上海市龍華殯儀館・その1:上海殯葬博物館

上海を何度か訪れるようになって、気になっていたことに、「死者に関する施設を市内でほとんど見かけない」ということがありました。

もちろん取るに足らない滞在経験の範囲内でのことですし、魯迅のような有名人のお墓は見かけたのですが、それにしても葬礼や墓地関連で何かを見かける機会が少なすぎるような気がしていました。

そこで出かけたのが、上海市最大の殯葬施設である上海市龍華殯儀館。徐家滙近く、上海地下鉄の1号線と4号線とが交差する上海体育館駅から高架道路沿いに南に十数分ほど歩いたところにあります。この龍華の地にはもともと龍華公墓や龍華烈士陵園といった施設も存在していたようなのですが、龍華烈士陵園は1995年に同じ龍華地区の中でも少し離れたかつての国民党司令部が所在した跡地に移転したとのことです*1。上海体育館から歩くと、上海市龍華殯儀館の手前に大きなIKEAがあるのですが、あるいはこれが移転前の烈士陵園の所在地であるかもしれません。

ともあれこちらの上海市龍華殯儀館、非常に規模の大きい総合殯葬施設となっています。



その中で、本館・事務棟である業務綜合楼の5階に、今回取り上げる上海殯葬博物館が入っています。入場料などは特になく、誰でも見学できるようです。



いくつかの区画に分かれて展示が並んでいます。その展示の内容的な構成を見ると、一般的な「中国の」ではなく、徹底して「上海の」という切り口であることが目を惹きます。


したがって、「伝統的殯葬形式」と銘打ってはいても、その展示は写真に残されているような19世紀以降のものから始まっています。

「四明公所事件」(1874年・1898年)なども伝統パートの展示になります。

この後、近代上海における商業的殯葬業の「畸形的」繁栄から、解放後の殯葬業や殯葬風俗の改革、そして現代化された殯葬をめぐる現況の紹介へ、と展示が続いていきます。



このあたりの解放後のチラシは、時代感が出ていてなかなか興味深いものです。


1980年代以降に新設された墓地の紹介とともに、海洋散骨葬やいわゆる樹木葬が行なわれていることも紹介されています。



全体的に写真展示や文字説明のパネル展示が多く、その意味では刺激にやや乏しい内容であるかも知れません。ただ、近現代上海における葬礼・墓地に関する歴史的な経緯や現状を把握するには、なかなか役に立つ内容であると思います。



追記:関連するリンクを忘れないうちに。

葬送業務の意味づけを考えよう - 火葬研

장박사의 실버와 장례이야기 5 추천할 만한 중국 장례시설 소개 - 실버상조뉴스

上海龙华殡仪馆_百度百科

上海市龙华殡仪馆 - 上海殡葬网

퓨너럴뉴스 - 상해빈장박물관(上海殯葬博物館)

参考までに、龍華烈士陵園については下記のリンクを。こちらについてもいずれ記事にしたいとは思っています。

龍華烈士陵園 - 上海ナビ

上海烈士陵园_互动百科

上海龙华烈士陵园

*1:この移転後の龍華烈士陵園も訪れたことがあるのですが、まだ記事にはしていません。