新国立競技場ができなくて困る人は誰?

森山さんの活動は、ネットでわかる限りはフォローしています。なので、これも明確な意図があって、このタイミングを狙って、具体的な数字をぶち込んできた記事であることはわかります。

ここで書かれている整備費「2520億円」という金額は、下村博文文部科学大臣をして「上限ではない」と言明されていますから、ここからどれだけ増えるか想像もつかない、ってことですね。たかがトラックとフィールドが一面ずつしか取れない競技場に、ですよ。しかも、サブトラックもなしに、です。

新国立誕生から消滅まで1兆円!森山高至氏「恐ろしい未来が待ち受けている」
2015年7月10日6時0分 スポーツ報知

 建物の竣工から解体廃棄まで全体の費用を算出する「ライフ・サイクル・コスト」(LCC)の考えに基づき、建築エコノミストの森山高至氏が2020年東京五輪パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場について試算したところ、1兆円を超えることが9日、分かった。森山氏は「財政的に恐ろしい未来が待ち受けている」と警告した。

 LCCは建設費、維持管理費、光熱費、修繕費、解体処分費などを含めて算出する。民間会社や地方自治体が、ビルや学校が建てられ、解体されるまで全体の費用を把握することで修繕計画などに生かすためのもの。建設費の4〜5倍の金額が目安とされる。森山氏の試算によると、新国立の整備費を2520億円とすると、建設から解体まで1兆80億〜1兆2600億円。五輪後に設置するとされる開閉式屋根の費用約300億円、資材施工費の高騰分を20%とすると、さらに増えて「天文学的な数字」となるという。解体までの50年間の物価上昇等を見込むと、「後世の国民を苦しめることになるだろう」と森山氏は指摘した。森山氏は、早大理工学部、同大学院政経学部卒の1級建築士。新国立建設問題に詳しい。

 なお、新国立建設の事業主体となる日本スポーツ振興センター(JSC)は9日、施工業者と初の契約を結んだ。大成建設に、契約額約33億円で一部資材を発注した。

http://www.hochi.co.jp/topics/20150710-OHT1T50024.html

そもそも、ここは繰り返し確認しておかないといけないですが、新国立競技場なんてなくても、ラグビーワールドカップ東京オリンピックも、競技の開催会場に困ることはないんですよ。ええ、まったく。

以前にも書きましたように、首都圏にはすでに新東京国立競技場(現・横浜国際総合競技場)と新東京ナショナルスタジアム(現・埼玉スタジアム2002)があるんです。東京スタジアム味の素スタジアム)もあります。

ですから、いま新国立競技場に関心が集まっていますけど、「別になくても困らない、どうでもいい施設の話をしている」という基本線は、きちんと押さえておかないといけないんだと思います。

東京五輪招致、37会場・4554億円の全貌明らかに(2013/01/11)|日経アーキテクチュア・プレミアム(ケンプラッツ)



新国立競技場なんてなくても、既存の会場で各種目の競技ができるんであれば、競技者はまったく困らない。競技を観に行く観客もぜんぜん困らない。

で、ガンバ新スタジアム20個分以上のお金をぶっこんでもできるかどうかわからない新国立競技場建設を推進しないと困る人は誰なのか。そこに執着している人の具体名を、消去法で冷静に、あぶりだしていく必要がありますね。

新国立競技場建設費用の換算の仕方:ガンバ大阪単位

負の遺産は造れない 新国立競技場

 今のままでは東京五輪負の遺産となりかねない。新国立競技場の巨額費用と決め方の不透明さは納得できるものではない。まだやり直せるはずだ。

 まるで、結論ありきのようだった。東京都内のホテルで、おととい開かれた国立競技場将来構想有識者会議。新国立競技場事業主体である日本スポーツ振興センター(JSC)に置かれ、さまざまな提言をするはずの場である。

 工事費は基本設計時に千六百二十五億円だったのに、甘い見積もりが災いし、実施設計時には二千五百二十億円に達した。大会後にもろもろの追加工事も予定され、さらに膨れ上がる。

国民の理解得られるか

 ところが、政界、財界、スポーツ界などの重鎮たちから異論はほとんど出ずじまい。国民の理解を得る努力を求める声は一部に聞かれはしたが、JSCの計画を追認し、お墨付きを与えてしまった。

 普通の感覚からはひどく懸け離れている。財源確保もおぼつかないままの見切り発車を憂え、軌道修正を訴えた外部の声は無視された。千兆円を超す借金を抱えながら誰のため、何のための祭典か。

