鳥は、鳥以外を見下しているか。

この世には、生き物が3種類います。

鳥と、鳥になりたい人間と、それ以外です。

あなたが鳥になりたがるのは自由ですけど、

鳥になっても、

プレーリードッグの赤ちゃんがいつ何匹生まれたか、わかりません。

そんなこと、鳥にわかるわけがないでしょう。

鳥になったって、わからないことはありますし、

かえってわからなくなることだってあります。

ですからまあ、そんなにじたばたしなさんな。

そういうのは、好き好んでじたばたしたい人にやらせとけば、いいんです。


経済偏重が生んだEU分裂の危機 - 日経ビジネスオンライン

庶民には縁遠い欧州統合

 さて地域の伝統をひときわ重視するこの地域で、「欧州人」としてのアイデンティティーを持っている人は、いるのだろうか。かろうじて欧州人としての「共通意識」に近い物を抱いているのは、EU、欧州委員会欧州議会やグローバル企業で働く人々、外交官、経営団体の幹部、国際問題を担当する議員やジャーナリストくらいだ。つまり大学で高等教育を修了し、社会の上層部に属することによって比較的裕福な生活を送っている人々である。彼らは仕事の性格上、欧州の様々な国へ出張することが多い。さらに、他のEU加盟国の人々と一緒に働くことも多い。彼らにとって、国家間の垣根はどんどん低くなっている。

 つまり欧州統合は、エリートのプロジェクトなのである。各国で日々の生活に追われ、外国で仕事をする機会も少ない庶民の間では、「自分は欧州人だ」という意識は薄い。

 アイデンティティーを共有する上で、言語が果たす役割は重要だ。欧州の知識階層やビジネスパーソンの間では、英語だけでなくフランス語やイタリア語を流暢に話す人は珍しくない。 だが庶民で外国語を自由に操る人は、エリート層に比べて少ない。

 唯一の例外は英語だ。例えば30年前には、フランスの小さなホテルの従業員や、独仏間を走る鉄道のフランス人の車掌は、フランス語以外の言葉をほとんど話さなかった。だが最近のパリのホテルでは、片言ではあるものの英語を話せる従業員に出会えるようになった。就職上有利だという実用的な理由から、英語を学ぶ人が増えているのだ。

 これに対し、英語以外の近隣諸国の言語への関心は、庶民の間で低くなりつつある。言語の習得は、根気と労力を要する作業だからだ。

 ちなみに欧州のエリートの子弟の間ですら、周辺諸国の言語、さらには、人文学に対する若者の関心が急速に低くなっている。人文学よりも、経営学や経済学、数学、工学などを学んだ方が、就職できる確率が高いからだ。欧州は、人文学の揺籃の地である。それだけに欧州のエリートたちの間では、人文学への関心の低下を嘆く声が聞かれる。

 フランスの歴史学者ピエール・ノラは次のように慨嘆する。「ラテン語ギリシャ語、歴史学、哲学、言語学など人文学の伝統は、終末を迎えている。これらの学問はかつて欧州のエリートを結びつけていたが、今や消滅の危機にさらされている。大半の欧州人を結びつける価値共同体がないのだから、欧州の単一の世論というものが成立するわけがない」。言語への関心の低下が、欧州人としてのアイデンティティーの形成を妨げる。

 欧州ではエリートと庶民の間で、「欧州」に関する意識のギャップが拡大しつつあるのだ。この傾向は、2009年末にギリシャ債務危機が表面化する前から既に見られたが、ユーロ危機によってさらに拍車がかかった。