私が知らないこと、知りたいことが書かれている記事なので、備忘のためにクリップ。これはインタビュー全体の前編で、さらに後編が続くようですが、それらを併せて、下記のブログにある翻訳記事と併読することにも、また意味があるように思われます。
小森アレキサンドルのコリアステーション・ヌゥボ - 韓国置屋通信「女衒は吼える、韓国淫売連合会女衒代表の時事ソウルインタビューをナマ翻訳」
ちなみにそこに出てくる「ハント全国連合会」は、千戸洞で見たあの組合員証の団体です。
夜の世界の女の子たちを応援するNPO代表の角間惇一郎さんにインタビュー【前編】
風俗嬢が直面する「40歳の壁」――相談相手のいない女の子たちのリアルを支援団体代表が語る
2014.03.05現在日本全国で性風俗に従事している女性は約30万人と言われています。キャバクラ嬢などのいわゆる「水商売」がタブー視されることは少なくなってきたものの、風俗嬢は、依然として周囲に打ち明けづらい職業です。そういった職業だからこそ、困っていても相談できない――そんな風俗嬢のならではの悩みに対し、相談事業やセカンドキャリア支援を行っているのが、埼玉県越谷市に拠点を置く一般社団法人GrowAsPeople(以下GAP)。今回は、GAP代表の角間惇一郎さんに、夜の女の子たちのリアルな声や、今まさに現在直面している課題について伺ってきました。
風俗嬢たちに必要なのは、何でも話せる相談相手
――「性風俗産業に携わっている女性への支援活動」とは、具体的にはどんなことをしているのですか?
角間惇一郎さん(以下、角間):具体的な活動内容は、現役風俗嬢を対象にした相談事業とセカンドキャリア支援、そして社会に向けた情報発信です。性風俗に従事している女性の中でも、搾取や人身売買の結果としてではなく、本人の意思で性風俗産業に携わっている女性たちが対象です。今までの性風俗支援は、「搾取であるから、女性たちを救済すべきである」もしくは「本人たちはプロ意識を持っているのだから、職業として認められるべき」、というような性風俗の「是非論」に陥りがちだったのですが、私たちGAPは、事情はなんであれ、自分の意思で働いている現役風俗嬢の声に耳を傾けることで、それらのニーズに答えていくという活動をしています。
――現役風俗嬢の方が一番困っていることとは、何なのでしょうか?
角間:まず第一に「風俗嬢としての立場を周りに明かせない」ということです。『王様の耳はロバの耳』の童話にもあるように、人というのはどこかにぶちまけたいという思いがありますが、風俗で働いている女性たちは、なかなか今の立場を外部に公表できません。家族や友人、パートナーにも理解されることが少なく、立場を明かそうものならとりあえず「やめろ」といわれる。社会に公開しようものなら、セクハラ対象にもなりうる。そんな中、現状は、風俗嬢が立場を明かして安全に相談できる相手は風俗店のスタッフや、スカウトマンに限られています。
意外と知られていない「風俗嬢」と「風俗店」の雇用関係
――風俗店のスタッフやスカウトマンが、彼女たちの一番の相談相手ということでしょうか?
角間:誤解が多いのですが、風俗店のスタッフからしてみると風俗嬢は「お客さん」で、「部下」ではありません。これは、風俗嬢の雇用形態に関係があります。実はそもそも、風俗店で働いている女の子たちはお店側に雇用されているわけではないのです。国内の風俗産業のトレンドであるデリヘル(デリバリーヘルス)は現在、全国でおよそ1万7千店あって、そこに女性たちが登録する形になっているのですが、あくまでも「登録」であって、「雇用」ではありません。具体的に言うと、風俗嬢が源氏名でお店側と業務委任契約をし、お客さんからもらった費用のうち40から50パーセント程度を風俗嬢がお店側に対して「報酬」として支払っている形になっているんですよ。
――お店側の方が「立場が上」という訳ではないんですね。
角間:だから、お店側も気持ちよく働いてもらえるようできる限りのサポートをします。風俗嬢の方も、風俗で働いている前提で話ができるし、相談もできます。互いの信頼関係が最重要です。また、風俗で働くということは大変な仕事です。身の安全も守らなければなりません。安全に働くために女性が自分自身を自己管理するだけではなく、スタッフの方もその責任を担っているのが日本の現状です。
しかし、実際には、風俗店のスタッフやスカウトマンというのも、社会からつまはじきにされてしまった方も散見されます。特に、土地の利権がからまないデリヘルはリストラ組とか、脱サラ組の人たち、ないしは中卒で他に雇用先がなかったような人たちが運営していることが多い。だからこそ、女の子たちのしんどさを共感できるし、話も聞いてあげられる――だけれどもその一方で、具体的な解決方法を促すスキルは持っていないことも多いのです。例えば、弁護士が必要なケースや、親族・恋人・配偶者などからDVの被害 を受けている、というような場合の対応は、それなりの知識が必要です。
――なるほど。スタッフだけは解決してあげられない複雑な問題も多いという事ですね。
角間:また、風俗店側も少人数のスタッフで運営しているので「手が回らない」という現状もあります。一つのお店あたり平均30人の風俗嬢が在籍しており、大きいお店だと何百人という規模のところもあります。このような状況を踏まえて、風俗嬢としての立場を安全に明かすことができ、複雑な状況にも対処可能な、ノウハウのある相談場所が必要だと考えました。それが私たちが運営するNPOなのです。
風俗嬢なら誰でも直面する「40歳の壁」
――「セカンドキャリア支援」を行っているとお聞きしましたが、実際にそういったニーズがあるということでしょうか?
