鹿島アントラーズの経営権譲渡

なるほど。そうですか。

この件、カギになっているのは日本製鉄の意向ですよね。鹿島アントラーズはもともと住友金属のチームですから、新日鉄が主導権を握って合併した日本製鉄としては、経営しているというよりは「引き取って預かっている」という感覚があったかもしれません。黒字経営とは言っても収益をもたらすとまでは言い難いですし、製鉄会社という業態でJリーグの宣伝効果をどれだけ有効活用できるのか、などの点を考えれば、譲渡先を探すという選択も理解はできます。

ま、そもそも、新日鉄と言えば、名門だったあの男子バレーボール部をサッサと切り捨てた企業ですしね…。

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とは言え、鹿島アントラーズという名称やホームタウンを変更しないという条件で譲渡するという措置は適切ですし、支持できるものです。

鹿島の経営権をメルカリ社が獲得 J理事会で承認
[2019年7月30日16時45分]

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ゴールを決め喜ぶ鹿島のジーコ。手前はアルシンド(1993年5月16日撮影)

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鹿島のレジェンド小笠原満男(右)と内田篤人(2018年1月9日撮影)

J1鹿島アントラーズの身売りが30日、決まった。メルカリ社(東京都港区)が鹿島の株式を61・6%取得したことが発表された。鹿島の親会社・日本製鉄と合意し、同日にJFAハウスで開かれたJリーグ理事会で報告され、承認された。

村井満チェアマンは「地域を大切にしながら世界に伸びていくクラブに成長してほしい」と話した。

メルカリ社は一昨年の4月に鹿島とオフィシャルスポンサー契約を締結した。フリーマーケットアプリの運営を手がけるIT企業で、鹿島の筆頭株主となり、経営権も獲得。この日の午後にJFAハウスで同社・小泉文明社長、日本製鉄幹部、鹿島・庄野洋社長が会見する。

クラブの前身、住友金属時代から73年間にわたり経営母体として支え続けた日本製鉄は、株式11%を残し、今後もスポンサーとして鹿島に関わっていく。残る株式は地方自治体が10・8%、その他企業が16・6%。

◆株式会社メルカリ 13年2月に株式会社コウゾウとして創業し、同年11月に現在の社名に変更。18年6月に東京証券取引所新興市場マザーズに株式を上場した。事業内容はスマートフォン向けフリマアプリ「メルカリ」の企画・開発・運営。所在地は東京都港区六本木。代表者は山田進太郎代表取締役会長兼CEO。

https://www.nikkansports.com/soccer/news/201907300000466.html

鹿島ホーム守りメルカリ身売り 「三方良し」の経営
[2019年7月30日20時57分]

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鹿島ジーコTD(2018年12月11日撮影)

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鹿島の庄野洋社長(中)、日本製鉄の津加宏執行役員(中央)と並んで会見を行ったメルカリ社の小泉文明社長兼COO

フリーマーケットアプリ大手のメルカリが鹿島アントラーズの経営権を取得することが30日、決まった。

この日、親会社の日本製鉄が保有していた株式72・5%のうち61・6%を、16億円でメルカリに譲渡する契約が結ばれた。日本製鉄、メルカリ、鹿島の3社は都内で会見を開き、鹿島の今後の方針について説明した。

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新しい鹿島が誕生する。17年からスポンサーを務めてきたメルカリが、鹿島の親会社になる。メルカリの小泉文明社長は、父が鹿島のホームタウンである旧麻生町(現在は行方市)出身で、自身もJリーグ発足当時からスタジアムへ足を運んでいたファン。両社はこれまで何度も話し合いを重ねており、ホームタウンを移転せず積極的に地域貢献を行うこと、鹿島の伝統を尊重した経営を順守することなどが、経営権譲渡の決め手となった。

メルカリは6月期の連結決算で7期連続の赤字を計上しているが、これは新規事業への投資を行っているから。資金調達も順調といい、鹿島を子会社化する上で問題がないことは、日本製鉄も精査済みという。

メルカリの小泉氏も「今の経営陣が作ってきたすばらしいチームがある。これまでアントラーズを経営してきた方たちの延長線に、テクノロジーをアドオン(付加)する考え方でいきたい」と説明した。加えて「チーム強化よりビジネスの部分で回してきたい」と、あくまでかじを取るのは、ピッチ外の事象であることも強調した。

具体的に、メルカリが鹿島の親会社となることで、双方にどんなメリットがあるのか。メルカリの主要サービスであるフリマアプリ「メルカリ」やスマホ決済サービス「メルペイ」は、利用者層が20代女性だ。一方で鹿島のファン層は40代男性が多い。両者が異なる利用者、ファンを有していることで、相互の乗り入れが見込まれる。ACL王者鹿島の親会社になることは、企業のブランド力向上にももってこいだ。

一方の鹿島にとっては、メルカリのもつテクノロジーを享受できる。広告を例にあげると、実物と映像を融合させた「プロジェクションマッピング」を使った広告を打ち出すことで、これまで広告を出していなかった企業を取り付けることなどを検討しているという。小泉氏の言葉を借りれば「三方良しの経営ができる」ということだ。

