鉄道ストライキと朴槿恵政権

個人的な事情からも、年末年始に入る前にどうにかして解決してもらいたいのですが、なかなかその目途が立たないようです。

この件、ハンギョレ朝鮮日報の社説を並べてみると、この「陣営論理」的対立の打開に向けて、誰が口火を切るべきだと考えられつつあるか、少し透けて見えてきます。

[社説]民主労総への乱入、そこまでやるのか
登録 : 2013.12.22 23:55 修正 : 2013.12.23 00:05

 警察が民主労総の事務室に破壊して押し入る場面を見て、浮んだ思いは政府の選びうる道は果たしてこれしかなかったのだろうかと言う複雑でむなしい気持ちだ。

 このような極端な方法は他の選択肢が完全に行き詰った時だけに使うものだ。だが鉄道ストライキのケースは第3の解決策はいくらでもある。政府は鉄道を民営化しないと言い、労組は信じられないと言う。その溝さえ埋めれば良い。ビョン・ジェイル民主党議員が提出した鉄道事業法改正案はそんな解決策の一つだ。 鉄道に競争体制を導入しても民営化禁止は法で禁じておき、誤解と不信を解消しようというものだ。教授たちで構成される学術4団体が、社会的議論機構を作って話し合おうと提案したのも傾聴に値する内容だ。

 それなのに仲裁策は最初から省みず、超強行手段だけを駆使する姿を見せられると、民営化を推進するというのが本心か、それともこの機会に民主労総を踏みつぶそうという意図としか解釈できない。

 そうならば朴槿恵政府の民主労総強制進入は1979年の新民党舎乱入事件と一つも違うものではない。同年8月に新民党本部に武装警察が入り、座り込みをしていたYH貿易の女性労働者172人を無慈悲に強制連行したが、その時に動員された警察官は1000人だった。

 今回は何と5500人を越えた。当時は新民党議員が警察に胸ぐらを捕まれ、引っ張られて行くなどの見せしめにあったが、今回も野党議員らが侮辱的な扱いを受けた。座り込んでいたキム・ギョンスク氏が飛び降りて死亡する事態となったが、今回の鎮圧の場合も、建物の構造が複雑で狭い階段と古い欄干があり、ひどいアクシデントが起こりかねないのに、おかまいなしに押し入った。

 民主労総は野党第一党にもひけをとらない象徴的な場だ。1987年以後の民主労組運動の象徴であり心臓部だった。そのために敢えて強制的に立ち入ろうという考えを誰も言えなかったのだ。その上、警察が持って行ったのは労組指導部に対する逮捕令状であり、民主労総事務室に対する家宅捜索令状ではなかった。民主労総と労働運動自体を敵に回して抹殺するという宣戦布告としか理解できない。

 その上、あの建物の所有者は京郷新聞社だ。新聞を製作するために記者たちが会議し、取材し、記事を書いている時だった。警察がガラス窓を破って催涙液をまいて、建物全体を阿鼻叫喚の地獄にしたことは言論に対する最低限の礼儀も無視したならず者の仕業だ。新民党本部乱入は維新政権(朴正煕大統領政権)の没落への信号弾になった。まだスタートして1年にもならない政府が、没落への道をたどるというのは、政権だけでなく国民全てにとっての悲劇だ。朴槿恵大統領にはぜひとも理性的になることを望む。

韓国語原文入力:2013/12/22 19:04
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/editorial/616483.html 訳T.W(1242字)

http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/16320.html

記事入力 : 2013/12/23 09:29
【社説】大統領府と与党は支持率低下の理由を理解せよ

 韓国ギャラップが16−19日に実施した世論調査で「朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は職務をしっかりと遂行している」とする回答は全体の48%にとどまった。韓国ギャラップの調査は毎週行われているが、大統領の支持率が大統領選での得票率51%を下回ったのは5月以来のことだ。一方で「(大統領の政策は)間違っている」との回答は41%で、これは大統領就任以来最も高くなった。政府が世論調査の支持率に一喜一憂するわけにはいかないが、今回のような数値に関してある程度の危機意識を持ち、同時に国政全般を再チェックすることは常に必要な作業だろう。

