先日の「中央日報」のモーテルの記事(こちら参照)、率直に言ってカチンと来たんですよね。
何でそんなにムカついたのかと考えてみれば、そこに書かれている施策が、モーテルの管理を通じて、ソウルという都市の〈闇〉の部分を可視化・透明化しようという企みに他ならないように思えたからでした。都市の〈闇〉に隠れて生きる人間からすれば、相いれない連中が踏み込んできたわけですから、思えばムカついて当然のことでした。
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しかし、「不倫天国」などと揶揄したうえでモーテルを指弾し、より「健全」な施設に改めたところで、そこで営まれていた不貞行為(笑)がその場から追いやられるだけで、〈闇〉が消失することはないでしょう。
そもそも、場末のいかがわしいモーテルも、都心のおされーなホテルも、そこに区切られる密室空間が〈闇〉の要素を抱え込むという意味では相通じる部分があります。両者が決定的に違っているのは、そこを利用する人間の階層(だけ)なんでしょう。
そう言えば、バブリーなヤンエグのサエキさんがオンナを落とそうと手ぐすねを引くときにはいかにもな高級ホテルの部屋に泊まっていましたし、元ヤンキーで大学生のラモちゃんがオンナを食っちゃうときには「明らかにラブホ」なところでした。後者がここ一番で背伸びして前者のマネをしていたのがバブル時代でしたが、そんな時代はもうとっくに歴史の一コマになっています。
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とすれば、この格差社会において、「不倫天国」と言われるモーテルの「健全化」が達成されたとき、そこで追い出される「不倫」に、エグゼクティブなエスタブリッシュメントのそれが入っていないことが、透けて見えてきます。彼らが不倫するにしても、「猟奇的な彼女」に出てくるようなモーテルなんかを使うことはないでしょうし、ましてや「バンジージャンプする」に出てくる貸間なんて、脳裏の片隅にも出てこないでしょう。
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ちなみに、韓国のモーテルを知るには必見の資料であるヨン様の「四月の雪」を観れば、ペヨンジュンとソンイェジンの馴れ初めは思いもかけずのモーテルであったものの、ここぞというベッドシーンは海沿いのホテルでムーディーにキメられていました。その他にも様々な解釈が可能な数々のシーンを思い起こせば、ホジノ監督のこの作品は「やはりなかなかの佳作だった」と言えるような気がします*1。
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いずれにせよ、韓国の「モーテル」と日本の「ラブホテル」とは、同じように〈闇〉を担う存在として通じる部分もあり、相互に影響し合ってる部分もあったりするのですが、それでもやはり同じように扱えるかと言われれば、いささか疑問が残ります。
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どちらかと言えば、日本のラブホテルの機能特化の仕方のほうが極端であるように思います。例えば、上記の本にも指摘されている「ラブホテルとシティホテルの相互乗り入れ化」は、(ソウル市の施策も含めた)韓国のモーテルの変化の流れの中にも感じ取ることができるのですが、いっぽうで韓国のモーテルはもっと雑多で多様で猥雑なものを抱えているわけで、そのへんを取り残したままスッと健全化できるとは思わない方がよろしいのではないか、と考えたりもしています。
*1:以前に映画館で観たとき、個人的に印象に残ったのは、「雪の上のネコ」と「ソンイェジンの腹」でした。