ALS治療薬の可能性

元気すぎるほど元気だったのに、この病によって早くに亡くなった人を知っています。

その人は、できなくなってしまうこと少しずつ増えていく様を、克明に書き留めて、残していきました。

できることなら、一刻も早く、治療法が確立してほしい。そう思います。

iPS使いALS抑制 新薬候補物質発見…京大

 全身の筋肉が徐々に萎縮していく難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者の皮膚からiPS細胞(新型万能細胞)を作製し、ALSの症状を抑える治療薬の候補となる化合物を見つけ出すことに、京都大iPS細胞研究所などの研究グループが、初めて成功した。すぐに治療に使えるわけではないが、iPS細胞の技術が、難病の解明や新薬開発につながることを確認した成果で、2日の米医学誌電子版に発表する。

 同グループによると、ALS患者の約9割は、脳からの指令を筋肉に伝える運動神経の細胞内で、遺伝子の働きの強弱を調節する「TDP―43」というたんぱく質が変性し、蓄積することがわかっていた。

 グループの井上治久・准教授らは、50歳代のALS患者3人の皮膚から様々な種類の細胞に変化できるiPS細胞を作製した。さらに運動神経の細胞に変化させたところ、変性した大量のTDP―43を確認。その影響で、運動神経の突起部分が、健康な人より短くなっていたことを突き止めた。

 このALS患者の細胞に、TDP―43の正常な働きを補うことで知られる4種類の化合物を加えたところ、そのうちの一つ「アナカルジン酸」という化合物でTDP―43が減少、突起の長さも2倍になり、健康な人の細胞と同じ長さになった。

 iPS細胞を開発した山中伸弥・京都大iPS細胞研究所長の話「研究所は10年間の目標の一つとして患者由来のiPS細胞を使った難病の治療薬開発を掲げており、一歩前進した。ALSや他の難病の新しい治療薬開発を実現するために、さらに研究を進めたい」

 筋萎縮性側索硬化症(ALS) 脳と筋肉を結ぶ運動神経が徐々に機能を失い、全身の筋肉が動かなくなる病気で、有効な治療法はない。難病情報センターによると、50〜60歳代で発症することが多く、国内には、約8500人の患者がいる。米国では大リーガーのルー・ゲーリッグ選手が発症したことから「ゲーリッグ病」とも呼ばれる。

(2012年8月2日 読売新聞)

http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120802-OYO1T00324.htm