以前にも紹介したことのあるこの本。
- 作者: 小野田衛
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2011/09/01
- メディア: 新書
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KARAに関しても当然言及されていて、しかもいろいろ参考になるところが多かったのですが、その中には留保したくなる部分も若干ないではありません。主には次の2点です。
- ・「KARA事態」の影響で、韓国での人気を回復させるのは難しいであろうということ。
- ・日本での活動に伴って、音楽性を急速に日本に合わせてきているということ。
前者については、「STEP」のヒットによって、著者にとっても私にとっても幸いなことに*1、今のところこの予測は的中しているとは言い難いです(将来的にはもちろんわかりません)。また、後者についてもその認識は必ずしも正確ではないのかなあ、という気がしています。
「KARAの音楽とは何か?」と考えてみると、ごく大雑把に見て3つの時期への区分が必要なのではないかと思います。
1. 2009年以前:試行錯誤の時期
アルバムで言うと、これらの時期になります。
- アーティスト: Kara
- 出版社/メーカー: EMI Music Korea Ltd
- 発売日: 2007/03/29
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- アーティスト: KARA
- 出版社/メーカー: DSP MEDIA KOREA
- 発売日: 2011/02/23
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Kara 2nd Mini Album - Pretty Girl(韓国盤)
- アーティスト: Kara
- 出版社/メーカー: Mnet Media
- 発売日: 2008/12/04
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Kara 2nd Mini Album - Pretty Girl (スペシャル・エディション)(韓国盤)
- アーティスト: Kara
- 出版社/メーカー: Mnet Media
- 発売日: 2009/02/20
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Kara 2集 - Revolution (通常版)(韓国盤)
- アーティスト: Kara
- 出版社/メーカー: 韓国
- 発売日: 2009/08/03
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成功だったとは言い難いデビューに加え、メンバーの入れ替わりなどで、出だしからいきなり苦難に直面したKARAは、この時期、芸能活動もさることながら、音楽的にも方向性が定まらず、試行錯誤を繰り返していたように思います。
そのような中、上昇のきっかけとなったのは「Rock U」から「Pretty Girl」「Honey」「똑 같은 맘」と流れる「王道アイドル路線」でした。今から思えば、2009年末のこの舞台(SBS歌謡大展)は、選曲といい、パフォーマンスといい、そうした路線を象徴するものだったように思います。
いっぽうで、「Break It」からの流れも捨て切っていたわけではなく、「Wanna」などはこっちの流れから生み出されていきます。こうした路線の併存は、「軸が定まっていない」と言えなくもないのですが、結果的にKARAは、「王道アイドル」ではなく、こちらの路線から、次のステージへと飛躍していきます。その飛躍を呼び込んだのは、言わずと知れたこの曲です。
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2. 2010年以降:「Kライン」の確立
2009年にトップクラスのガールズグループとしての地位を確立したKARAが、2010年初めに世に出したのが「Lupin」でした。ここから、「jumping」そして「STEP」とつながっていく韓国活動のタイトル曲は、それまでの試行錯誤を踏まえつつも、それとは異なる境地を切り拓くものでした。
Kara 3rd Mini Album - Lupin(韓国盤)
- アーティスト: Kara
- 出版社/メーカー: Mnet Media
- 発売日: 2010/02/19
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- アーティスト: KARA
- 出版社/メーカー: 韓国輸入盤
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KARA / [STEP], 3rd Album, Special Edition(韓国輸入盤)
- アーティスト: KARA
- 出版社/メーカー: CJ Media
- 発売日: 2011/09/12
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論より証拠、上で観た「SBS歌謡大展」の2010年のステージがこれです。
