懐風館高校の「染髪強要」をめぐる訴訟の大阪地裁判決 

2017年の記事にした訴訟の地裁判決が出たようです。

blue-black-osaka.hatenablog.com

簡単にまとめれば、「指導そのものには合理性があって違法性は認められないが、指導の結果行なわれた措置は不法行為と認められるから、そこのところは賠償を命じる」ということですか。とすれば、「指導そのものの違法性」や「被告らの判断の合理性」をめぐって原告側は控訴するのも当然でしょうね。裁判を続けるのは大変でしょうけど…。

校則・黒染め指導、違法性は否定 原告側は控訴を検討
米田優人 山田健悟 2021年2月16日 21時33分

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大阪地裁・高裁=2020年10月15日、大阪市北区、米田優人撮影

 茶髪を黒く染めるよう繰り返し指導され、精神的苦痛を受けたとして、大阪府立懐風館(かいふうかん)高校(大阪府羽曳野市)の元女子生徒(21)が府に慰謝料など約220万円を求めた訴訟の判決が16日、大阪地裁であった。横田典子裁判長は校則や黒染め指導を違法とはいえないとし、生徒が不登校となった後、学級名簿に名前を載せなかった学校側の行為などを「著しく相当性を欠く」として違法とし、府側に33万円の賠償を命じた。

 判決によると、生徒は2015年4月に入学。同校には「染色・脱色」を禁止する校則があり、教諭らは生徒に黒く染めるよう何度も指導。「黒染めが不十分」として授業への出席や修学旅行への参加を認めないこともあり、それによって生徒は不登校になったとした。

 判決は、校則について、華美な頭髪を制限することで学習や運動に注力させる目的などから合理的と判断し、茶髪に対する社会一般の認識に変化が認められるとしても、校則の合理性に影響しないと述べ、違法性を否定した。

 教師らの頭髪指導についても「根拠に基づいて生徒の髪の生来の色は黒と認識していた」などとして違法性は認められないとした。

 一方、頭髪指導によって不登校になった生徒が3年に進級した際、学校側が生徒の席を教室に置かなかったほか、学級名簿に名前を載せず、生徒側から抗議を受けた後もこうした措置を5カ月間続けたことについて、教育環境の配慮義務に反するとした。「登校の意思を回復しつつあった生徒は教員らに不信感を募らせ、卒業まで高校に行けない状態が続いた」と指摘し、「生徒に与える心理的打撃を著しく軽視し、著しく相当性を欠く」として、学校側の裁量を逸脱して違法とした。(米田優人)

訴訟がきっかけ、注目された「ブラック校則」

 「大人は自由にできることを高校生だから規制してよい、校則は問題ないというのはおかしい」。原告側代理人弁護士は判決後の取材にこう語り、控訴を検討する意向を示した。

 今回の訴訟は国内外のメディアが取り上げ、議論を呼び、理不尽な校則や合理性がない指導を指す「ブラック校則」が注目され、NPO法人の理事長らがこうした校則をなくすプロジェクトを立ち上げた。発起人の須永祐慈さんは判決を読み、「過去の判断を踏襲し、この校則を違法でないとしてよいのか。裁判所の認識が時代に合っていないのでは」と批判した。

 一方、府教育委員会は控訴しない方針。酒井隆行教育長は、名簿に生徒の名前を載せなかったことを「許されるものではない」とし「今後、このようなことがないよう取り組む」とコメントした。

 吉村洋文府知事も報道陣に、名簿から削除したのは間違いとしたが「黒髪から茶髪にしたときにダメだよという校則は必要な教育的指導の範囲内」と話した。

 大阪大学の小野田正利・名誉教授(教育制度学)は「教諭らは一方的に黒く染めるよう指導するのではなく生徒側と丁寧に話し合う余地があった」と話した。(米田優人、山田健悟)

https://digital.asahi.com/articles/ASP2J6W8LP2JPTIL013.html

なお、判決前に争点をまとめた毎日新聞の記事はこちら。

「生徒に黒染め強要」地毛の色で主張対立、司法判断は
毎日新聞 2021/2/13 08:00 (最終更新 2/13 08:00) 1679文字

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髪の染色などを禁じた大阪府立懐風館高校の校則。提訴後に改定され、「故意による」との文言が追加された=大阪市北区で2021年2月9日午後11時13分、服部陽撮影

 「黒染め強要」はあったのか、なかったのか――。生まれつき茶色の髪を黒く染めるよう学校から強要されたとして、大阪府羽曳野市の府立懐風館高校に通っていた女性(21)が、約220万円の慰謝料などを府に求めた訴訟の判決が16日、大阪地裁で言い渡される。地毛の色や指導の妥当性を巡り、主張は対立。校則や生徒指導のあり方に一石を投じた訴えの行方は。

 同校は校則で、髪の染色や脱色を禁じている。女性は2015年春に入学後、髪を黒く染めるよう再三指導され、2年生の2学期から不登校に。弁護士事務所に教員を派遣してもらうなどして授業を受け、18年3月に卒業した。

再三の注意で不登校、席なく名簿も削除

 女性側は入学時、生まれつき茶髪で、黒染めを強要しないよう母親が配慮を求めていたと主張。教諭から4日ごとに髪の色を注意され、「黒染めしないなら学校に来る必要がない」などと言われて不登校に追い込まれたとして、「生徒指導の名を借りたいじめだ」と訴えている。

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大阪地裁が入る合同庁舎=大阪市北区で2020年11月27日、服部陽撮影

 一方、府側は入学前説明会で、頭髪への配慮を求めた生徒はいなかったと指摘。教諭が指導した際、女性の髪の根元が黒かったことを確認しており、地毛は黒だと主張する。校則に反して茶色に染めていたため指導しただけで、違法性はないと反論している。

 不登校になった後の対応も焦点だ。女性側は教室に自分の席がなくなり、名簿からも削除されたことで、「筆舌に尽くしがたい精神的苦痛を被った」と主張。府側は「不登校状態が目立たないようにした」と反論したが、府教委は提訴後の記者会見で「不適切だった」と釈明している。

 頭髪指導を巡る訴訟は過去にも起きている。熊本県内の公立中で男子生徒を丸刈りとする校則の違法性が争われた訴訟で、熊本地裁(1985年)が「著しく不合理ではない」とした判決が確定。奈良県生駒市立中の女子生徒が黒染めは体罰だとして市に賠償を求めた訴訟では、大阪地裁(11年)が「教育的指導の範囲内」として請求を棄却、最高裁で生徒側敗訴が確定した。【伊藤遥】

https://mainichi.jp/articles/20210212/k00/00m/040/133000c