知らなかったわけではないことを、改めて知る。

「新たに知る」だけでなく、折に触れて、様々な角度から「知りなおす」必要のあることは、たくさんあります。

人身売買が横行していては「美しい国」とはいえない!橋下発言が浮き彫りにした日本に潜む女性やアジアの人々に対する醜い差別 - ふっしーのトキドキ投資旬報 現代ビジネス

見にくいところを無限に飲み込むことはできない

 人身売買が行われていて、流れ着いている(おもに)女性がたくさんいる日本。そしてそれを買っている大きな市場がある日本。

 私は投資家ですから現実主義者です。世の中の美しいところやみにくいところも飲み込んでいくし、会社だって美しく理想的で完璧な会社があるわけではありません。そして、それはあなたとおなじです。よいところも悪いところもある。企業や社会に完璧を求めたら辛いし、息が詰まります。また投資家の仕事がなりたたない。でもね、醜いところを無限に飲み込むことはできません。

 売春も買う人がいるから成り立つ。そこに市場があるからです。売る人があるから買うという面もあるけれども、売買春においては多くの場合売り手は弱い。実際に研究によると、「売春婦は最も暴力にさらされている集団であること。それは客からだけではなく、性病に危険にもさらされ、客を選ぶ権利もなく、心的外傷後ストレス障害(PTSD)のレベルは戦士、拷問を受けた人、レイプされた人と一緒」だそうです。

 なかには、自由意志で飛び込んでいる人もいるかもしれないけれども、非常に過酷な職場であるのは事実です。そこで働く人の尊厳を保つこととその状況を是認するかとはまったく別の議論ではないかというのが私の意見です。

 人身売買のない、もっと発言も女性の尊厳を意識できる国にならないものなかな。そうでなければ、株価があがろうとも景気がよくなろうとも良い社会とはいえないのではないか。私は現実主義者だけれども、そのようなものを飲み込んではいきたくはありません。

告発・現代の人身売買 奴隷にされる女性と子ども

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上海でマスクをしているのは「日本の会社員」だけ?! - 日経ビジネスオンライン

 研修が充実している国内の日本企業と違い、海外の日系企業では研修はほとんどなく、現地社員はいきなり「海外の日本社会」に放り込まれる。そんな場では、日本人にとってはごく当たり前の行動が、中国人には意外な受け止められ方をされ、かつ不満を持たれる原因になっているといえる。

 このような話は、たとえば悔しい思いをした陳や困惑した朱から友人へとつながり、「日本とまったくチャネルのない中国人」にも伝聞されていく可能性がある。日本人上司の側にとっても同じことで、駐在員御用達の居酒屋で、つい友人に「まったく、うちの中国人社員がさぁ…」と愚痴のひとつもこぼしてしまうだろう。

 そして、尾ひれがついて、「日本人は〜だから」、「中国人は〜だから」という○○人全体への“決めつけ”となってしまい、ひとり歩きする恐れもはらんでいるのではないかと思う。

爆笑!エリート中国人 (幻冬舎新書)

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橋下大阪市長、風俗業で働くのが嫌なら、他の仕事に就けばいいですか? - 日経ビジネスオンライン

 実際のところ、性行為をサービスとして提供する行為に本当の意味で自発的に就く人はどれくらい存在するのだろうか。もちろん、「風俗は不幸な仕事」という単純な一般化や風俗業に就く人々に対する差別は間違っているが、現時点において風俗業は決して皆が羨む仕事とはいえないだろう。そのような仕事に就くという判断をする背景にはどのような事情があるのか、考えてみる必要があるのではないだろうか。

 子どもの貧困に取り組んでいる人間として、こういった風俗業に就く女性たちの現実について見聞きすることが多いが、少なくとも私が知っている実態はこういうところだ。
•動機としては経済的理由が主だが、一定程度、経済的困窮以外の動機で就く人もいる
•学歴が低く、他の仕事に就くことが難しい人、被虐待歴を持つ人の割合が多い
•コミュニケーションが苦手な人が多い
•始めるキッカケは、知り合いの紹介が多い

貧困は再生産される

 児童養護施設の出身者の中で、結果的に風俗の仕事に就く女性が一定数いるが、彼女らは上のポイントの多くに該当している。児童養護施設の子どもの5人に1人は高校を中退する。

 子どもの多くには親からの虐待経験がある。特に性的虐待を受けた子どもは性関係について倒錯した理解を持ちやすく、施設内でも通っている学校でもトラブルが多い。周囲とのコミュニケーションがうまくできず、仕事を転々とすることも多い。結果としてつながっているのは過去を共有している施設出身者で、そのつながりで「いい仕事があるよ」と紹介されることが少なくない。

 橋下市長が言うように、確かに彼女たちは自分の頭で考えて仕事に就いている。それは当然だ。人は生きるために、自分に与えられた情報の中で、最善の意思決定をするものだからだ。

 しかし、この意思決定は本当の意味での自由意志なのだろうか。他にうまくできる仕事がない状態で、長期的な損失を認識していても、今を生きるために「最善の」選択をせざるを得ない人々について、それが自由意志であると整理することは本当にフェアなのだろうか。

 貧困から意に反して風俗業で働いている女性が多いということであれば、やるべきことは風俗業をなくすことではなく、貧困問題(特に橋下市長がもともと拠点としている大阪は貧困問題が日本で最も深刻な地域の1つである)にこれまで以上に真正面から取り組んで、それをなくしていくことではないだろうか。

働きながら、社会を変える。――ビジネスパーソン「子どもの貧困」に挑む

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