ここからKARAを見れば、「STEP」での2011年カムバックは、見る者に大きなインパクトを与えつつも、基本的には韓国での活動路線を継続したものだと言えるでしょう。
3. 2011年:「Jライン」の形成
2010年8月に「ミスター」で日本デビューを果たしたKARAは、11月のセカンドシングルに「ジャンピン」をチョイスしました。この2曲は、2009年・2010年の活動曲の日本語バージョンという位置づけになります。つまり、この時点では、言葉以外の音楽性の面で日韓での違いはありませんでした。
- アーティスト: KARA
- 出版社/メーカー: ユニバーサル・シグマ
- 発売日: 2010/08/11
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- アーティスト: KARA
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しかし、2011年に入って、KARAの日本での活動は、韓国でのそれとは違う独自性を発揮するようになってきます。「KARAのJ-Pop化」と言われるのは、このあたりの展開を指していると思われます。
- アーティスト: KARA,Natsumi Watanabe,Simon Isogai,Yu Shimoji,Hwang Seong Je,Kimzart
- 出版社/メーカー: ユニバーサルミュージック
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- アーティスト: KARA,Yu Shimoji,PA-NON,Hwang Seong Je,Han Sang Won,Lee Sang Ho,ArmySlick
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ただ、それまでのKARAの音楽を振り返ってみれば、そこには断絶よりもむしろ継続性が見えます*2。日本語でのレコーディングを完璧にこなし、セールス的にも成功を収めたという表面的なことに目を奪われがちですが、試行錯誤期の数々の経験を過去のものとして封印せず、韓国での活動と異なる面を押し出した音楽の展開につなげていったところに、少女時代にも他の韓国ガールズグループにもない、KARAの独自な強みがあるのではないでしょうか*3。いま振り返ってみれば、この展開にはきちんとした戦略的な裏打ちがあったのだと思います。
その意味で、「KARAの音楽」には、独自のカラーというものがあまり見えないとも言えるでしょう。アイドルもできる、ハードなダンスもこなせる、バラードも歌いあげられる。そして韓国語でも日本語でも歌いこなせる。タイトル曲のラインは日本と韓国とでは違っていますが、「どちらを選択するか」ということではなく、「それらをすべてひっくるめてKARAの音楽」ということになるのでしょう。
そこでKARAの独自性があるとすれば、もしかしたらそれは、音楽のカラーに関する無色透明性なのかも知れませんし、あるいは音楽性以外の部分なのかも知れません。
いずれにせよ、日韓間が音楽情報的にはボーダレスになっている昨今、韓国での活動は日本にも伝わりますし、日本での活動も韓国には伝わります。とすれば、韓国での楽曲を「日本語版」としてリメイクしてリリースしていくことの意味は(その是非とは関係なく)将来的にどんどんなくなっていくのではないかと思います。
事実、KARAのCDやDVDの中は、全編韓国語のまま日本で発売されて(=単なる輸入モノではなしに)実際に売れているものが、これだけあります。
- アーティスト: KARA,Han Sang Won,Lee Dong Su,HAN JAE HO,Song Su Yun,Lee Ju Hyeong,Kim Seung Su,Kim Bo A,Kim Gi Hyeong,An Jun Seong
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- アーティスト: KARA
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- アーティスト: KARA
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KARAが「Pretty Girl」や「Lupin」を日本語版でリリースしなかった*4のは、その意味で時代を先取りする判断だったのかも知れません。そして、そうした時代を的確に掴んで「先を見た」活動ができるところまで到達しているのは、韓国ガールズグループではたぶんKARAだけです。
今後、こうした流れがどう展開していくかについては、私にはわかりません。ただとりあえず、「KARAのJ-Pop化」というのがいささか一面的な見方であるということを、個人的に確認したかっただけです。
ついでに蛇足を言えば、この2011年、KARAの活動を総括する一曲を挙げるとしたら、この曲しかないでしょう。図らずも、「KARA事態」という最大の危機と、「URAKARA」の最終撮影のときに遭遇した東日本大震災への思いがこもったこの曲、日韓の枠を越えて共有されたKARAを象徴する、2011年のベストソングだと思います。