台湾映画「KANO」を観る。

ええ、初日に観てきました。

期待通りに、また期待以上に、いい作品でした。3時間という時間の長さは、観ている間には感じることがありませんでした。

弱者が強者に成り上がることのできるハングリースポーツとしての野球の本質と、野球というスポーツそのものの美しさ―「一球入魂」を描き切った野球映画としての出来栄え。

そして、「甲子園」という題材を使って、細部に至るまで、日本人に見せても恥ずかしくないレベルにまで仕上げてきた台湾の映画制作陣のレベルの高さと、その史実から作り上げられる作品に対して注がれた愛情の深さ。


劇中に差し挟まれる1944年の場面や、対戦相手のユニフォーム一着一着にまでに込められたメッセージは、一観客として楽しんで消費して終わりにすることのできない、重いものでした。

観ることができてよかったです。

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(評・映画)「KANO 1931海の向こうの甲子園」 台湾弱小チームの青春物語
2015年1月23日16時30分

 1931年、日本統治下時代に台湾代表として甲子園に出場し決勝戦まで勝ち進んだ嘉義農林学校、略して嘉農(KANO)の、実話に基づいた物語。熱血青春群像劇として、野球映画として、そして何より日本の学校が十分に教えてこなかった台湾と日本の関係に光を当てた歴史映画として、必見の作品に仕上がった。「海角七号 君想う、国境の南」「セデック・バレ」と、日本の統治を受けた土地としての台湾を正面から見据えてきた魏徳聖が脚本と製作を手がけ、「セデック・バレ」準主演の馬志翔が監督している。

 台湾でも弱小チームだった嘉農に、名門野球部で鳴らす松山商業を指導した近藤兵太郎(永瀬正敏)が、監督として赴任してくる。その猛特訓のもと、日本人、漢人、台湾原住民で混成された嘉農は、それぞれの長所を活(い)かしてめきめき力をつけ、ついには台湾代表として甲子園出場の座をつかむ。

 物語の骨格は、弱者が一丸となって頑張り強者を打ち負かすという、スポ根ドラマ的なもの。だが、試合の勝ち負け自体は主旋律ではない。自らも野球選手経験を持つ馬志翔による、選手と観客の一挙手一投足を的確にアップと引きで組み立てた演出が、勝負の結果を度外視した野球の面白さを終始伝える。

 そして近藤監督と野球部員を主役としながら、物語は甲子園で嘉農に敗れた札幌商業の投手を話者にして語られていく構造が、素晴らしい。物語の“現在”は、あの伝説の試合から13年後の44年。兵役に就き、これから南方の戦地に赴く投手が嘉義を通りかかり、嘉農の活躍を思い出す。翌年、敗戦。戦地に赴いた話者のその後の消息が映画に出てこないことが、いっそうの痛切感と多層性を作品に付与している。(暉峻創三・映画評論家)

 24日公開。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S11566865.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11566865