古本屋で、ふと鷺沢萠の名が目に入った。
自殺した当時、その理由については様々に取り沙汰されたが、遺書もなく、仕事や友人関係での悩みも周囲に心当たりはなかったと言う。どっちにしろ、ホントのことなんてわかるはずもない。
ただ、周囲が思っている以上に、死は彼女の身近に在ったんだろうな、と想像するのみである。
死は私の身近にある。いやむしろ、私はすでに死んでいるのではないか。
そう考えるのは、狂気の発現なのだろうか。
けれども、もしかしたら、死を死と見なせないこと、自己や他者を適切に死なせられないことのほうが、よほど狂気なのではないか。
- 作者: 渡辺哲夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/08
- メディア: 文庫
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