生死と力

生者と死者とは、何もせずとも、時の流れに乗ってたゆたっていく。
人生も、その中の様々な営みも、それらの結果として残される何物かも、時に流されていく。
いずれは死に、朽ちて、消えていく。


そうした流れに、力をもって、掉さすことは、できなくはない。
大きな流れからすれば例え微々たるものであっても、流れに抗ったり、逆に押しやったりすることはできる。
そのような力を敢えて行使しようとするのであれば、そのことによって生じる摩擦や抵抗、あるいは怨恨といった結果を引き受ける覚悟が必要なのではないか。
仮に取り返しのつかない結果が生じたとしたら、いくら取り返しがつかなくとも、それでも取り返しをつけなければならない。そのような絶望的な営為を引き受ける覚悟はあるか。
しかも、そのような「取り返しのつかない結果」は、えてして予期せざる結果として到来する。ということは、誰もが取り返しのつかない結果を生じさせる可能性を持っているということだ。
それでも敢えて生きていくことの意味は、今よりもう少し、問われたほうがいいではなかろうか。
安易に生きるということは可能だが、とことん安易に生ききるということは存外に難しい。

記事入力 : 2009/01/21 08:59:37
竜山再開発:反対運動排除で爆発事故、6人死亡
特殊部隊投入時、シンナーに引火
 20日早朝、ソウル市竜山区の地下鉄新竜山駅付近にある再開発地域で、撤去予定になっている商業ビルの屋上に立てこもり反対運動を続けていた住民40人余りを警察が解散させようとしたところ、住民が積み上げたシンナー缶が爆発、炎上する事故があり、住民5人と警察官1人が死亡、24人が負傷した。今回の惨事をめぐっては、警察の取り締まり時の対応が適切だったかをめぐり論議を呼んでいる。

 警察は事故当時、戦闘警察(機動隊)約180人を動員し、住民が籠城(ろうじょう)していたNビルを包囲し、「立ち退かなければ、強制的に解散させる」と警告した上で、午前6時45分ごろに大型クレーンで警察の特殊部隊を屋上に投入した。

 住民らは道路にいる戦闘警察や屋上に投入された特殊部隊に向かい、火炎瓶を投げるなど激しく抵抗した。この際、住民が屋上に積み上げた20リットル入りのシンナー缶数十個に引火し、爆発音とともに瞬く間に火が燃え広がった。その後、住民が屋上に築いた高さ4メートルのトタン製の見張り小屋が倒壊し、火は30分後に鎮火した。

 この火災で警察特殊部隊所属のキム・ナムフン警長(31、巡査長に相当)と住民のイ・ソンスさん(50)、イ・サンリムさん(70)、ヤン・フェソンさん(55)ら5人が死亡した。身元が確認できない住民2人の遺体は、国立科学捜査研究所で指紋とDNA検査による確認が進められている。全国撤去民連合会は身元不明の死者について、ハン・テソンさん(52)、ユン・ヨンホンさん(51)とみられるとしている。事故当時シンナーに引火した詳しい経緯は明らかになっていない。

 これに先立ち、住民らはNビルを撤去するとの情報が伝えられたことを受け、事故前日の19日午前5時半ごろに建物を占拠し、解散させるために建物に入ろうとした建設会社従業員と警察に火炎瓶数十本を投げるなどして抵抗した。

 このため、警察では同日午後7時に金碩基(キム・ソッキ)ソウル地方警察庁長(次期警察庁長)が対策会議を招集し、特殊部隊投入を求める竜山署の要請に従い、翌日未明に住民らを強制的に解散させることを決めた。警察によると、金庁長が特殊部隊投入を最終承認したという。

 現場で籠城闘争に参加し、警察に連行された生存者28人のうち21人は住民ではなく、闘争を支援するために現場入りした全国撤去民連合のメンバーだった。検察は20日、ソウル中央地検に捜査本部を設置し、事故の捜査に着手した。

