国サッカーが八百長の泥沼から抜け出すために政財界の全面的な支援を受け、根本的な変化を起こそうとしている、と話した。アジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)で全北を5−1の大差で破り、8日に仁川空港から出国した李監督は「4−5年後には、韓国が中国に一方的な勝利を収めるような時代は終わるかもしれない」と述べた。「やられっぱなしだった中国サッカーが、韓国を打ち負かす時が来た」というわけだ。

 中国の習近平・国家副主席は、海外の首脳との会談でも「中国がワールドカップ(W杯)に出場し、優勝するのが願い」と話すなど、サッカー好きで知られている。中国の指導部がサッカー好きを公言する中、各企業はプロサッカーチームの買収やユースクラブの育成など、サッカーへの積極的な投資に乗り出している。膨大な金がプロリーグにばらまかれ、世界のトップクラスの選手たちも続々と中国に集まってきている。李監督は「4−5年後、中国の若手選手が欧州のビッグクラブへのサッカー留学を終えて帰国すれば、これまでとは様子が変わってくるだろう」と指摘した。

 李監督は最近、中国代表がW杯ブラジル大会3次予選敗退、ロンドン五輪予選敗退など、不振を極めていることについて「偽の試合(八百長)の後遺症が表れているのだろう」と話した。中国のサッカー界は1990年代後半から2000年代初めにかけて、八百長事件が相次ぎ、中国国内での人気が衰え始めた。国民のスポーツとして人気を集めていたサッカーで不正が行われていたことが分かると、中国政府は八百長に関わったサッカー協会の関係者らに重刑を下し、積極的な対応を見せた。当時、中国サッカー協会副会長に懲役10年6カ月、同協会の審判委員長には懲役12年の判決が言い渡されるなど、39人のサッカー関係者に重い刑罰が下された。

 李監督は「昨年は韓国のプロサッカー界でも八百長事件が発覚したが、百パーセント徹底的に捜査したとは思えない。捜査途中であいまいな選手たちだけを処罰したのは問題がある」と残念そうな表情で語った。そして「賭博や八百長はいずれも根本から断たなければ再び発生する。中国政府はこの事件を徹底的に糾明して根絶したため、サッカーが再び信頼を取り戻すことができた」と話した。

 李監督は「八百長試合が横行していたころ、中国の選手たちは八百長によって得る利益が大きかったため、テクニックを磨くなどの特別な努力をしなかった。こうした状況が続いたため、中国のファンにそっぽを向かれた」と語った。だが最近になって八百長事件が終息し、球団も投資を増やすようになったことで、中国のサッカーファンたちは再び競技場に足を運び始めた。

 広州恒大は中国で最も人気のあるチームに数えられる。ホームゲームでは5万人以上の観客が押し寄せる。李監督は「(韓国で行われた)全北現代との試合には、広州から300人以上の応援団が駆け付けたほか、球団側が中国人留学生約3000人を応援要員として募集した」と語った。中国では、広州恒大が移動に7−8時間かかる場所でアウェーゲームを行う際、バス100台を準備してサポーターの移動を支援しているという。

 李監督は「われわれ(広州恒大)がカネで勝利を買ったと言う人々もいるが、プロチームは投資が優先されなければならない。守備ラインは全員中国人選手であり、その実力はKリーグの選手にもひけを取らない」と語った。

チョン・ビョンソン記者

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/03/09/2012030900555.html