角間:もう一つ、風俗嬢が最終的に直面することになる問題として「40歳の壁」というのがあります。これも誤解が多いので先にお話しすると、「性風俗は“女性の一発逆転のカード”である」「女性ならば誰でも性風俗で稼げる」などと思い込んでいる人もいますが、お店に所属して働くうえでは、容姿や体型、精神的な健康状態、そして年齢を考慮した選抜があるため、誰もが風俗嬢になれるわけではありません。
風俗産業というのは“個人の経験談”が独り歩きしやすい業界で、「90歳でも働いてる人、知ってるよ」だとか、「40歳はもう無理でしょう」など、様々な意見が独り歩きしがちですが、そもそも、選ぶ側が存在している以上、年齢が高めの人からの応募は、電話やメールで問い合わせが来た時点で落とすことが多いのが実状。現在風俗嬢として働く女性も、実際に稼げるのは40歳くらいまでです。これは、やはり加齢とともに風俗嬢としての市場価値は下がっていくこと、そして、長く働いていると、業界に若い子がどんどん入ってくるので、お客側が新しい子に流れていくことが理由です。性風俗の仕事を続けているうちに、1日2〜3万円稼げていたのが、1日1万円になって、5千円になって……場合によっては、時給換算するとマクドナルドのバイトより稼ぎが悪くなったりすることもあります。
――なるほど。性風俗の仕事には年齢的なリミットがあると。
角間:そうやって稼げなくなることのほかにも、30代のうちに親族に知られてしまったり、子どもができたり、怪我をしてしまったり、精神的な健康を害したりして働くことができなくなってしまう人も多いです。つまり、風俗嬢としてのキャリアは遅くても40歳ころには終わる。日本人女性の平均寿命は86歳ですから、性風俗引退後の46年間はどうするのか、という問題が残ります。これを私たちは「40歳の壁」と呼んでいます。
後編では、実際に彼女たちが「40歳の壁」にぶつかってしまう前に必要な「セカンドキャリア支援」について、具体的なお話しを伺います。
【後編につづく…】風俗嬢の平均収入は30万円 支援団体代表が200人に調査してわかった、彼女たちの「しんどさ」
(取材・文=ケイヒル エミ)
AV業界を取り上げた本なので、直接的に重なるわけではありませんが、こちらの本も参考文献になりますね。
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追記:後編も出たのでこちらに併せてクリップしておくとします。
夜の世界の女の子たちを応援するGAP代表の角間惇一郎さんにインタビュー【後編】
風俗嬢の平均収入は30万円 支援団体代表が200人に調査してわかった、彼女たちの「しんどさ」
2014.03.06風俗嬢を対象とした相談事業やセカンドキャリア支援を行っている一般社団法人GrowAsPeople(以下GAP)へのインタビュー。前編では風俗嬢なら誰でも直面する「40歳の壁」についてお伺いしました。後編では、風俗嬢たちの具体的なサポート方法や、実際の風俗嬢200人への取材で分かった新たな事実などをお伺いします。
彼女たちの中に隠れた「しんどさ」を内科的に癒す
――精神面のサポートとして、どんな立ち位置で彼女たちに力を貸しているのですか?
角間惇一郎さん(以下、角間):性風俗に従事している女性たちはなんらかの事情や「しんどさ」を抱えている人が多いです。「私はリストラ」「私はシングルマザー」と、数えきれないくらい。彼女たちの状況をわかりやすく表現すると、「指をドアに挟んで、爪にできた青あざを、マニキュアを塗って隠しているような状態」とでも言いましょうか。つまり、元々抱えている問題や「しんどさ」を、「稼ぎがあるから」何とかしのげているんですね。でも、そのマニキュアがはがれてしまったら、もともと抱えていた問題はあらわになってしまう。この問題の解決方法は2つしかありません。そもそも怪我をさせないこと、もしくはマニキュアをしている間に治すこと。そもそも怪我をさせないのは、子どもを支援するNPO等「ドアにクッションを付ける」ような役割の団体の活動で、「マニキュアをしている間に内科的に癒す」のがうちの団体のセカンドキャリア支援だと思っています。
――「セカンドキャリア支援」が、結果的に彼女たちの内面を癒すということでしょうか?