 李明博(イ・ミョンバク)大統領は同日、事故の徹底した真相究明を指示した。また、野党・民主党は今回の事故を受け、元世勲(ウォン・セフン)行政安全部長官と金碩基・ソウル地方警察庁長の罷免を求めた。丁世均(チョン・セギュン)同党代表は「韓国が民主共和国なのかと問わざるを得ない。今回の状況は強制鎮圧によって起きたものであり、真相を徹底して究明し、責任を負うべき人間が責任を取らなければならない」と述べた。

http://www.chosunonline.com/article/20090121000016

記事入力 : 2009/01/21 09:01:00
【社説】立てこもり鎮圧作戦の悲惨な結末
 ソウル竜山第4再開発地区で、十分な補償金の支払いを求めビルに立てこもっていた立ち退き対象地区の住民らに対し、警察は20日になって強制排除に乗り出した。すると鎮圧の過程で火災が発生し、立てこもりを続けていた住民5人と警察官1人が死亡、さらに警察官17人、住民6人が重傷を負った。住民らは5階建てビルの屋上で鉄パイプと鉄板を結び付けてバリケードを築き、その中に立てこもっていた。警察はクレーンを利用して特殊急襲部隊(SAT)員を乗せたコンテナ二つを屋上に引き上げ、鎮圧に乗り出した。屋上まで乗り込んだ隊員と、立てこもりを続けていた住民がにらみ合いを続けていたところ、バリケードの中から突然火の手が上がって崩壊し、今回の惨事が起こったのだ。

 5階建てビルの屋上とバリケードの中には、シンナーが詰められた缶数十個が準備してあったという。シンナーはいったん火が付くと激しく炎を吹き出す引火性の強い物質だ。住民側は火炎瓶や空気銃で警察の放水に対抗し、どちらも激しい興奮状態にあった。三十数人の興奮した住民と数百人の警察官が一度にもみ合えば、何らかの不祥事が起こることは当然予想できた。住民がビルを占拠したのは前日の19日午前5時30分ごろで、特殊急襲部隊が投入されたのはそれからわずか25時間後だ。この短い時間に特殊急襲部隊を投入する必要があるほど事態は急迫していたのか、という疑問は今も残る。鎮圧に乗り出す前に、現場にシンナーが保管されていたことを警察が把握していたのかも疑わしい。

 これまで警察は今回のような事件が起こると、まずは説得を行って事業主側との交渉をあっせんするなどの努力を行ってきた。2003年にソウル市銅雀区上道洞で起こった立てこもり事件でも、立ち退き対象となった住民は今回のようにビルの屋上にバリケードを築き、手作りの銃まで発砲して1年半も立てこもりを続けたが、結局は対話によって解決した。05年に京畿道烏山の宅地開発地区で立ち退き対象となった地区の住民が立てこもりを行った際にも、警察が強制排除に乗り出したのは54日が過ぎてからだった。鎮圧とはいっても、住民側が肉体的、精神的に疲労して抵抗が難しくなるまで様子見を続けたため、不祥事が起こることなく事態を収拾できた。

 再開発地区から立ち退きを要求された住民が抗議行動を行う際には、極端な行動に走ってしまうケースが非常に多い。彼らは多額の権利金を支払って店を開き、その上毎月の家賃まで支払っている。彼らなりに多額の資金をつぎ込んできたのだから、立ち退きを求められた際、一方的に提示された補償の額に納得し、おとなしく引き下がることはほとんどない。竜山第4再開発地区でも、そこで自営業を営んできた住民890人のうち、14%に当たる127人が補償は十分でないとして反発してきた。ソウル市内では今後26地区219区域でニュータウンの開発計画が進められる。これらの事業を行うに当たっても、立ち退き対象となる住民らが一方的に損害を被ったという思いを抱くことがないよう、交渉は慎重に行う必要がある。

 今回の鎮圧作戦に当たっては、次期警察庁長内定者の金碩基(キム・ソッキ)ソウル警察庁長が直接承認したという。特殊急襲部隊はソウル警察庁の直轄部隊だ。警察は違法な暴力デモなどに対しては、法と原則に従って秩序を守らなければならない。しかし今は経済危機の中にあり、国民の生活も非常に苦しくなっているはずだ。今年1年間は労使対立、圧力団体による激しい要求、階層間対立などが数多く起こることも容易に予想できる。警察の強硬な態度や鎮圧作戦などで火の手が上がると、その影響は社会の見えないところに渦巻く不満や不安などといった引火物に燃え移り、社会全体を燃やし尽くす結果をも招きかねない。そのため政府は一丸となって社会安定政策を提示すると同時に、警察も知恵を絞って慎重に対応する必要があるだろう。

http://www.chosunonline.com/article/20090121000017