 最近になって支持率が下落傾向にある理由は、与野党の対立が長期化し、なおかつ一層激しくなっている影響で、世論が半分に分かれてしまったことが大きいだろう。さらに鉄道労組によるストをきっかけに広まりはじめた鉄道の民営化問題に加え、医療の民営化問題などがこれに重なったためとの指摘も多い。政府がすでに「民営化しない」と明言し、また実際に民営化が決まったわけでないにもかかわらず「民営化されれば、病院での治療費は10倍に上昇する」といったデマがすでに国民の間に浸透してしまったようだ。

 政府に対する国民の信頼が強ければ、根拠のないデマなどさほど影響しないが、今回の世論調査から分かるように、政府と与党は今、国民の信頼が揺らぎ始めていることを直視しなければならない。大統領に過剰な忠誠を示す一方で、相手に対しては度が過ぎるほど敵対視する政府・与党の姿に、国民が嫌気を感じ始めていることも知っておくべきだろう。政府系企業への天下り人事をあれほど非難していた人間たちが、今になって同じように天下っている現状を見て、国民が一体どう考えるかにも注意を払わねばならない。これは改革という基本路線を変更する必要性があることを意味するわけではない。国民に忍耐を要求し理解を求めるのであれば、政府はその何倍も自制・節制に取り組み、犠牲を甘受して忍耐を続けねばならないということだ。

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/12/23/2013122300621.html

中央日報はもとより、社説では労組側を厳しく非難している東亜日報すら下記のような記事を掲載していることも、韓国内の雰囲気を垣間見せてくれているような気がします。

不信の泥沼にはまった鉄道スト=韓国
2013年12月24日10時10分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]


朴槿恵(パク・クネ)大統領

朴槿恵(パク・クネ)大統領は23日、鉄道労組ストライキに関連して「今、大変だという理由で原則なしに適当に妥協することになれば、韓国の経済社会の未来を約束できない」と話した。青瓦台(チョンワデ、大統領府)で開かれた首席秘書官会議を主宰してのことだ。「難しい時ほど原則を守ってすべての問題を国民中心に解決していかなければならない」とも述べた。鉄道労組執行部を検挙するためにソウル貞洞(チョンドン)の全国民主労働組合総連盟(民主労総)事務室に警察力が投入された翌日のことだ。鉄道ストライキに対する非寛容原則が揺るぎないものだという点を再度強調したのだ。

朴大統領は「いつ挑発するかも知れない北朝鮮や鉄道ストライキ問題、世界的な景気の不況と政界の対立により、国民が色々と心配する」としながら「不便で大変だが、この時期をうまく耐えて過ごせば、むしろ経済社会の持続的発展が可能な基盤を固めることになる」と強調した。国民に不便を甘受してほしいという呼び掛けだ。それと共に「新年は甲午年だが、120年前には甲午改革(1894年から1895年にかけて行われた急進的な近代化改革)があった。120年前の改革は成功できなかったが、今回は必ず大韓民国の未来を切り開き、成功する改革の未来になれるよう首席の方々は使命感を持って努力してほしい」と要請した。慢性的な違法行為と適当に妥協する慣行が「改革」の対象だと目星をつけたのだ。雇用労働部関係者は「鉄道労組の白旗投降を要求したもの」と解説した。

朴大統領のこのような発言はサッチャリズムを連想させる。英国のマーガレット・サッチャー元首相は政権まで屈服させるほど強大だった炭鉱労組の違法ストライキに、妥協の代わりに法の定規を突きつけて解決した。福祉病に苦しんでいた英国の体質はこの時からがらっと変わった。

問題は、政府の実践意志が今後サッチャリズムと同じ効果を出せるかだ。延世(ヨンセ)大学のイ・ジマン教授(経済学)は「合理よりは、いつのまにか左右の陣営論理が労使の場を揺るがす局面になった」として「このような状況では来年、労使リスクが国家経済の最も大きな危険要素になるだろう」と話した。鄭ホン原(チョン・ホンウォン)首相はこの日「水棲発KTXについて3回にわたり民営化ではないと話した」と、もどかしげに話した。労働界や一部政界は「民営化の前段階」として抵抗している。

お互いに信じられないこうした陣営論理は、民主労総に警察力が投入されて政府と労組間の全面戦争の様相へと増幅している。韓国労総は「暴圧的な公権力の投入」としながら、すべての労使政の対話の不参加を宣言した。民主労総と一部市民・社会団体は対政府共同闘争に出る態勢だ。