角間:具体的に現役風俗嬢に参画してもらっているお仕事は、当団体の「収益事業」であるデザインの仕事やイベントコーディネートの仕事、映画のプロモーションなどです。風俗嬢の「セカンドキャリア」に最適な職業として以前から言われているのが介護職などですが、実際は、夜の世界からの固定化された「出口」を作ることは難しいと現場にいて感じています。だから、せめて本人たちの「学び」になる場をたくさん作ることで、徐々に変容してもらえれば、という風なスタンスで活動しています。
――確かに、イベントコーディネートや映画プロモーションなど、華やかで楽しそうなお仕事ですね。
角間:セカンドキャリア支援で難しく感じていることは、その事業におけるライバルが「買い物」や「パチンコ」であることなんです。平均的な風俗嬢は月収のほとんどを短期集中型で稼いでいるのですが、空いた時間でいろいろと考え込んでしまったり、買い物やホストクラブ通いに費やしたりする人も多いです。それなら、その時間を将来への何らかの準備になるよう有効に使って欲しい。しかし、今までの風俗嬢支援のあり方をなぞったような、「一緒にボランティア活動をしよう」というような活動では彼女たちを振り向かせることは難しいわけです。だから、右脳に何か刺激があるような、「ホストや買い物に勝てるような」ブランディングを展開する必要があるのです。なかなか、現実は難しいのですが……。
200人超の風俗嬢への取材でわかったこと
――角間さんは、200人以上の風俗嬢へ直接インタビューをなさったとお聞きしました。取材によって新たに分かったことはありますか?
角間:驚いたのは、従事している女性たち自身が、風俗が「労働であるという自覚」があまりないということです。「現在の職業は?(立場は?)」と尋ねると「私は学生」「私はOL」「私は主婦」という風に答えるかたが散見されます。このことから「労働」ではなく「お金を稼ぐためのツール」としてとらえている印象を受けました。
他にも今回の調査で分かったことなのですが、風俗嬢の平均収入は約30万円、最頻値で40万円で、これを大体10日という短期間で稼ぎ出しているようです。とはいえ、これだけを聞いて楽に稼いでると思わない下さい。繰り返しますが誰にでもできる楽な仕事では決してないですから。ただ、ではなぜそれでも風俗でお金を稼ぐのかというと、“風俗が魅力的”というより“他のまともと言われる仕事があてにならない”という、社会のリアルに気がついてしまったからなのではないかと。他の仕事があてにならないのなら、「稼げる」というよりも「時間がある程度自由に使える」そのほうが合理的だということに気がついてしまっている。データ取得時にそんな回答が多かったです。
――思ったよりも平均収入額が少なくて驚きました。
角間:風俗嬢を対象としたネットアンケートを実施したとしても、回答してくれるのはネットリテラシーを持っており、ある種のプロ意識をもった人たちに限られてしまうので、バイアスがかかった情報になりがちです。こういった、バイアスのかかっていない風俗嬢の情報を出すのも、私たちのようにお店側から情報提供を受けることが出来る立場だからこそ可能となってきます。
風俗嬢たちに襲いかかる「リベンジポルノ」の問題
――彼女たちからのリアルな声を聞いたうえで、GAPではこれからどのような取り組みを展開される予定なのでしょうか?
角間:4年彼女たちの声に耳を傾けてきて、新たなニーズとして捉えているのが、「風俗嬢引退後の、ネット上にアップされた写真の削除」です。今年からは、このニーズを満たすための技術開発をやっていきたいと考えています。
風営法の取締により、現在日本では性風俗の広報はネット上、もしくは一部雑誌上でしかできません。雑誌は人気が低下していることもあり、どの風俗店も現在はネット上での広報活動に力を入れています。本人の合意の上なので、現役で働いているときに写真が上がっていることは問題ないのですが、問題は辞めた後。放っておいて消えるものではないので、一部の写真はネット上を漂い続けることになります。
――風俗をやめた後、写真がネット上に残ってしまうと、具体的にはどのような被害が考えられるのでしょうか?
角間:今は、昔と違って検索すると個人があっさりと調べられる時代ですよね。そうすると、これらの写真が「過去働いてたことをばらすぞ」というような、いわゆる「リベンジポルノ」のネタになってしまうのです。実際に、風俗嬢が本名を知られた元リピーター客にこのような脅迫を受けた例があります。
日本のNPOはもっと技術力を持つべき
――技術力を持つNPO、とても新しいと思います。
角間:ライターとストローの共通点はご存知ですか? どちらも障がい者が開発したんですよ。マッチで火をつけるためには両手で火をつけないといけないし、コップで水を飲むためには手がないといけなかったので、これらが生まれたのです。このように、なんらかの生きづらさを抱えている人が、みんなが使うことができる技術を開発する例は、実は多いです。それと同じように、風俗嬢の悩みにこたえながら、一般にも応用ができる技術を開発したいと考えています。従来のNPOの「課題解決」「人権」「相談」といったような、堅いイメージからは離れたいですね。
(取材・文=ケイヒル エミ)