 理解し難い疑問がいくつも残っている。JSCはもちろん、所管する文部科学省も、国民への情報開示と丁寧な説明、合意づくりをないがしろにしてきた結果だ。

 二〇一九年九月に予定されるラグビーワールドカップ(W杯)の日本開催が決まり、旧競技場の建て替え構想も重なった。

 新競技場は開幕戦と決勝戦が行われる主会場となる段取りだ。完成を間に合わせるには十月着工は譲れないぎりぎりの線という。

 けれども、W杯の主会場の目安は六万人以上の収容能力とされていた。とすれば、例えば横浜国際総合競技場日産スタジアム)でも開催できるのではないか。主会場の変更を検討するべきだ。

見直す時間まだある

 そうすれば、新競技場の計画を見直す時間を捻出できる。

 施設のチェックを兼ね、本番の前年に行われるプレ五輪を心配する向きもあるが、日程について知恵を絞る余地はあるだろう。

 加えて、キール(竜骨)と呼ばれる巨大なアーチ構造への強いこだわりである。斬新なデザインは国際公約というのだ。

 しかし、この構造こそが工事費を押し上げ、工期の遅延を招きかねない最大の要因だ。特殊な技術や膨大な資材を要し、発注先もかなり限られているという。

 ただでさえ物価や人件費は高騰しているのに、その上積みとなっている。値段もよく分からずに採用するとは、ずさんというより無謀そのものである。耐震性への懸念も拭えない。

 新競技場の工事費は、当時のレートでロンドン五輪の主会場の四倍、北京五輪の六倍に及ぶ。さらに、完成後五十年間で千四十六億円の大規模改修費も必要だ。この間の収支見通しは、現時点で年二十億円余の赤字と予想される。

 神宮外苑は都心の緑のオアシスである。その歴史や文化の薫りを損ね、景観を壊し、国民に重いつけを回して箱物を造る。かつて繰り返された巨大公共事業の再来のようだ。

 経費を削り、環境に優しい五輪を目指す国際オリンピック委員会の改革理念に明らかに逆行する。

 財源はどうするのか。国と東京都が五百億円ずつ出し合うという。とても足りず、スポーツ振興くじの売り上げや新競技場の命名権の売却益などを当て込んでいるが、それらは皮算用にすぎない。

 子どもからお年寄りまで誰もがスポーツに親しめる環境づくりや、選手や指導者を育てるために使われるべきお金を箱物につぎ込むのは筋違いだ。

 JSCの河野一郎理事長は「われわれのミッションはあのデザインを前提に工事を進めること。やめる、やめないは、われわれが決めることではなく、文科省が判断した」と語った。

 そうならば、政府は出直しを決断するべきではないか。時間は残り少ない。

 東京都は半径八キロ圏内に施設の85%を集めるコンパクト五輪を見直し、二千百億円近くを圧縮した。舛添要一知事はその経費を新競技場に投じるつもりなのだろうか。都民はしっかりと見ている。

http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2015070902000118.html

また、費用の問題はもちろん重要なんですが、あのザハデザインのどこがいいのか、私にはいまださっぱりわかりません。

前にも書きましたが、ザハ・ハディドがデザインした巨大建築物がどんなものなのか体感したければ、MERS騒動もそろそろ収まりつつある韓国の東大門デザインプラザを観に行くのがいちばん手っ取り早いでしょう。キールアーチこそありませんけど、東大門運動場を破壊して一掃した後に造られた、巨大な曲面のせり出し方やアルミ板での表面処理など、新国立競技場でもやらかしそうなものを眼前に見ることができます。

동대문운동장 - 나무위키

【ソウルの風景】東大門城郭沿いの破壊と創造?

wikitree - 사진 모음, 동대문디자인플라자 개관 첫 날 풍경

…バカ建築にしか思えないけどなあ…。


個人的には、森山さんが叩き台として提唱している「初代の明治神宮外苑競技場を現代に復活させる」という案に、魅力を感じるんですけどねえ。好みの問題はこの際措くとしても、ガンバ新スタジアム2個分とちょっと、300億円で収まると見積もられているこの案に対して、「これでは困る」という人には、「何に困るのか」という具体的なポイントを尋ねてみたいところです。

https://www.library.metro.tokyo.jp/portals/0/tokyo/chapter1/31_010.html

https://www.library.metro.tokyo.jp/portals/0/tokyo/chapter1/32_004.html

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