「Webtoons」に見る翻訳の時代性

…そんなに大層なことを言いたいわけでもありません。ちょっと書いてみただけです。

最近、「Webtoons」というアプリをダウンロードして、ちょこちょこ読んでいるのです。

無料漫画アプリNAVER Webtoons日本上陸! - NAVER公式ブログ - NAVERLAND

上の記事タイトルからもある程度は推測できるように、このアプリは韓国のウェブマンガを日本語化した翻訳版を読むためのものです。

ということはつまり、オリジナル(韓国語版)アプリも当然あるわけで、両者を読み比べればそのアップの時間差も一目瞭然になります。

iTunes App Store - 네이버 웹툰 - Naver Webtoons

追記:こちらのまとめは、「Webtoons」をはじめとする韓国ウェブマンガ事情を詳細に説明してくれていて、非常に勉強になります。

韓国の漫画コラムニストが週刊誌以後の韓国ウェブ漫画事情を語る - Togetter


全作品を読んだわけではありませんが、今のところ、個人的には「チーズ・イン・ザ・トラップ」という作品がいちばん気に入っています。大学生活の日常的なもやもやした息苦しさや、過剰な自意識の中のぐるぐるや、クールに見える野郎の内面の案外単純でバカなところや、いろいろよく描けていると感じるところが多いですね。

ちなみに、韓国語オリジナル版のページはこちらになります*1。韓国語版でなら、第1話から最新話までここで読めます。

치즈인더트랩 - 네이버 만화

韓国での人気作を厳選している日本語版「Webtoons」でも人気があるみたいですし、韓国では単行本化もされています。

[인터넷교보문고]치즈 인 더 트랩 시즌 1-2 초회한정 세트

[rakuten:s4life:10030250:detail]


以上が前置き。で、いまアップされている日本語版を67話まで一気読みしたのですが…うーん、この翻訳…。

いえ、日本語の問題ではないんです。問題は、設定のほうです。

これ、ここに出てくる大学生(を中心にした人間関係)の日常って、韓国、もっと言えばソウルの大学に行けばそこらじゅうに転がっていそうな、身近でリアルなものだと思うのですが、日本語版だからってこれをわざわざ東京に置き換える必要があるんでしょうかねえ。

(まあそれを言えば、「登場人物に日本名をつけて日本の話にする必要があるのか」というのが、そもそもの疑問となるわけですが。)

例えば、やたらと休学と復学が話題になることであったり、学費を調達するための苦労の仕方であったり、就職指導でのダメ出しのされ方であったり。細かなことかも知れませんが、ソウルを舞台にするとリアルで共感できる設定が、舞台を東京に移した途端にリアリティのないヘンテコなお話になってしまっているような気がするんですよ。

このムリヤリ感、『ガラスの仮面』に出てくるモロに「横浜」なコマが韓国語版では「釜山」になっていたことを思い出しました。

ガラスの仮面 - しゃべりたがる私のINPUT★OUTPUT

その当時はそれでも「そんなもんか」と思えたのかもしれません*2。でも、この2013年にもなって、「まだベイブリッジも大観覧車もない時代」とそんなに変わらないもんなんでしょうか。

違う国の違う社会の違う常識の中で暮らしている人々がいて、いろいろ違ってはいるけれど、それでもどこか通じあい、共感できるところを感じ取る。韓流史劇すらそのまま受け入れられている昨今、日韓間でそれができないとも思えないのです。

ハッキリ言ってしまえば、「今どきの読者をちょっと舐めてやせんか?」ということですね。ここまできて改めるのも難しいかも知れませんが、いい作品なだけに、余計に「もったいないなあ」と感じた次第です。

*1:2010年7月連載開始ということですから、以前から知っていた人には、ここで私が書いていることは「何を今さら」という話ですね。

*2:「少なくとも釜山じゃない」ことは当時でも明らかでしたでしょうが。