政府の負担はより大きかった。通常賃金や定年延長に伴う賃金体系改編、勤労時間短縮、時間制雇用創出のような大型の雇用懸案を処理する道が停滞したためだ。これらの事案は労使政間の対話がなければ解決するのが難しい。朴大統領が「山積した労使関係イシューを大妥協を通じて解決していかなければならない。労使政が額を突き合わせて知恵を集めなければならない」と要請したのもこのためだ。雇用部高位関係者は「警察力の投入に伴う全面戦争という伏兵が突出しており(懸案を労使政対話で)克服するのが難しい」と話した。

ともすると政府の労組圧迫がかえって政府を圧迫するブーメラン効果をもたらすかもしれない。今は世論が労組に批判的だが、国民の不便が長引けば政府の解決能力不在が標的になりかねないからだ。亜洲(アジュ)大学のパク・ホファン教授(経営学)は「鉄道ストライキ事態が政府−労組間のチキンゲームに変わりながら対話の窓口が完全に詰まった感じ」としながら「対立が長期化すれば、雇用市場の改革はもちろん公企業改革のような政策も悪影響を受けるかもしれない」と憂慮した。彼は「社会の全部門が対立局面から早く抜け出すことができなければ、国家競争力の弱体化につながってしまう」と警告した。

http://japanese.joins.com/article/780/179780.html

「スト列車」、労政全面戦へ
DECEMBER 24, 2013 07:06

政府と労働界の対立が、全面戦の様子を見せている。 政府は、「例外なき法の原則適用」の方針を改めて強調した。 労働界は、政権退陣の推進や労使政会話への不参加で立ち向かっている。 厳しい寒さのなかでも、「冬闘」の空気は、この上なく白熱化している。

朴槿恵(パク・グンへ)大統領は23日、首席秘書官会議のなかで、「今、厳しいことを理由に、原則無しに適当に妥協すれば、わが韓国経済や社会の未来は約束できないだろう」と述べ、鉄道労組のストと関連し、譲歩する意思がないことをはっきり示した。 朴大統領は、「心安くなく厳しい状況ではあるが、この時期をうまく耐え、乗り切ることができれば、むしろ経済社会の持続的な発展が可能な基盤を固めることになるだろう」とし、「厳しいときほど原則を守り、あらゆる問題を国民中心に解決しなければならない」と強調した。

これと関連し、大統領府の関係者は、「国民の血税で埋め合わせをしているコレイルの赤字を減らすための経営合理化を、労組が食い止めているのが今回のストの核心だ」とし、「既得権労組に屈することなどできない。 コレイルへの革新作業は絶対、止まらないだろう」と話した。

労働界は強く反発している。 韓国労働組合総連盟(韓国労総)は同日午後、緊急の会員組合代表者会議を開き、経済社会発展労使政委員会(労使政委)など、全ての労使政会話機構への参加を中止すると明らかにした。 韓国労総が、労使政委での活動を中止したのは、1999年4月に約1年間脱退したのに続き、13年ぶりのことだ。

国労総は、「一国の労働団体の総連盟に対し、公権力を投入し、暴力を振るう政府が果たしてどこにあるのか」と聞き返し、「労働運動を弾圧すれば、結局、国民の信頼を失うことになるだろう」と警告した。 ムン・ジングク委員長は、「政府が、労政関係に、前向きな態度を示さなければ、会話中止以上の行動に乗り出すつもりだ」と警告した。 韓国労総は、状況によっては民主労総との全面ストの連帯などまで検討している。

政府と労働界が、正面対決へと突っ走っているが、当面、これと言った突破口を見つけるのは難しい見通しだ。 直ちに、民主労総は28日全面ストを行い、政権退陣運動を推進する計画だ。 韓国労総も、来年1月22日、次期執行部の選挙を行う予定であり、その時まで、強硬な空気が続く可能性が高い。 結局、鉄道労組のストが解決しない限り、労政間対立は当面、続かざるを得ないのが現状だ。

大半の専門家らは、鉄道労組のストの正当性とは関係なく、政府がより慎重を期すべきだという意見を見せている。 労使関係の専門家は、「政府の『法と原則』の基調は、それ自体が正しく、支持する国民も多い」とし、「しかし、あえて公権力投入までしなければならないのかを巡り、首を横に振る人も少なくない」と指摘した。 別の労働専門家も、「政府の状況は理解できるが、今後のことを考えれば結局、手にするものより失う物のほうが多いだろう」と予想した。

http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2013122471048