今回の決定には、草創期から鹿島とともに歩み、現在テクニカルディレクターを務めるジーコ氏も理解を示したという。8月中には小泉社長が鹿島の社長に就任する見込み。スポーツ専門の動画配信サービス「ダゾーン」の参入で大きく様相を変えたJリーグが、またひとつ新しい時代に突入しようとしている。【杉山理紗】

https://www.nikkansports.com/soccer/news/201907300000877.html

鹿島経営陣「100億で東京」より地元優先/解説
[2019年7月31日7時7分 ]

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鹿島の庄野洋社長(中央)、日本製鉄の津加宏執行役員(左)と会見を行ったメルカリ社の小泉文明社長

フリーマーケットアプリ大手のメルカリが鹿島アントラーズの経営権を取得することが30日、決まった。この日、親会社の日本製鉄が保有していた株式72・5%のうち61・6%を、16億円でメルカリに譲渡する契約が結ばれた。日本製鉄、メルカリ、鹿島の3社は都内で会見を開き、鹿島の今後の方針について説明した。

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今回の発端は、12年10月に新日鉄が住金を吸収合併し、新日鉄住金(現在は日本製鉄)が鹿島の親会社となったことだ。野球やラグビーを応援してきた新日鉄に対し、47年に住金蹴球団設立から72年間も鹿島を運営した住金。スポーツ事業の主導権は新日鉄側が持ち、住金側の意見は反映しづらくなった。鹿島担当の窓口は、役員クラスから部長クラスに下がった。

鹿島は地道な経営努力もあり、年間の営業収益を70億円超にまで伸ばした。親会社の支援なしでもクラブ経営ができるまでに成長したが、その規模を維持するには親会社の支援は無視できない。将来を見据えた親会社からの投資が見込めなくなり不安も募った。そこで新たにサッカーへの理解がある企業を探した。

外資系会社の日本法人も含み、複数の会社から打診を受けた。中には100億円単位の資金を投資する代わりに、地元を東京に移転し、ホームスタジアムを新国立に移すことを要求する企業もあった。そこで一昨年4月にスポンサー契約を結んだメルカリが、地元を維持することを第1条件にバックアップすることを提案した。結局、鹿島経営陣は巨額の資金より地元優先の選択をした。【盧載鎭】

https://www.nikkansports.com/soccer/news/201907310000045.html

100億円で東京(新国立競技場)移転なんて提案に乗ってたら、地獄への道が待ってたでしょうからね。鹿島アントラーズの経営陣はもちろん、日本製鉄もメルカリも賢明な判断をしたと思います。

何度でも言いますが、こんなのに関わってはダメです。

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新国立の後利用、ババは誰が引く
編集委員 北川和徳 2019/7/26 2:00日本経済新聞 電子版

東京五輪開会式を1年後に控えて約9割が完成した新国立競技場の大会後の利用法が迷走を始めた。陸上トラックの撤去を見直し、陸上とサッカーなど球技の兼用にする案が浮上している。

正直言って、あきれてしまった。新国立の後利用に関しては、「負の遺産」としないために関係省庁のワーキングチーム(WT)で1年半以上も議論を重ね、2017年11月にトラックを撤去して大規模な球技専用スタジアムに改修する方針が政府の関係閣僚会議で了承された。官僚や有識者が時間をかけて知恵を絞ったあの作業はいったい何だったのだろう。

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新国立競技場の大会後の利用法が迷走を始めている

陸上競技のためにトラックを残すわけではない。1周400メートルのサブトラックが確保できない状況は変わっていない。トラック撤去にコストがかかるのと、収益が見込めるコンサートなどで使用する際にデリケートな天然芝の上にはステージや重機などを置けないことが、トラックを残したい理由とされる。

最初から分かっていることではないか。WTで議論しなかったのだろうか。とにかく難題は先送り。政治家や官僚が誰がババを引くのかというゲームをしているようにあらためて思った。

トラックがあればコンサート会場としてもっと稼げるといっても、周辺住民への配慮が必要で、利用回数は限られる。屋根がないから天候にも影響される。収益面で大きな改善は望めない。

大会後は運営権を民間に渡したいのだが、国立としての様々な制約や条件の悪さで話がまとまりそうもないため、方針の見直しに追い込まれたのだと想像する。

4年前の新国立の設計変更を巡り、プロ野球チームの約4万人収容の本拠地に転用できるように建設することを提案していたドームの安田秀一社長は「もはやどうにもならない。維持運営費も考えたら、大会後は取り壊した方がよほどいいのでは」とさえ言う。

合理的に考えればそれも妥当な選択肢だろう。商業的な利用は考慮せず、維持管理費を徹底的に抑えて五輪のメモリアルパークとして無料開放する考え方もある。

もっとも誰がそんな決断をするのか。そんなババは誰も引かないのは確かである。

(20年東京五輪まであと364日)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47777310V20C19A7UP6000/