「4.19」というプライド


あちこち巡るのに、こういった本を手許に置いているのだけど。

정호기『한국의 역사기념시설』민주화운동기념사업회、2007

たいへん参考になる基本書であるのだが、気になるところも少しあったりする。

例えば、「4,19」に関する施設の選定と、釜山や光州に関するそれとの間のバランスについてである。
地下鉄5号線西大門駅からすぐのところに立っている「四一九革命記念会館」玄関ホールの常設展示にもあるように、「4.19」と言えば「2.28大邱」→「3.15馬山」→「4.18高麗大」というのがそこに至る流れとしてほぼ確定した筋となる。各層が参加した運動であったとは言え、大学生を中心とする学生が大きな役割と果たしたことも、またよく知られている。

ところがこの本は、高麗大学校をはじめとする大学その他学校関連の施設にまったく触れていないのである。
何もないのならわかる。けれども、国立4.19民主墓地の4.19革命記念館にも掲げられているように、実際には多数の記念施設が各地に存在しているのである。

弘益大学校本部キャンパスにある羅永柱慰霊碑を含め、この一覧には載っていないものも、個人の慰霊碑を中心におそらく多数あると思われる。




そこで、この大学である。


この高麗大学校が4.19に関わる過去をどう扱っているかと言えば、少なくとも釜山大学校よりははるかに、自らの誇りとしての表象を明示しているのである。


これらだけなら、それは釜山大学校とさして変わらないように見えるかも知れない。
ただこの「4.18記念館」、今はキャリアセンターなどの部署が入る普通の建物として使われているが、もともとここには校史展示を中心とした展示室などが入っていた。高麗大学校と「4.19」との関連を語る展示もあった。
ではそれらはどこへ行ったかと言えば…。

正門を入ってすぐ右手の、この建物の中へ拡充移転している。1階から4階まで各種の展示室を展開する、実に堂々たる大学博物館である。これほど充実した大学博物館は、たぶん韓国内にはないだろう(ソウル大学校ですらこれには…)。
で、「百年史展示室」と題する1階の展示室が、新装成った校史展示室である。



例えば全南大学校の「5.18記念館」のように、それに特化した歴史記念施設ではないとは言えるかも知れない。しかし、地方の一国立大学と、朝鮮半島の近現代史とともに歴史を刻んできた名門中の名門大学とでは、一事件が全体に占める比率が違ってきても当然ではないだろうか。
そして、この展示室を歩いてみればわかるように、「高麗大学校と4.19(正確には4.18)」というペアには、自他ともに認めるプライドが薫るのである。
そうしたことを考えると、この高麗大学校を筆頭とした大学校以下各種学校の記念施設を一つもリストアップしないこの本の構成に、どうにも釈然としないのである。


…とか言いながらも、学生運動やデモで鳴らした硬派なイメージのこの高麗大学校も、最近は「민족고대(民族高大)」から「Global KU」へのイメージチェンジに余念がない。「民族を捨てた高大」と苦笑交じりに揶揄されることもあったりする。
それを気にしているのかいないのか、構内で見かけた看板がこれである。

「民族高大100年、世界高大1000年」……言い訳になっているようで、実はちっともなっていないような気がするのだが……。