ソウル近郊日帰り 知らない人のお墓参りツアー 1

元ネタはこちらです。

行けるときにちょっとまとめて行っておこうということで、この週末に表題のようなことを計画してみた。

利用する交通機関はもちろん、ソウル市の幹線バス(青色)の703番。まず目指すのは、高陽市にある「ソウル施設公団 葬墓文化事業団」。バス停の名前は「서울시장묘문화센터(ソウル市葬墓文化センター)」になる。


ここは、승화원(昇華院)という名前の火葬場と、추모의집(追慕の家)という名の奉安堂、つまりは納骨施設がある。ここで引用した「朝鮮日報」のコラムによれば、現在のところここがソウル市唯一の火葬場であるらしい。

ちなみに、ここについては、例えばこのような記事もある。参考までに。

ソウル市、「改葬遺骨火葬炉」を運営
2006/08/17(Thu) 12:00

ソウル市施設管理公団は今月24日から来月21日まで市立火葬場の昇華院に改葬遺骨専用火葬炉を運営する。公団は閠月には別途、日取りを選ぶ必要がなく、墳墓改葬が可能だという俗説から、改葬遺骨火葬が大きく増えるものとみて、専用火葬炉を運営すると明らかにした。公団はこれを受けて閠月期間、全体で23機の火葬炉の中で平日には2機、土・日曜日には4機づつ改葬遺骨専用火葬炉に指定して運営する。

http://contents.innolife.net/news/list.php?ac_id=2&ai_id=61937


それこそひっきりなしにバスがやってきて、次々に遺族が棺に付き添って火葬場へ向かっていく、という感じである。建物全体の老朽化も目立つ感じで、現在も部分的な改修工事が進行中であった。




ところで、この火葬場の建物の2階に、「昇華院追慕の家」という名の納骨施設が2室ある。たぶんこれが、韓国におけるこのタイプの納骨堂の、最初期のものであると思われる。

でまあ、永川護国院や利川護国院などを皮切りにして、これまでにもいろいろと納骨堂を見てきたのだが、「あれがここから始まったのか」と思うと、ここの光景はなかなかインパクトがある。






とにかくまず通路が狭い。成人男性だと横歩きしないと通れないくらい狭いところも少なくない。花飾りなどが床のあちこちに落ちているが、これは故意でなくとも引っ掛けて落としてしまうのだ。

そしてこのコンクリートの壁、頭上から圧迫感のある棚、埃っぽくて薄暗い感じ…これにいちばん近いのは、大学の古い建物の図書館、それも開架ではなく閉架の書庫だろう。納骨堂というより納骨倉庫といったほうがいい室内は、納骨棚の素材も他で観るのとは違い、家具のような木製である。

何より、この建物自体の老朽化を最も感じさせるのが、これらの部屋だった。1990年代前半から後半のお骨が大半であったが、20年と経たずして、ここはすでにこのままでは維持できそうにない雰囲気であった。

となると、お骨の場所換え、韓国語でいう「이장(移葬)」ということが考えられなければならないが、一つの候補として、この建物の隣の円柱形の建物、奉安堂と呼ばれる納骨堂が挙げられよう。

ここも現在改修工事の真っ最中であるが、すでに納骨している人もいるからか、出入りは自由であった。




改修工事では、床や壁などが綺麗に改められるだけでなく、収容規模を拡大すべく、それまで活用してなかったと思われるスペースにも納骨設備を増設しているようだ。そのため、デザイン的には3種類ほどが混在している。

可能かどうかまでは知らないが、遺族が望み、そして可能であるのなら、あの狭苦しい倉庫まがいの納骨堂よりは、こちらのほうが(気分的にも、利便的にも)いいに決まっている。

ただ、それを実行する生者を擁する死者のみが条件のいいところに移っていき、他方でそうでない死者は取り残され、朽ちていき、そして片付けられて、最後には忘れられていくのかも知れない。

こうしてみると、物件価値の上下に一喜一憂する韓国の不動産事情のように、ここでは死んでもなかなか落ち着けないかも知れない。新築物件が次々にできるいっぽう、古いのは中古市場に回って…とか、充分に有り得そうだ。

実際、「ソウル施設公団 葬墓文化事業団」の入口横には、民間(財団法人)の納骨堂ビルがあって、豪華な設備を売りにしながら、細かくランク分けされた料金体系の納骨堂を運営している。

http://www.e-yewon.co.kr/yewon/

こういうのも含めて、立地的に、また設備的に、よりよい条件の納骨堂をみんなが求めだせば…死者の安息はさて、どうなることやら。やれやれ。