戦没者慰霊碑の継承と公的管理への課題

何故か下書きにスクラップされたままになっていた記事。そのままにしておいても仕方ないし、今も考えるべき問題であることには変わりないと思われるので、あげておくことにする。

民間建立の戦没者慰霊碑、遺族の高齢化で維持困難に…全国に1万6235基
2023/10/15 13:13

 戦没者追悼のため民間によって建立された慰霊碑の老朽化が進む中、維持管理を代わりに行う自治体が出てきている。高齢化で遺族らによる維持が困難になってきているためだ。国も自治体を対象に補助制度を設けて後押しするが、適用対象が限られていることなどから利用は低迷しており、拡充を求める声が上がっている。(森広彰、林華代)

明治~昭和期に建立の12基を集約


建設中の碑を前に「戦争の記憶を引き継ぐ場になってほしい」と語る瀬戸川さん(滋賀県米原市で)=上田尚紀撮影

 「忠魂碑を維持していけるか不安だった。市に引き継いでもらい、ありがたい」。滋賀県米原市の市遺族会・瀬戸川恒雄会長(81)は、建設中の平和祈念碑「平和の礎」を見やりながら話した。

 市内では明治~昭和期、民間などによって忠魂碑計12基が建立された。日清、日露、太平洋の各戦争の戦没者計約1400人を慰霊、顕彰している。

 戦後、碑は市遺族会や住民らが草刈りや掃除をして管理してきたが、基礎がひび割れするなど劣化が進み、倒壊の危険にさらされる。一方で、遺族会員約400人の大半が80歳超となり、維持管理が困難な状況になっていた。

 遺族会から「高齢化で管理が難しい」との声が上がり、市は2021年11月、有識者を加えた市民会議を設け、市民から意見を聞くなどしてきた。22年7月、12基を撤去して祈念碑に集約して平和について考える場を作り、市が管理することを決めた。

 完成は来春で、新設費用約6000万円は市が負担する。平尾道雄市長(72)は「戦争の悲惨な記憶を引き継ぐ場にしたい」と強調する。

 千葉県船橋市は20年、高齢化する遺族会から慰霊塔の「寄贈」を受け、市が所有者となって維持管理を引き継いだ。

日本遺族会の会員数減少、慰霊碑の管理「不良」多く

 民間の慰霊碑の管理は主に遺族と住民が担ってきた。

 しかし、全国団体の日本遺族会の会員数は、1967年の125万世帯から2019年には57万世帯まで減少。一方、厚生労働省によると、民間建立の慰霊碑は全国に1万6235基(19年4月時点)あり、うち管理状況について「不良」は228基、「やや不良」が552基あった。管理者が確認できない「不明」は1495基に上った。

 日本遺族会は14年から国や自治体に「点在する慰霊碑の移設や集約を通じ、維持管理を引き継いでほしい」と要望してきた。これを受け、国は16年度、自治体が慰霊碑を移設、撤去する際、「建立者や管理者が不明」「倒壊の恐れがある」などの条件を満たせば、費用の半額(現在、上限50万円)を補助する制度を創設した。

 鳥取県倉吉市では21年度から国の補助を活用し、慰霊碑の移転計画が進んでいる。市遺族連合会が解散して管理者が不在になるため、慰霊碑7基を市の施設などに移す。費用約3500万円のうち、計約350万円は国の補助金で賄う。

 市担当者は「戦争の悲惨さを伝えるためにも、維持に自治体が関わらざるを得ない」と話す。

国の補助「使い勝手悪い」

 国は今年度から、補助制度の対象として慰霊碑を移設、撤去する場合だけでなく、「補修」を追加し、利用拡大を図ってきた。しかし、「管理者らが不明の場合」という適用条件があるため、遺族会が維持管理してきた場合は原則、対象外となり、活用は22年度までに計19件にとどまる。

 滋賀県は6月、国に管理者がいる場合でも対象とするよう要望した。県の担当者は「まだ使い勝手の悪い部分が多く、改善してほしい」と訴える。

 一ノ瀬俊也・埼玉大教授(日本近現代史)は「国は国策で亡くなった戦死者の追悼を民間任せにしてきた面があった。遺族の高齢化は著しく、補助制度を拡充する必要がある。自治体も住民の声を聞き、積極的に管理に関与していくことが求められている」と指摘する。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20231015-OYT1T50033/