黒田さんの面目躍如、か。

黒田さんの普段の論調からすれば、特に意外だとは思いません。ただ、こんな風に第三者から紹介されることは、そう言えばあまりなかったような気がします。

「そんなの」が「ブーム」になっている中、今この時点で読む価値と意味のある記事でしょう。

嫌韓は日本の韓国化」産経の保守派論説委員嫌韓ブームを批判
2014.07.10

 “嫌韓”がブームだ。書店には韓国がいかにひどい国かを書いた「嫌韓本」が何種類も平積みされ、ベストセラーも続々誕生。雑誌や夕刊紙も毎号のように韓国批判を展開している。

 その内容もすさまじい。単行本は「韓国人は息を吐くように嘘を吐く」「韓国は売春婦の輸出大国。日本と米国には数万人単位でいる」というような記述であふれ、雑誌・夕刊紙は、「反日韓国の暴走が止まらない」「竹島の次は対馬を狙っている」など、韓国の反日の高まりを危機的に報道。朴槿恵大統領に対しても「無能力」「おばさん外交」と容赦のない罵詈雑言を浴びせかけている。

 これらの記事を読んでいると、韓国は反日一色で対話の姿勢もなく、いつかは竹島だけではなく日本の国ごと乗っ取られてしまうのではないか!?という恐怖さえ膨らんでくる。

 ところが、こうした日本の嫌韓ブームに対して、意外な人物から批判が飛び出している。その人物とは黒田勝弘氏。日本のマスコミでは最も韓国に批判的なスタンスをもつ産経新聞のソウル駐在客員論説委員で、30年間にわたって韓国問題を取材してきた典型的な保守派韓国ウォッチャーだ。

 その黒田氏が今年2月、韓国で最大部数を誇る保守系新聞「朝鮮日報」が発行する週刊誌「週刊朝鮮」で、こんな指摘をしているのだ。

「現在(の日本)は韓国にかんするすべてのことが気に食わないといった『韓国たたき』が流行っている。『韓国は売春大国であり、強姦天国』だとか『不良食品があふれる国』『トイレにいって手を洗わない男が多い』『課外地獄で子どもたちの自殺が急増』『サムソンも危ない』など、悪い点だけ指摘する本が次々にベストセラーになっている」

「韓国では以前から『日本の失敗は韓国の喜び』だった。これがいまや『韓国の失敗は日本の喜び』になったようだ。私はそういう風景をユーモアで『日本の韓国化』と言うのだが、このような日本の言論の低質化は見るに耐えない」

 これまでずっと韓国の反日ナショナリズムを批判してきた人物が、ここにきて日本の反韓嫌韓を憂えているというのは意外だが、黒田氏から見ると変わったのは、日本のほうらしい。

「年末年始に5回、日本へ帰ってきた。講演、セミナー、テレビ出演のためだったが、韓国を嫌う反韓感情に驚いた」

「私は韓国で『日本を代表する極右言論人』『妄言製造機』などと言われているが、日本に行って韓国人、韓国社会の実像、対日感情などを紹介すると『韓国に対して融和的すぎる』『韓国批判が足りない』『親韓派に成り下がった』『黒田記者は韓国の対日工作員ではないか』などと、むしろ批判を受ける」(同記事より)

 つまり、嫌韓ブームによって、日本がかつての韓国のようにエキセントリックになってしまった、というのである。

 一方、韓国のほうは日本で報道されているように必ずしも反日の空気が高まっているというわけではないらしい。黒田氏は今年5月30日に放映された『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)「激論! 反日嫌韓、ド〜する!日韓関係」に出演した際にこう語っている。

「僕は30年以上、韓国に住んでいますけれども、一般の人々は反日の感情は後退していますね。我々が、日本語を使っても問題ないし、韓国のみなさんは日本のものが大好きだし、村上春樹の新作が出れば、韓国の書店に行列ができるし、韓国のみなさんは日本に対する親近感が日常的にはある。(中略)今、日本の反韓のほうが非常に目につくのですけれども、韓国における反日的な情報、ニュースばっかりが入って、それでイメージしているということはあります」

 日本の反韓感情の高まりは、韓国の反日があるからこそ……と思いきや、全く逆で、韓国の一般国民は冷静なのだ。

 別の全国紙のソウル特派員も「日本と違って、韓国のベストセラーランキングには反日嫌日本などはランキングしていません。ただ、韓国の政治家や一部のメディアは反日のポーズをとっているので、日本のメディアがそれを大きく取り上げて、反韓嫌韓のネタにしているというのが実情でしょう」と語る。

 日本のメディアや出版社がここまで嫌韓に躍起になっているのは、ずばり「嫌韓ものを出せば売れるから」(出版関係社)だ。元時事通信ソウル特派員という経歴の室谷克実氏が書いた『呆韓論』(産経新聞出版)は発売2か月で20万部を超えるベストセラーになったし、匿名の韓国人歯科医師が書いたという『韓国人による恥韓論』(シンシアリー/扶桑社)も10万部を超えている。雑誌も「嫌韓」記事を掲載すると、売り上げが 2割アップするという話もある。

「出版不況の中で、嫌韓は数少ない売れるコンテンツですから。各社ともとにかく中身なんて二の次でどんどん出そうとする。それで、同じ著者に同じような内容の本が何冊も出版されている。2000年代にブームになった『嫌韓流』(山野車輪晋遊舎)の使い回しのような内容の本や、陰謀論のようなトンデモ本もけっこうあります」(出版関係者)

 一部の過激な嫌韓論者と売らんかな主義のメディアによって黒田氏のいう「日本の韓国化」という事態を招いているとしたら、まったく皮肉としかいいようがない。

 ちなみに黒田氏は、嫌韓反韓感情に流されずに、韓国を利用、活用して冷徹な実用主義外交をしようという「用韓論」を提案している。

「日本の反韓ネット住民の間では『韓国にはイライラする。離れて住みたい』という『離韓論』があふれている。日本のテレビインタビューでも同じような質問が出るので、私は次のように答えた。『韓国は引っ越しできない相手だ。これを機会に日本において韓国はプラスマイナスを含めてどのような価値がある相手なのか考えてみたらどうか。その結果で対処すればいい』」(同記事より)

 こんな冷静な意見が「韓国の対日工作員」よばわりされるのだから、日本の言論状況は相当なところまできているといっていいだろう。

(エンジョウトオル)

http://lite-ra.com/i/2014/07/post-219-entry.html

この話、以前にクリップした、中国の書店の「反日(のなさ)事情」について書いた記事とも通じるものがありますね。

上海だけではないその書店事情

韓国にしても中国にしても、「実際のことを自分の目で見てからものを言う」ということが、必要なのではないでしょうか。

当たり前のこと過ぎてアホみたいですけど。