できることなら少しでも早く、この場をあなたたちに譲って、私自身は去らなければならない。
そのことは、わかっています。
そうしたいです。
けれどもそれは、あなたたちに先立って、道を拓いていくことを、伴わなければなりません。
私自身が行く当てを失って、行き倒れて野垂れ死ぬ。
ということだけで済むのなら、それはまだ私だけのことですが。
あなたたちをそのような道に引き込むわけには、いきません。
물귀신になるのは、私だけで充分です。
そして、そうである以上は、まだそうなるわけには、いきません。
私はまだ、遺すべきものを、遺していない。